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バイエルンはなぜこれほど不安定になったのか?ターニングポイントになり得るドルトムント戦

クライシスは終わっていない。それでもバイエルン・ミュンヘンは、暗いトンネルの先に見えるうっすらとした光を目指し続けなければならない。

■終わりの始まりか

2018-11-06-bayern

バイエルンは、9月25日に行われたアウクスブルク戦から公式戦4試合勝利なしという不振に陥った。うち2試合では無得点に抑え込まれ、ヘルタ・ベルリンに2ゴール、ボルシア・メンヒェングラートバッハには3ゴールを許す完敗に終わっている。すると、メディアはこぞって「クライシス(危機)」と騒ぎ立てた。世界最大級のビッグクラブの宿命だ。

直後にバイエルンは、過熱するメディアの煽りや選手個人に対する過剰なプレッシャーに異を唱え、異例の三役(ウリ・ヘーネス会長、カール・ハインツ・ルンメニゲCEO、ハサン・サリハミジッチSD)による会見を開くことに。クラブが選手をサポートする姿勢を示したことで、次代のキャプテンとして期待されるヨシュア・キミッヒも「クラブが選手を守るという素晴らしいサインになった」とコメント。ピッチ上でも、会見後の公式戦で4連勝を果たすなどポジティブな効果を発揮し、チームは波に乗ったかに見えた。

しかしその雰囲気は、クライシス時とさして変わらない。コバチ監督は物憂げな表情を浮かべ、完敗に終わった9月28日のヘルタ・ベルリン戦でアリエン・ロッベンは、怒りがこみ上げるのを押さえるようにうつむきながらトーマス・ミュラーと交代した。勝利を重ねても、交代時には皆が心につかえがあるような顔をしている。

そして、3日のフライブルク戦ではホームでまさかのドロー。苦労して終盤に先制しながら、直後に同点弾を許してあっけなく連勝は止まった。

■出だしは好調も…

FC Bayern Supercup 120818

凄まじい強さを見せたバイエルンの序盤戦は一体何だったのだろうか。

2018-19シーズン最初の公式戦となったDFLスーパーカップでDFBポカール王者のフランクフルトを5-0で粉砕すると、開幕から公式戦7連勝を達成。そのチームを支えていたのが、選手の勤勉な姿勢によって成り立っていた献身的な守備である。一人ひとりが身体を張ることで、カウンターのリスクを減らし、7試合で喫した失点はわずかに「2」だった。スター選手たちがチームのために身を粉にする姿は、クラブ史上初の3冠を達成したユップ・ハインケス時代と重なるものさえあった。

そして、コバチ監督は、フランクフルト時代から見せてきた戦術家、モチベーターとしての一面を披露しつつ、携帯電話の使用禁止(ロッカールームでのみ可)や毎日の血液検査、そしてローテーションなど選手を細かく管理する意向を示し始める。もちろん、結果を残している間は問題ない。どんなスター選手であっても毎試合の勝利を求めており、チームを正しい方向へ導ける指揮官のためには全力を尽くすことができる。

■不可解なローテーション

NIKO KOVAC BAYERN MÜNCHEN GERMAN BUNDESLIGA 03112018Getty Images

翻って、結果が芳しくなくなると、残るのは体制への不満だ。4試合勝利なしと苦境に陥ったバイエルンで、最初に問題視すべきなのがローテーション。ゴールなど結果を残した選手が次の試合ではベンチスタートといった、不可解なターンオーバーが敷かれている。本来、選手がフレッシュな状態を保つための策だが、動きが重くなった試合後半での失点も多く、とてもその効力が試合で発揮されているようには思えない。

ヘーネス会長もあまりに大規模なローテーションに「多少の不具合が生じている」と指摘。結果が出ていないからこそ、「欧州の舞台で戦っている他のチームはすべて採用している(コバチ監督)」ローテーションがこれほど批判の的となっているわけだ。シーズン終盤に万全の状態で挑むことが可能になるという“副産物”をもたらす可能性もあるが、“クライシス”を招いては元も子もない。事実、クロアチア人指揮官がその恩恵に与る可能性も低くなった。

当然、このローテーションは、選手間でも疑問視され始めている。メンバー選考に苛立っている筆頭がハメス・ロドリゲス。移籍のうわさが止むことはなく、彼を報じるニュースには不満や暴言といったネガティブな見出しが枕詞のようにつきまとっている。

監督の求心力がなくなれば、チーム力が落ちるのは自明の理。“クライシス”脱出後もリーグ戦3試合でいずれも失点を喫し、序盤の堅守ぶりは過去のものとなった。

■ミュラーの存在感が示唆する逆風

Thomas Muller Bayern Munich 15082018Getty

とはいえ、バイエルンがこれほどまでに不安定となっているのは、コバチ監督と選手の信頼関係の揺らぎによるものだけではない。クラブを取り巻く環境そのものが逆風にさらされているのだ。トーマス・ミュラーに関する扱い一つを取っても見えてくるものがある。

選手の中には、ユニフォームを投げ捨て、不満を態度で示すフランク・リベリや、あからさまに眉をひそめるアリエン・ロッベン、「ここまで2試合しか出場できていないのは明らかに不十分」と思わず口に出してしまうサンドロ・ヴァーグナーなど様々なタイプがいるが、彼らに比べればミュラーは“優等生”である。

生え抜きの選手で、リーダーシップも取れるため、チームを叱責することはあっても、不満を態度や言葉で表現することは少ない。しかし、問題はバイエルンというチームにとって存在が大きすぎること。下部組織を含めればチーム最古参で、もはやクラブのシンボルとも言える存在。それだけに、どの監督が率いても起用法には注目が集まり、2試合連続で先発を外れただけで、「ここ8年で初めてのこと」(ドイツ紙『ビルト』)とセンセーショナルに報じられる。

その事実は驚きであるにせよ、ここまで公式戦15試合で3ゴールのアタッカーを先発から外すだけで、外野からけたたましい声が飛ぶ環境は簡単ではない。昨季途中に解任されたカルロ・アンチェロッティ(現ナポリ指揮官)も今頃コバチに同情していることだろう。

当のミュラーは出場機会減少について理解を示しているが、周りはそうはいかない。フライブルク戦で途中出場する際には妻のリサが、采配に不満を示すような投稿をSNSで行い、物議を醸した(※クラブに謝罪し、監督も受け入れたが)。さらに、ドイツ誌『キッカー』はミュラー、リベリ、ロッベン、マッツ・フンメルスがコバチの解任を望んでいると報道。真偽は明らかでないにせよ、メディアからの逆風がチームを不安定の波へと追いやっていることは確かだ。

■ドルトムント戦の持つ意味

Jadon Sancho Borussia Dortmund 2018-19Getty Images

そんな中で迎える10日の“デア・クラシカー”。ドルトムントの調子、順位を考えれば、バイエルンはチャレンジャー側で、ウリ・ヘーネス会長も「我々はアンダードッグ」と認めるところ。しかし、だからといってやすやすと負けていい試合ではなく、コバチ監督も「重要な1週間であることはわかっている」と重圧を感じている。

負ければ解任論は加速し、何かと選手の味方に付きたがる首脳陣が大ナタを振るうことも想像に難くない。つまり指揮官にとっては進退をかけたビッグマッチとなるわけだが、ここで立ちはだかるのがドルトムントを首位に導いているルシアン・ファーヴルだ。

バイエルンにとって非常に相性の悪い相手で、ファーヴルがボルシア・メンヒェングラートバッハの監督としてキャンプからチームを率いた、2011-12シーズンから4季の成績は3勝3敗2分け。戦力差を考えれば、このスイス人指揮官は天敵だったと言っていい。

もちろん、ドルトムントがパコ・アルカセル、アクセル・ヴィツェルら新加入選手の活躍で波に乗っているとは言え、バイエルンがリーグ6連覇中の“ドイツの盟主”であることも忘れてはならない。敵地で思い出したように横綱相撲を取る可能性だってあるだろう。

最大のライバル、ドルトムントを相手にジグナル・イドゥナ・パルクで3ポイントを獲得できれば、曇天に一筋の光が射すかもしれない。負ければ逆風強まりクライシス再来、苦境を好転させるための戦いに、バイエルンが挑む。

文=平松凌(Goal編集部)

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