2018年7月、バイエルン・ミュンヘンは世界中のフットボール関係者の間で、今最も注目を集めている若手タレントの一人であるアルフォンソ・デイビスと契約を結んだ。11月20日にミュンヘンへと到着したばかりのデイビスは、すでにカナダ代表としてもデビュー済み。現在、18歳の彼は、リーグ後半戦からバイエルンの新戦力として活躍することが期待されている。
そもそも、このカナダの逸材を発見したのは誰なのか?果たしてデイビスは、バイエルンの危機を救うことができるような器なのか?
『Goal』では、これらの答えを探しにクレイグ・ダルリンプルに話を聞いた。ダルリンプルはバンクーバー・ホワイトキャップスのユースアカデミーでテクニカルディレクターを務め、2015年にデイビスがエドモントンからバンクーバーへ移るに当たって中心的な役割を果たした人物である。インタビューの中でダルリンプルはデイビスの人柄について夢中になって語り、黄金の未来が待っているだろうと予想した。
■加入からあっという間にトップチームへ

――クレイグ、あなたが初めてアルフォンソ・デイビスを目にした時のことを覚えていますか?
ああ、もちろんだよ。すごくはっきり覚えているよ(笑)。あの日のことは非常に鮮明な記憶として残っているんだ。アルフォンソは12歳と半年の年齢で、エドモントンのユースアカデミーにいたんだ。ピッチの上の彼はずば抜けて興味をそそるプレーヤーだったよ。彼がプレーする様子を眺めるのはすごく楽しかったね。彼はエネルギーと熱気の塊だった。彼のフィジカル、スピード、身のこなし、左足のボール扱い――彼が天与の才能を授かっているのは誰の目にも明らかだったよ。それに、彼はドリブルすることをものすごく楽しんでいた。試合では、ずっと敵に対して一歩も譲らず、相手を打ち負かそうと張り切っていた。彼の中にはフットボールに対する貪欲さ、フットボールを渇望する気持ちがあるのがわかったよ。おまけに、その間中ずっと彼の顔には微笑みが浮かんでいたんだ。
――その後、あなたがデイビスをバンクーバー・ホワイトキャップスの育成部門に連れていった時、彼は14歳でしたね。初めて正式にデイビスと知り合った時には、どういう印象を受けましたか?
アルフォンソをバンクーバーへつれていくには、まず、非常に念を入れて丁寧に説得しなければならなかったよ。彼の両親は土地に根を下ろした生活を送っている人たちで、学校教育に非常に大きな価値を見出していた。そういう意味ではフットボールなんて二の次の扱いだったんだ。アルフォンソのすぐに目につく特徴といえば控え目なところだった。彼は、練習が大好きなはにかみ屋の少年だったよ。一緒にピッチに立っているのが年下の子だろうと年上の子だろうと、彼はそんなことは全然気にしなかった。練習ができて、ボールを追いかけてさえいられれば、彼にはそれでよかったんだ。ポジティブなエネルギーは非常に印象的だった。どんな難しい課題を出されてもそれに立ち向かい、あっという間にトップチームまで上りつめたんだ。
――あなたの話では、アルフォンソがユースチームからトップチームに移ってプロデビューを飾るまでにわずか数カ月しかかからなかったそうですが、その時彼はやっと15歳だったとか。
そうなんだ。あんなことは本当に初めてだったよ。たぶんU-16で8試合から10試合、それからU-18で2、3試合、その後また2部チームでほんの数試合プレーしたと思ったら、もうMLSにたどり着いていたんだ。こんなに急激な成長の過程をもう一度目にする機会があるとはとても思えないね。
■デイビスの最大の武器とは?

――あなたから見て、アルフォンソ・デイビスの比類のなさはどういう点だと思いますか? 彼のどういうところを最も評価していますか?
間違いなく性格だね。フットボーラーとしての彼の能力はずば抜けている。だが、彼の最大の強みはその性格なんだ。仕事というものに対する彼の考え方は模範的だ。彼は自分の力を信じていて、信じられないほど強力かつ独特のモチベーションを持っている。真面目で信頼できるし、誰かほかの人間になりたがっているようなふりはしない。彼は常に彼自身であり、アルフォンソ・デイビスなんだ。彼は自分が走りこむどんなスペースも、そのポジティブなエネルギーですぐに満たしてしまう。それから最後にもうひとつ、彼は非常にインテリジェンスのある選手でもあるんだ。彼は、あのくらいの年頃では普通考えられないくらい、試合というものがわかっているよ。
――大変な褒め言葉ですね。アルフォンソ・デイビスはガーナの難民収容所で生まれ、その後5歳の時にリベリア人の両親とともにカナダへ移住しましたが、そういう家族のバックグラウンドは彼に大きな影響を及ぼしていますか?
間違いなく大きな影響を及ぼしているよ。家族の特殊な経験のせいで、彼は幼くして、人生で本当に重要なものは何なのか、困難な状況を乗り越えるにはどうすればいいのかを学んだんだ。彼の両親は信じられないくらい懸命に働いて、時には同時に2つの仕事をやっていたようだ。夕食の食卓に家族が食べる物を並べられるようにするためにね。こういうことは当然のように彼の心に深く刻まれている。アルフォンソは驚くほど家族思いで、兄弟や両親ととても強い絆で結ばれている。フットボールをやっていない時は、彼はいつも家族と一緒に過ごしている。彼はよく知っているんだよ。自分が若くして今のようなキャリアを築けたのは非常に運がよかったからだということ、人生においてはどんなものも自分で働いて、苦労して手に入れるしかないってことをね。
――あなたはいつ頃から、ヨーロッパのトップクラブから誘いの電話がかかってくるだろうと考えていましたか?
今でも覚えてるんだが、僕はうちのクラブのユースチームの監督に言っていたんだ。2年後にはアルフォンソはトップチームでプレーするようになるだろうって。だが、僕は間違っていたね。何もかも、もっとずっと早く運んだんだから(笑)。 アルフォンソが関心を集めることになるだろうってことは、わりとすぐにわかっていた。そして1年前、とうとう来るべきものが来たんだよ。正直言って、僕はバイエルンからの話だったことを非常に喜んでいる。今のアルフォンソにとってバイエルンは最適のクラブだと確信しているよ。とにかく、彼にとってはパーフェクトな状況だね。
■「リベリやロッベンの後継者になる」

――なぜバイエルンは最適なクラブなんでしょうか?
アルフォンソをどう使おうと思っているのか、バイエルンは初めからはっきり説明してくれたんだよ。バイエルンは彼をさらに成長させたいと思っているけれど、同時に、すぐにトップチームでプレーさせたいとも思っている。常にプレーし続けること、アルフォンソにとってはそれがとても重要なんだ。そして、さらにどんどん新しい課題に挑戦していくことも必要だ。彼はミュンヘンでも課題を乗り越えることで成長を果たし、成功を収めることができると信じているよ。
――ミュンヘンへ来て、ブンデスリーガですぐに真価を発揮することができれば、夢物語の次の章が始まることになりますね。
彼の人生がどういう道のりをたどって来たのかじっくり考えてみると、比べるものがないくらい素晴らしい映画のような話で、僕らはまさにそれをともに体験しているんだ。クラブ内には、バイエルンへ行くのはアルフォンソにとって早すぎる一歩だという声もあった。だが、彼らに何がわかるっていうんだ? とにかく、僕はそうは思わない。もちろん思い切った大きな一歩だし、不確かな領域へ踏み出していくことでもある。けれど、アルフォンソがどんなプレーをするか、どんなに彼が特別か、僕はよく知っているんだ。彼はすぐにバイエルンに馴染んで、一部で予想されているよりも早く成功を収めることができるだろう。まもなく彼は目覚ましい活躍を見せてくれることだろう。
Getty Images――そうなれば、きっとバイエルンにとっても歓迎すべきことでしょう。バイエルンは緊急に新しい活力を必要としている状況ですから。
それもまた、僕から見て最善の状況、完璧なシナリオと考えられる理由の一つなんだよ。バイエルンにはフランク・リベリとアリエン・ロッベンというワールドクラスのプレーヤーがいるけれど、彼らのキャリアは終わりに近づいている。ロッカールームで彼らとともに過ごし、その経験を分かち合うことになれば、アルフォンソは多くを学ぶことができるだろうし、あっという間に彼らのポジションを引き受けることだってできるようになるかもしれない。少なくとも、僕はそう信じているよ。
■「デイビスは一時代を築くだろう」
――アルフォンソは憧れの選手としてリオネル・メッシの名を挙げていますね。アルフォンソを現役選手の誰かに例えるとしたら、まず思い浮かぶのはどういう選手ですか?
誰もがメッシのようになりたいと思うけれど、メッシのプレースタイルは誰にも真似のできないものだ。ひょっとするとアルフォンソは、半分はメッシ、半分は(クリスティアーノ)ロナウドに例えられるかもしれない。僕個人としては、アルフォンソはキリアン・ムバッペに似ていると思っている。パワーとスピードという点でね。あるいは、以前のティエリ・アンリも思い出させるね。まずは、これから数年の間に彼がどんな成長を遂げるか見てみようじゃないか。
――10年後にまた話し合う機会があれば、私たちはアルフォンソ・デイビスのキャリアについてどんなことを語っているでしょうね?
アルフォンソは一時代を築くことになるだろうと信じている。10年後には、5歳から7歳くらいの少年たちが「アルフォンソ・デイビスのようになりたい」と言っていることだろう。 本当にそう思っているんだ。この先、2年や3年で彼の成長速度が衰えることはないはずだ。彼はバイエルンで真価を発揮して、2~3年の内にはバイエルンのスーパースターになるか、もしかしたらどこか他のワールドクラスのクラブで活躍し続けているかもしれないね。

――アルフォンソ・デイビスは、カナダ代表の顔でもありますね。2018年のW杯地区予選では、カナダは4次予選で敗退しましたが、アルフォンソはアイスホッケーの国、カナダでも本物のフットボール熱を呼び覚ますことができると思いますか?
いい質問だね。今カナダのフットボール界では、アルフォンソのほかにもわくわくするような新世代のタレントが成長してきている。ジョナサン・デイビッドもアルフォンソと同じ18歳で、ベルギーのKAAヘントでプレーしている。バル・タブラは19歳で、今年バルセロナBへ行った。こういった若い選手たちには、カナダ国内でフットボールの存在を正しく認知させるだけのポテンシャルが備わっている。2022年のW杯では、カナダはそういう若手が顔をそろえたチームで出場資格を手に入れることになるはずだよ。
インタビュー・文=フロリアン・レーゲルマン/Florian Regelmann
構成=Goal編集部
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