バイエルン州の保養地バート・ゲッギングの広大な9ホールあるゴルフ場のはずれに彼は現れた。ヘルタ・ベルリンの新星、アルネ・マイアーの表情はいつもどおり穏やかだ。
この19歳のMFは、その並外れた才能によってベルリン中を熱狂の渦に巻きこんでいる。8試合を終えて6位と好スタートを切ったヘルタで、リーグ戦全試合にフル出場。シーズン開幕を初めてトップチームで迎えた若手としては、異例とも言える監督からの信頼を手にしている。だが、インタビューに応じるマイアーはゆったりと落ち着いた様子で、おごりや向けられる重圧といったものを全く感じさせない。U-15に始まり、世代別代表に常に名を連ねてきたマイアーはプレッシャーに関して「もしかしたら、そのうち感じることもあるかもしれないね」とどこ吹く風だ。
さらに、マイアーは照りつける日差しのもと、彼をめぐって過熱するメディアの報道やベルリン市民の熱狂ぶりについてなど、様々なことを『Goal』と『SPOX』で語ってくれた。
■少年時代は現監督の庭で?
Getty――アルネ、あなたは子供の頃からいつもチームメイトのパルコ・ダルダイ(パル・ダルダイ監督の息子でヘルタユース)と一緒にダルダイ家の庭でボールを蹴っていたそうですね。その頃はどうでしたか?
あの頃はとても楽しかったよ。当時、パルコと僕は同じ学校に通ってたんだ。今でも僕たちはいい友達同士だけれど、毎日いろいろと苦労しながら生きていく中で、自分たちが以前に比べれば大人になったことに気づくよね。
――あなたがたの友情はどんなものでしたか?
たとえば15歳のときには、休暇をパルコやパルコの両親と一緒に過ごした。(ヘルタユースで同じの)デニス・スマルシュとかニコス・ツォグラファキスとか、ほかのチームメイトたちも何人か一緒で、みんなでハンガリーへ出かけたんだよ。
Getty――パル・ダルダイ監督との関係はどんな感じなんでしょう?
もちろんとても良好だよ。うまくいっていないと言えば、当然嘘になる。だけど、フットボールのこととプライベートなことは別の問題だ。僕がずっと前から彼と知り合いで、彼の息子と親しいからといって、それだけで得をしているなんてことはないね。彼はどの選手も同じように扱っていると思う。
■ヘルタ・ベルリン躍進のカギ

――ダルダイ監督の指揮下、ヘルタ・ベルリンはここまで6位と、ブンデスリーガで際立った活躍を見せていますね。素晴らしいスタートを切ったことで、ベルリン市民の熱狂ぶりは大変なものです。何が要因でしょうか?
僕たちのチームにはファビアン・ルステンベルガー、ぺア・シェルブレット、サロモン・カルー、ヴェダド・イビシェヴィッチのような経験を積んだ選手たちが何人もいる。だけど一方には、マクシミリアン・ミッテルシュテット、ジョーダン・トルナリガ、そしてパルコや僕のような若い選手たちもたくさんいる。そんなふうにベテランと若手がいい具合に混じり合っていることが、今の調子を生み出しているんだ。年が離れていても、僕たちは全員がよく理解し合っている。それが成功のカギだと思うね。
――チーム内での役割分担はどうなっているんですか?
“若い選手はふざけるだけで、ちゃんとした発言をする権利は年上の選手が握っている”、そんなふうにはなっていないよ。ベテランの中にも、冗談を好む愉快な選手がいるんだ。一番のふざけ屋はたぶんアレクサンダー・エスヴァインだろうね。彼は今ではもうわりと年上の選手の中に数えられるようになっているけど(※28歳)、メチャクチャ面白いやつなんだよ。ただ、当然のことだけど、真面目な雰囲気でベテラン選手から何か言われるようなときには、もちろん僕はその意見を尊重するよ。そういうときには、若手は敬意を払わないとね。
――好調な序盤戦を送り、ヘルタは現在6位につけています。今季はどこまで行けそうですか?
とにかく、昨季(10位)よりはいいところまで行けそうだね。僕たちはいろいろと準備したし、非常にいいスタートを切れたんだから。
■メディアの過熱とプレッシャー
――あなたはヘルタのユースアカデミー出身で、これから先クラブの看板を背負って立つ選手だと思われています。そして、ファンだけでなく、地元のメディアも注目の的として報じています。こういった報道の熱狂ぶりについてはどう思いますか?
褒められるのはいつだってうれしいものだ。だけど、どんなに褒められたとしても、ピッチでは関係ない。そんなことは少しも役に立たないからね。試合で僕が頼れるのは自分自身だけだ。試合のたびに限界まで力を出し切らないといけないし、のんびりなんかしていられない。だけど、言っておきたいのは、僕はそうやって苦しむのが好きだってことだ。自分の大好きなクラブでプレーして、憧れていた通りの生活を送っているんだからね。
――大きな期待に伴うプレッシャーに苦痛を感じることもありますか?
まだプレッシャーは感じたことがないんだよ。すべてを楽しむことができている。もしかしたら、そのうちプレッシャーを感じることもあるかもしれないけどね。
――ですが、すぐにまた局面が悪化することもあると、経験上理解していますよね。今のようにうまくいっているときこそ、気を引き締めてかかる必要も感じますか?
もちろんだよ。フットボールの世界では、何もかも本当にすぐに移り変わってしまうからね。ある日は英雄として持ち上げられていたかと思うと、ほんの少し後ではスケープゴートにされてしまうこともあるんだから。

――あなたは19歳という若さにして、ベルリンではもう有名人になっています。 “普通の” ティーンエージャーでいられるときもまだあるのでしょうか?
実際、ベルリンの街を歩き回っていると、前より明らかに気づいてもらえるし、話しかけられる機会も増えている。初めは慣れなかったけど、今ではもう普通のことになったよ。それでも、僕は相変わらず街中で仲間と会ってるし、普通のティーンエージャーと同じような生活を送っているよ。有名になったからって、こそこそ隠れなきゃいけないとは感じないね。
■絶対王者バイエルン撃破の思い出
――あなたは16歳で初めてプロの練習に参加しましたね。その日のことはどんなふうに記憶に残っていますか?
今でもまだ鮮明に覚えているけど、あれは僕にとってとても特別な経験だったよ。DFフロリアン・バークもあのときに初めて練習参加していて、2人とも信じられないくらい緊張していたんだ。突然、同年代の選手じゃなく、ブンデスリーガで経験を積んだプロの選手たちと一緒にトレーニングするんだからね。そこにはチャンピオンズリーグで優勝を経験したサロモン・カルーのように、それまではテレビでしか見たことのなかったレジェンドがいたんだよ。
――今では、あなたはチームの重要選手となりましたが、特に印象に残っている試合はありますか?
出場したすべての試合が僕にとっては特別なものだよ。ブンデスリーガでプレーできるというのは大きな名誉だからね。だけど、中でも特に記憶に残っているのは2-0でバイエルン・ミュンヘンに勝った試合(2018年9月28日)と、ハンブルガーSV(HSV)に勝った試合(2017年3月17日)だね。HSV戦では、僕は初めてアシストを決めてそれが決勝点となったんだ。
――満員のオリンピアシュタディオン(ヘルタの本拠地)でバイエルンに対して勝利を収めるというのはどんな経験でしたか?
僕らはとてもいい試合をして、徹底してチャンスを活かすことができた。最後の方は観客の熱気に押されたこともあって、倒れるまで走ったし、どんどん1対1の戦いに挑んでいった。あのクレイジーな試合が終わってから、スタンドでファンと一緒になって勝利を祝うのは何とも言えない感じだったよ。とにかく、ただただ素晴らしかったね。
Getty■「ケガはフットボーラーにとって悪夢だ」
――ユース時代、次のステップに踏み出せるのか心配するような時期はありましたか?
ケガをしているときはそうだったね。そのせいでみんなについていけなくなるんじゃないかと少しだけ心配だったよ。
――背中の痛み、結局顎の噛み合わせが悪かったせいだとわかったわけですが、そのせいであなたは1年半以上、離脱を余儀なくされました。
当時は何が起こってるのかさっぱりわからなかったよ。体のどこが調子がおかしいのか不明だったんだ。痛みがなくなりよくなったと思うと、何試合か後にはまた痛みが戻ってくるんだ。後で専門医が痛みの原因を見つけてくれたときには、本当にほっとしたよ。
――そういうときには、フットボーラーとして持つキャリアの夢がダメになるのではと心配になるものですか?
それは間違いないね。どんなフットボーラーにとってもケガは悪夢だよ。今の僕は運よくどこにも痛みを抱えてないから、自由に将来のことを考えることができている。
Getty――今でこそヘルタ・ベルリンのレギュラーとなり、人気選手の一人になりました。ですが、13歳のときにもう少しでクラブを去るところでしたね?
あの頃、いくつかのクラブも僕に興味を持ってくれていた。だから僕は家族と一緒に、何が自分にとって一番いいのかをじっくり考えたんだ。ベルリンに残ることにしたのは結局正しい決断だったと、今ならはっきり言うことができるよ。
――あなたに関心を示したクラブの中にはマンチェスター・ユナイテッドやアヤックス、バイエルンも含まれていたそうですね。そんなに若いうちに注目されるという経験はどんな気持ちでしたか?
もちろん、ああいったビッグクラブがいくつも自分に興味を持ってくれたんだから、一方では “最高” だって思ったね。だけどもう一方では、僕はまだやっと13歳で、学校もベルリンにあったし、家族も友達もベルリンにいたんだ。だから、ヘルタから出て行かないことに決めたんだよ。
■未来の代表プレーヤー候補は?
――過去から未来へ話題を変えましょう。あなたがこれから先のドイツ代表について考えるとしたら、どんな選手が頭に浮かびますか?
真っ先に思い浮かぶのはレヴァークーゼンのカイ・ハヴェルツだね。彼のことは何年か前から知っていて、友達だと言ってもいいくらいだ。彼の成長をしっかりこの目で見てきた。だけどハヴェルツだけじゃなく、パリ・サンジェルマンに移籍したティロ・ケーラーみたいに、大きなポテンシャルを持っていて代表で重要な役割を果たせる選手がほかにも何人かいるよ。
――「アルネ・マイアー」はどうですか?
(笑)。もちろん、誰だっていつかA代表でプレーしたいと思うもの。僕だってね。代表チームに入るのは夢だよ。
――あなたはこれからもヘルタでプレーを続けるわけですが、今年の初めに長期の契約更新をしましたね。なぜあなたにとってヘルタが理想のクラブなのですか?
ベルリンとヘルタは僕の故郷なんだ。監督は僕を信頼してくれているし、ヘルタにいれば出場機会がたくさんあるし、自分を成長させて磨くことができるんだ。僕たちは素晴らしいプレーを見せているし、今のところ順位表でもいい位置につけている。ヘルタには、成功を収めるために必要な条件が全部そろっていたんだ。
■お手本はドラクスラー

――あなたはすでにいろいろな選手とピッチの上で対戦した経験がありますが、最も強い印象を受けた選手は誰ですか?
どんな選手についても今までテレビで見たことがあるし、じっくり観察もしてきた。だけど、フランク・リベリやアリエン・ロッベンのような選手と一緒にピッチに立つのは、特別な感慨があるね。
――あなたはあるインタビューで、手本と仰ぐ選手の一人はユリアン・ドラクスラーだと話していましたね。それはなぜですか?
子供の頃にテレビで、シャルケにいたドラクスラーがドイツカップのニュルンベルク戦で戦うのを見て、すぐに僕は夢中になったんだ。ピッチの上の彼は素晴らしい才能の持ち主だけど、ピッチの外の彼は感じが良くて、堅苦しさなんかちっともない。偉大な選手だよ。僕は心から感心している。僕の家には彼のユニフォームだって飾ってあるんだ。

インタビュー・文=ロビン・ハーク/Robin Haack
構成=Goal編集部
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