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ピッチ内の対応はワールドクラス。日本代表に何が起こっているのか

■セネガルの思惑。4-3-3の意図

2-2で引き分けたセネガルとの第2戦。これまで日本代表が出場したワールドカップ5大会で、先制されながら勝ち点を獲得したのは、2002年の日韓大会初戦となったベルギー戦以来のことだ。

「グループの中で一番強いと思う」と長友佑都が戦前に警戒していたとおり、セネガルは手強いチームだった。アフリカらしい身体能力に加えて、戦術的にも洗練されていた。

そんな相手に対し、なぜ日本は2度も追いつくことができたのか――。失点した後も焦らなかったから。西野監督の采配が当たったから。最後まで攻撃的な姿勢を貫いたから。

確かにそうだ。ただ、ピッチ上で起こっている現象を掘り下げていくと、この日の日本がとてもロジカルにセネガルを攻略していたことが分かる。サイズやパワーやスピードなどで太刀打ちできない相手に、どうすれば戦えるのか。

そこには日本サッカーにとってのヒントが詰まっていた。

セネガルは初戦のポーランド戦(2-1)で採用した4-4-2から4-3-3にシステムを変えてきた。日本は初戦と同じ4-2-3-1。セネガルが勝ったにもかかわらず、わざわざシステムを変えたのは、日本に合わせてのものだろう。

4-3-3と4-2-3-1を向かい合わせにするとピッタリと噛み合う。1対1での優位を多く作り出し、自分たちが主導権を握りながらゲームを進める。アリウ・シセ監督はそんな戦略を描いていたのだろう。

■おとりになった香川が空けたスペース

セネガルの中盤の並びはアンカーにアルフレッド・エンディアエ、インサイドハーフにイドリサ・ゲイとパドゥ・エンディアエ。トップ下の香川真司には、186cmの大型MFアルフレッド・エンディアイエがマンマーク気味についていた。

だが、香川はつかまらない。

日本の10番がボールに触った位置をデータで見ると、あることに気づく。ピッチにいた72分のうち、アタッキングサードの中央エリアでのタッチ数はわずか1回だけだったのだ。右サイド、左サイド、低めの位置など広範囲でボールに関与している。

日本の狙いは、香川が移動することで空けたスペースに、左サイドハーフの乾貴士が入ってきてパスを受けること。右サイドハーフの原口元気に比べて、乾はパスを引き出す能力に長け、ゴールに向かうドリブルや長友とのコンビネーションなどもある。

左サイドのユニットを活用するために、香川が“デコイラン(おとり)”となってスペースを空けたのだ。香川が自らのプレーの狙いを明かす。

「相手がマークの受け渡しをそこまでできていなかった。中に入ってきた時に、僕とたまに被る時があったので、僕があまり寄らずにそのスペースを空けることを言っていました。そのほうがチームとして流れがうまくできていた。だからこそ、僕が少し下りてスペースを空けるのを意識してやっていました」

相手の狙いを読み、その中で最適な手を打つ――。セネガルに勝つために日本が選んだ戦い方は理に適ったものだった。

■セネガルのシステム変更

とはいえ、戦略家のアリウ・シセ監督がこの状況を見過ごすはずはない。前半30分過ぎに、中盤の並びを変えたのだ。ボランチにゲイとA.エンディアエが並ぶ、トップ下にP.A.エンディアエという三角形型になった(ちなみに試合映像を見ると、香川が味方選手に相手のシステム変更=ダブルボランチになったことを伝えるジェスチャーをしている)。

香川に1人がマンマーク気味についていった場合は、もう1人が真ん中のスペースを埋める。どちらに流れてもマークされるので、香川からすればパスを受けるのは難しくなる。

ここでも日本の対応は早かった。攻撃時に長谷部誠がセンターバックの間に下りて3バックのようになり、その斜め前に香川とボランチの柴崎岳が並ぶ、変則的なビルドアップの形に切り替えたのだ。

次に狙ったのはトップ下のP.A.エンディアエの脇にあるスペースだった。数的優位がどこにできるのかを、どうすれば作れるのかを、ピッチ上の選手たちが考えながら実行していた。

「試合の流れを読みながら、相手が来ていたので、僕が下りて食いつくのなら、そのスペースが空く。もう一回、ボールを受けてリズムを作れるというのもあった」(香川)

日本に同点ゴールが生まれたのは、34分。ディフェンスラインにいた長谷部と柴崎が一時的にポジションを入れ替える。フリーでボールを持った柴崎がロングボールを右サイドバック、ムサ・ワゲの背後のスペースに出すと、これを長友がワゲの裏で受けて、乾のカットインシュートにつながった。

2018-06-26-nagatomo-moussawague(C)Getty Images

■西野ジャパンの強みは臨機応変

まさしく、臨機応変。

これこそが戦前の予想を良い意味で裏切る西野ジャパンのキーワードだ。本大会の約2カ月前に就任した西野朗監督は、ピッチの上での変化に対応しながらプレーすることを選手たちに求めてきた。

選手同士がコミュニケーションを積極的に取って、試合の状況に合わせて何をするかを決めていく。監督がすべてを決めて、それを選手がやるのではなく、選手の意見を吸い上げながら、チームの戦略に落とし込む。

おそらく、試合前から「相手がこう来たら、こうしよう」という話を詰めていたのだろう。シセ監督の指示があって動くセネガルと、自分たちで決定権を持っている日本では、試合中の変化における修正スピードが明らかに違った。

今大会の日本はコロンビアとの初戦にフォーカスして準備をしてきた。それ以降のセネガル戦とポーランド戦に向けた戦い方を落とし込む時間は事実上2、3日しかない。一つひとつのディティールを詰めるのは不可能で、だからこそピッチ上での対応力が重要になる

セネガル戦で明確に発揮された日本代表の“新たな強み”。これを今後もポーランド戦でも発揮できれば、グループリーグ突破が見えてくる。

文=北健一郎

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