■ユーヴェの現状とライバル最先鋒は?
Getty Imagesもはや異次元の存在と化しているのは、セリエA8連覇がノルマでしかないユヴェントスだ。切望しているのは23シーズンぶりの欧州制覇という悲願の成就であり、クリスティアーノ・ロナウドの獲得が不退転の決意を示している。いまだ超人的な点取り屋とはいえ、来年2月で34歳となるベテランへの巨額の投資は、ビッグイヤーへの渇望がいかに切迫したものとなっているかを物語る。
ティフォージ(熱心なファン)からの少なからぬ異論を浴びながら、近未来の最終ラインの柱と目されたマッティア・カルダーラ(24歳/レンタル先のアタランタから復帰)を交換要員としてミランからレオナルド・ボヌッチ(31歳)を復帰させた動きも、切羽詰まった現実を浮かび上がらせる。1年前の夏に移籍を志願し、ひと悶着起こして退団という過去を持ったこのCBが欧州戦線で十分に貢献できず、セリエA連覇の記録も止まるようなら、ティフォージの怒りは爆発するはずだ。
Juventus至上命題のCL制覇を最終的に成し遂げれば、怒りは収まるだろう。しかし、主要タイトルをどちらも逃した場合、批判の矛先はボヌッチだけでなく、目先の勝利にこだわった今夏の強化をもっとも象徴するC・ロナウドに向かってもおかしくない。
CLとの2冠がノルマに近い目標となった絶対王者のユヴェントスに迫るとすれば、大幅な陣容強化を進めたインテルが有力候補だ。昨季はノーゴールに終わったアントニオ・カンドレーバと同じウイングに、それぞれ得点力を兼ね備えたマッテオ・ポリターノ(←サッスオーロ)とケイタ・バルデ・ディアオ(←モナコ)を加え、さらにはプレシーズンマッチのアトレティコ・マドリー戦でジャンピングボレーによる決勝ち点を叩き込んだニューフェイスのラウタロ・マルティネス(←ラシン・クラブ)が、早くも大きな驚きをもたらしている。
Internazionale昨季の総得点は「86」のユヴェントスよりも「20」少ない「66得点」だった。机上の計算とはいえ、ポリターノが昨季は10ゴール、ケイタも16-17シーズン(当時はラツィオ所属)に16ゴールとセリエAで実績を残している。前評判以上の逸材にも映るマルティネスは、新戦力の目玉ながらケガで出遅れたラジャ・ナインゴラン(←ローマ)の代わりに4-2-3-1システムのトップ下に収まってもおかしくないほどで、イタリア1年目の大ブレイクも期待できる。
陣容全体を見ても、7シーズンぶりに参戦するCLとの二足の草鞋も履きこなせる厚みがあり、ステファン・デ・フライ(←ラツィオ)を迎えた最終ラインは、ミラン・シュクリニアルとミランダを合わせるとトップクラスのCBが3枚揃う。就任2年目のルチアーノ・スパレッティは対戦相手や試合展開に応じて複数のシステムを使い分けるのが得意な監督だけに、3バックのシステムも活用しながら、最大の得点源となってきたマウロ・イカルディへの依存体質を改善し、下位からの勝ち点の取りこぼしを減らせば、09-10シーズン以来となるスクデット(セリエA優勝盾)の奪還も見えてくる。
■政権交代に踏み切ったナポリは新監督次第で

昨季は勝ち点4差で頂点に届かなかったナポリは、今夏の陣容刷新を小幅にとどめている。退団したGKホセ・マヌエル・レイナ(→ミラン)と司令塔ジョルジーニョ(→チェルシー)に代わる新たな人材は、アレックス・メレト(←スパル)とファビアン・ルイス(←ベティス)。前者はイタリア代表の正守護神候補でもある21歳の大器で、後者は昨季のリーガ・エスパニョーラで飛躍を遂げた。戦力値に大きな上下動はないだろう。
だとすると成否を大きく左右するのは、カルロ・アンチェロッティ新監督だ。前任者のマウリツィオ・サッリ(→チェルシー)が3年掛かりで完成に近づけた組織に修正を施し、より現実的で用心深いサッカーへと舵を切る方向性が予想できる。2列目からの攻め上がりに特長のあるマレク・ハムシクに4-3-3システムのアンカーという新たな役割を託す決断を含め、指揮官の選択がユヴェントスとの勝ち点4差を埋めるための決定的な鍵となる。
昨季3位のローマは、リーグ随一の77.7%というセーブ率を記録したアリソン(→リヴァプール)放出の大きな穴が埋まるかどうか。ローマが対戦相手に許した枠内シュートは、ユヴェントスの94本と比べるとおよそ1.5倍の142本だった。アリソンと入れ替わりで加入したアントニオ・ミランテ(←ボローニャ)のセーブ率68.1%だと、単純計算で失点が10以上増えてしまう。ロシア・ワールドカップでスウェーデン代表のベスト8進出に貢献し、新たにローマの守護神を任されるロビン・オルセン(←コペンハーゲン)の責任は重大だ。
■インザーギ監督の兄弟対決も見どころだ
Getty Images4位までに与えられるCL出場権争いに絡んでくるのは、昨季5位のラツィオと6位のミランまでか。
C・ロナウドに押し出され、ユヴェントスでは構想外となったゴンサロ・イグアインは、それでも計算できるスコアラーだ。昨季途中からミランで指揮を執るジェンナーロ・ガットゥーゾは優れたモチベーターであり、イグアインを含めた陣容からポテンシャルを最大限引き出せば4位以内は十分可能だろう。
昨季の総得点89がリーグ最多だったラツィオは、ただ持ち前のパワーで押しまくるだけのフィジカルなチームというわけではない。戦術家としての手腕を発揮しつづけるシモーネ・インザーギが、実兄フィリッポ・インザーギとの兄弟対決に臨むボローニャ戦はひとつの見どころだ。昨季のフィリッポはセリエBのヴェネツィアを率いると、昇格プレーオフまで導くなど評価を上げている。
5位と6位に与えられるEL出場権をぎりぎり争いうるのは、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督率いる昨季7位のアタランタ(勝ち点60)、ステファノ・ピオリ監督の8位フィオレンティーナ(勝ち点57)、ワルテル・マッザーリ監督の9位トリノ(勝ち点54)、マルコ・ジャンパオロ監督の10位サンプドリア(勝ち点54)あたりまでだろう(昨季6位のミランは勝ち点64)。いずれもセリエAでの実績を誇る知将が留任し、おおむね戦力も昨季の水準を維持できている。
台風の目となりえるのは昨季11位(勝ち点43)のサッスオーロか。新監督のロベルト・デ・ゼルビは、果敢なハイプレスとボールポゼッションを軸とするテクニカルなサッカーを志向する39歳の青年監督。何かやってのけそうな不敵な雰囲気を醸し出す。
セリエBからの昇格組ではエンポリが注目に値する。FWのアントニーノ・ラ・グミナ(22歳)とトップ下のミハ・ザイッチ(24歳)は、どちらも近未来のビッグクラブ入りが噂される興味深いタレントだ。
文=手嶋真彦(スポーツライター)
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