■存在感を失う「ミラノダービー」
本田圭佑も、長友佑都も、もういない。
ミラノダービーへの関心度が日本で下がっているとすれば、この要因が大きいだろう。日本人選手はもう、ひとりもいない。おそらく日本だけではない。ミラノダービーへの国際的な関心は、2010年代に入ってから明らかに薄れてきた。
理由も似ている。世界的なスタープレーヤーが、ミラノダービーの舞台となるサンシーロからどんどん流出していくからだ。
ひとつの指標となるのが、バロンドールだろう。
過去10年間はリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドの2人で受賞を寡占してきたバロンドールの投票で、20位までに入ったミランとインテルの選手を統計としてまとめるとこうなる。時代の移り変わりが見えてくるように、3年単位で括ってみる。
●2001~2003年:20位以内に延べ7人。2001年の投票で14位に入ったアレッサンドロ・ネスタ、2002年8位のリバウド、2003年3位のパオロ・マルディーニなど、7人全員がミランの選手だった。ミランは2002-2003シーズンのCLを制し、欧州王者となっている。
●2004~2006年:延べ11人。2004年のバロンドール受賞者となったアンドリー・シェフチェンコ、2006年9位のアンドレア・ピルロなどミランが8人。2005年7位のアドリアーノなどインテルが3人だった。
●2007~2009年:延べ10人。2007年の受賞者となったカカ、16位のフィリッポ・インザーギなどミランが7人。2008年9位のズラタン・イブラヒモビッチ、2009年5位のサミュエル・エトーなどインテルが3人。ミランは2006-2007シーズンにもCLを制している。
●2010~2012年:延べ6人。2010年4位のヴェスレイ・スナイデルなど6人全員がインテルだ。インテルは2009-2010シーズンのCLを制している。
それでは2013年以降は、どうだったか。ひとりもいない。「ゼロ」である。ミランの選手も、インテルの選手も、ノミネートすらされていない。5年間で、ひとりもだ。
セリエAでの成績も振るわない。2013-2014シーズン以降の最終順位は、ミランが8位、10位、7位、6位、6位。インテルは5位、8位、4位、7位、4位。7連覇を成し遂げるユヴェントスに、どちらも大きく水を開けられた。
こうした凋落を振り返ると、象徴的だったのが、2012年夏のミランの大物放出だ。当時30歳のイブラヒモヴィッチ(2009年夏にインテルを退団。バルセロナを経て2011年夏にミランへ)と27歳のチアゴ・シウバを、揃ってパリ・サンジェルマンに売却。インテルは2011年夏のエトーに続き、2013年1月にスナイデルを手放した。どちらのクラブも財政難がすでに逼迫していたのだろう。
■「ダービー」から「デルビー」へ

イタリアではダービーを「デルビー」と発音する。近年のミラノダービーは、イタリア国内でしか大きな話題にならない「ミラノデルビー」となっていた。
潮目が変わったのは、オーナーの交代からだ。双方、紆余曲折を経て、現在は中国の家電大手『蘇寧グループ』がインテルを、アメリカの投資ファンド『エリオットグループ』がミランを保有している。
かつてはインテルのマッシモ・モラッティ、ミランのシルビオ・ベルルスコーニというイタリア人のパトロンが私財を投じ、世界的なスタープレーヤーをサンシーロに結集させた。現在は中国とアメリカのビジネスマンたちが資本を投じ、「デルビー」を世界が注目を集める「ダービー」に戻そうと試みている。
10月21日に迫っているのは、セリエAでは191戦目となるミラノダービーだ。過去の戦績はインテルの70勝、ミランの62勝。58試合は引き分けだった。
どちらも状態は良い。この一戦をホームゲームとして戦うインテルは、7シーズンぶりに参戦しているCLを含め、目下6連勝中。ミランはELを含め、直近8試合負けなし(5勝3分)だ。8節を終えたセリエAの順位は、インテルが勝点16で3位につける。一方のミランは勝点12の10位だが、1試合消化が少ない。未消化のジェノア戦で勝利を収めれば勝点15となり、4位に浮上する計算だ。イタリアでは「より強いのはインテルで、より内容が良いのはミラン」という声もある。
大きな注目を集めているのは、インテルで6シーズン目を迎えた25歳のマウロ・イカルディと、今夏の移籍でミランに加入した30歳のゴンサロ・イグアイン。新旧アルゼンチン代表のエースストライカー対決だ。
2017年11月に38歳で現役を引退したピルロは、「明らかにタイプが違う。イカルディはペナルティエリア内で最強のアタッカーのひとり。イグアインはより完成されていて、チーム自体をよく機能させられる。もちろん、ふたりとも偉大な名手だがね」と分析する。
ちなみに、かつてインテルにも在籍し(1998年夏~2001年夏にインテルに保有権)、両クラブのOBであるピルロは「非常に拮抗した戦いになるだろう」と予想しながら、「ガットゥーゾとロッソネーリを応援する」と語っている。昨シーズンの途中からミランを率いているジェンナーロ・ガットゥーゾは、ピルロにとってはロッソネーリを愛称とするミランの中盤で長年に渡って名コンビを組んできた盟友だ。
■世界最高峰のダービーマッチ
Gettyimages確かにセリエAが栄華を誇った2000年代以降、ミラノの街を二分するこの戦いの世界的な注目度は下がっている。
それでも、「ミラノダービー」はミラノダービーなのだ。同じ都市を本拠地とするダービーマッチの歴史的な“格式”では、世界の最高峰に位置づけられる。
ミランもインテルもチャンピオンズリーグの歴代王者だ。ミランはチャンピオンズカップ時代も含めれば7回、インテルは3回も欧州の頂点に立った。もっと言えば、双方ともクラブW杯を勝ち上がり、世界一に輝いている。こんなダービーはマドリードにもロンドンにもミュンヘンにも、バルセロナにもマンチェスターにもパリにも、他にはひとつもないのだ。
191回目の世界最高峰のダービーマッチは、それがデルビーだろうと、ダービーだろうと、熱い戦いになるのは間違いない。
文=手嶋真彦
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