Tottenham celebrate 2018-19Getty Images

チェルシー粉砕で「補強ゼロ」の答えを出したトッテナム、いざ必勝求められるインテル戦へ

■チェルシーに土をつけたスパーズ

2018-11-28-spars(C)Getty Images

開幕から12試合を終えて、実に3チームが負けなしというプレミアリーグ史上初めての状況下で迎えた第13節、無敗レースから1チームが脱落した。土がついたのはチェルシー。マウリツィオ・サッリ監督の下で生まれ変わった好調ブルーズを撃破したのは、同じロンドンのライバルであるトッテナムだった。

今シーズンのトッテナムといえば、話題になるのはこちらもプレミア史上初の「補強ゼロ」で開幕を迎えたことであったり、完成が遅れに遅れている新スタジアムのことであったりと、オフ・ザ・ピッチのことばかりだった。華があるマンチェスター・シティやリヴァプール、サッリ革命が話題をさらうチェルシーに比べればやや地味な印象は否めず、肝心のピッチ上でも主力が入れ替わり立ち替わり負傷離脱する不運もあり、開幕から無難に勝ち点を拾ってこそきたがパフォーマンスは安定せず、本調子とは言えない状況が続いていた。

それがどうだろうか。3-1でチェルシーを破ったこの試合は今季のベストパフォーマンスであり、スパーズのいいところがギュッと凝縮されたような、完璧な勝利だった。8分、キックの名手クリスティアン・エリクセンのFKにデレ・アリが頭で合わせて先制すると、16分にはエースのハリー・ケインが見事なミドルで加点。後半にはソン・フンミンがハーフウェーライン付近から驚愕の独走でカウンターゴールを決め、前線の“役者”が4人そろって仕事をした。

チーム全体で見てもキックオフからエンジン全開で、ハードなプレッシングからのセカンドボール回収が面白いように機能した。マウリシオ・ポチェッティーノ監督の采配も冴え渡り、4-2-3-1の基本形を4-3-1-2の形に微調整し、ダヴィド・ルイスには2トップのケインとソン・フンミンが、ジョルジーニョにはトップ下のアリが高めの位置からケアにいくことで、チェルシーが誇るビルドアップの要を牽制。特にジョルジーニョにはほとんどボールさえ触らせず、完全に試合の「蚊帳の外」に置くことに成功し、サッリ・チェルシーにまったくリズムを作らせなかった。

さらに、チェルシーのストロングポイントであるマルコス・アロンソとエデン・アザールの左サイドを封殺する策も光った。守備時は2トップの一角だったソン・フンミンは攻撃になると右に開き、右サイドバックのセルジュ・オーリエも高い位置を取り、M・アロンソ相手に常に数的優位を作ることで彼にほとんどオーバーラップをさせなかった。組み立ても背後のサポートも機能しない状況でアザールは単騎駆けの打開を試みるしかなかったが、ここもスパーズはDF陣とエリック・ダイアーやムサ・シソコでうまく挟撃してボールを奪っていた。また攻めてはオーリエがM・アロンソを引きつけ、その背後のスペースにボールを送るパターンが試合を通じて徹底されており、これは間違いなく指揮官の指示だったはずだ(実際、先制の場面もソン・フンミンではなかったがケインがM・アロンソの裏に走り込んで得たFKからだった)。

■補強ゼロでもオプションは多彩に

2018-11-28-spars

攻守が噛み合ったチェルシー戦の「影のMVP」を挙げるなら、シソコではなかっただろうか。16年夏に3000万ポンドでニューカッスルから加入以来、なかなか本領を発揮できず一時はポチェッティーノの構想外にもなりかけた男だが、ここ最近はチェルシーで言うヌゴロ・カンテ、アーセナルで言うルーカス・トレイラのような中盤の汗かき役、守備の人として評価を高めている。高い身体能力を生かしたタフな対人守備で、この試合もアザールやマテオ・コヴァチッチらによく食らいついていた。

このシソコに限らず、今のトッテナムは「ベストメンバー以外」の選手がすこぶる良く、スカッドのオプションが多彩になった印象がある。ルーカス・モウラとエリク・ラメラもそうだ。ルーカスはソン・フンミンがアジア大会出場で出遅れた序盤戦からケインと2トップを組み、得意のドリブルで猛威を振るった。ラメラも近年はケガや家族の問題などで精神的に落ちていたが、今季は完全復活と言っていいパフォーマンスを随所に見せている。両者は途中出場やターンオーバーの中で攻撃のいいアクセントとなっている。

また中盤以下のポジションを見ても、シソコの他に、ブレーク時の輝きを取り戻しつつあるハリー・ウィンクス、キーラン・トリッピアーの定位置を脅かすオーリエや、クリスタル・パレス戦やチェルシー戦でも大健闘を見せた若手CBのフアン・フォイス、さらにウーゴ・ロリス欠場時に穴を埋めたGKパウロ・ガッサニーガに至るまで、いわゆる“控え組”もピッチに立てば誰もが奮闘を見せるのが今のスパーズだ。

つまるところ、これが「補強ゼロ」を疑問視する声に対するポチェッティーノの答えだったのだろう。指揮官は昨季までのレギュラー陣と4-2-3-1のメインシステムに加え、「3-4-1-2」「4-2-3-1」「4-3-1-2」といったプランBを様々試しながら、上記のサブ組を奮起させてきた。もちろん故障者リストとの兼ね合いで試行錯誤だった面もあって9月〜10月にかけては苦しんだが、そのかいあって力強く分厚いチームができてきた。

■この勢いを「必勝」のCLインテル戦に

Harry Kane Tottenham 2018-19Getty Images

もちろん、主砲のケインは相変わらずケインで、今季もシュートを撃ちまくり、リーグで7ゴール、CLで4ゴールと暴れている。エリクセンのチャンスメークと走力も変わらず冴えているし、スパーズの好調を図るバロメータの1つであるアリの飛び出しもここ数試合は際立っている。そして、今のソン・フンミンのキレは誰が相手でもそうそう止められるものではない。

就任5年目を迎えたチームの組織や連動性、スタイルの熟成に疑いの余地はない。その土台の上にトップフォームの選手たちと的確なポチェッティーノ采配が乗っかり、プレッシングが機能し、タテへの意識を強く持ち、ショートカウンターがハマったときのスパーズは、とにかく強い。0-1で敗れた10月29日のマンチェスター・シティ戦を最後に、リーグカップのウェスト・ハム戦(3-1)、プレミアのウルヴズ戦(3-2)、チャンピオンズリーグのPSV戦(2-1)、プレミアのクリスタル・パレス戦(1-0)、そして最高のプレーを見せたチェルシー戦で公式戦5連勝。今季もようやく、本来の姿が見られるようになってきた。

仮の住処も板についてきたウェンブリーでチェルシーに完勝した勢いを、まずはそのまま「必勝」が求められるCLインテル戦にぶつけたい。残り2試合でバルセロナ(勝ち点10)、インテル(同7)に後れを取る勝ち点4のトッテナムは、この試合に勝てなければ16強進出の可能性が潰えてしまう(勝ったとしても、最終節でバルサ相手に「PSVと対戦するインテル以上」の結果を出さなければ突破はないと言う苦しい戦いだ)。

全体的な戦力が底上げされ、誰が出ても強さを発揮できるようになった今季のチームは、総合力で言えば王者レアル・マドリーをグループステージで破り、ラウンド16でユヴェントスに惜しくも敗れた昨季のチームより上であるはずだ。バルサの壁は高いし、インテルも好調だが、とはいえスパーズも、たった6試合で欧州最高峰の旅を終わらせてしまうにはあまりに惜しいチームだ。

文=大谷駿

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