4年に一度の祭典がついに開幕した。
『Goal』では、ロシア・ワールドカップ開幕に際して現役の選手や指揮官に独占インタビューを実施。今回は大会屈指の選手層を誇るボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身の名将、ミロスラフ・ブラゼビッチだ。
83歳のブラゼビッチはこれまでスイス、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナなどの代表チームを指揮。特にクロアチア代表では1994~2000年まで率い、ユーロ1996で準々決勝進出、1998年フランス・ワールドカップで3位と大きな功績を残した。クロアチアサッカー界で偉大な功績を残した指揮官は、母国とも言える国のロシアでの戦いをどのように見守っているのだろうか。『Goal』だけに語ってもらった。
■現代のサッカー界を憂う
Pixsell――監督業を終えられて、今はどういう状態なのですか?
元気だよ。55年間、ずっと働き詰めだったんだ。今はリタイアした状態だよ。だけど、サッカーや、スポーツ全般のイベントはフォローし続けているよ。
――あなたは長く監督をしてきました。この世界にいなくなるというのは、辛くはないのですか?
もちろん、難しいことだよ。だけど、とても長く働いてきたし、年齢からいってもうアクティブに活動し続けられないことを認めないわけにはいかない。ただ、サッカーの最新ニュースは追っているし、求められれば、私の意見をジャーナリストに伝えているよ。
――あなたは、サッカーが時代とともに進歩するのを目撃してきました。今のサッカーや監督について、どう考えていますか?
論理的には、かなり進化してきている。以前は、良い時代だった。だが今は、あまりうまくいっていない。時には実行するのが難しい要件が、監督に求められるようになってきている。だが、進化しなければならないこともある。以前に比べると、サッカーは非常に多くを求められるスポーツになった。レベルも非常に高い。最高に才能のある選手しか今のサッカー界では成功できないね。
――多くの人が、今のサッカーは「ビジネスになってしまった。金がすべてになってしまった」と言います。あなたはそれを残念に思いますか?
そうだね。今や、金のないクラブは、実質的に存在できなくなった。お金がないと、野心を持って最高レベルのクラブと競うことは不可能だ。最近では、チャンピオンになれるかどうかは金次第だ。金があれば、ハイクラスのサッカー選手を雇って、望むような結果を手に入れられる可能性が高くなる。
■98年大会の3位は「華々しい結果だった」
Getty――ワールドカップが始まりました。良い思い出がよみがえってくるのではありませんか?
ワールドカップは本当に特別だ。サッカー界に存在しうる最高レベルの大会だよ。自分のチーム、国として参加できることがどんな気分か、言葉では言い表せない。どの国の代表にも最高の選手しかいない。最高のヨーロッパのクラブで輝いている選手たちだ。私は特にクロアチアのことを気にしている。そう、格別な大会だよ。
――フランス大会でクロアチア代表を率い、3位に導きました。これは、あなたのキャリアにおいて、最高の体験でしたか?
そう、監督としてクロアチア代表を率いて、とても素晴らしい結果を残せたことを心から誇りに思っている。3位になれたんだ。華々しい結果だったよ。だけど、今のクロアチア代表と監督は、今回、あれ以上とは言わないまでも、同じくらい素晴らしい結果を残せるのではないかと思っている。
――当時、あなたはクロアチアの素晴らしい世代を率いていました。グループリーグを突破できたのは、サッカーの能力以外のものもあったのではないかと思うのですが….。
確かに、サッカーの技術さえ優れていればいいわけではない。良い結果を出すには、チームの中に良い雰囲気があることが必要だ。サッカー以外の生活の部分でも、みんなが良くなければならない。あの時、我々は、他人のために自分を犠牲にすることができた。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」だ。この美徳なしには、どんなに世界最高の選手をそろえたところで、良い結果を出すことはできない。あの時の我々には、そのすべてがあった。良い雰囲気があり、固い友情で結ばれていた。なにより、全員が、最高の愛国心をもっていた。
――1998年の時の選手たちと、今でも連絡を取っていますね。何かニュースがありますか?
もちろん。今でも最高の友人たちだよ。我々の美しい快挙を語り合わない日はないね。大きな家族のようなものだ。あの時の絆は今でも生きている。
■準決勝フランス戦での采配を今でも後悔
Getty Images――準決勝のクロアチア対フランス戦で、フランス代表のDFリリアン・テュラムが挙げた2得点を、まだ覚えていますか? それとも、もう忘れましたか?
そうだね、まだ覚えているよ。前から彼を知っていたし、最高のレベルで活躍していることはわかっていた。ただあの時のようなプレーはそれまでしたことがなかったはずだ。彼の偉業には今でも感嘆しているよ。私に言えることは、あの夜、フランス代表にテュラムがいなかったら、決勝に進出していたのは、間違いなく我々のほうだったということだ。
――ワールドカップで優勝できなかったことは、あなたにとって悔いの残ることですか? あなたの素晴らしい経歴において、少し消化不良なところなのではありませんか?
もちろん、とても悔しいことだよ。正直に言って、全国民に告白するけど、決勝に行けなかったこと、世界チャンピオンになれなかったことは、すべて私のミスのせいだ。私は決定的なミスを犯してしまった。悪いのは私なんだ。
Getty――そのミスとは何ですか?
最悪だったのは、フランス戦でズボニミール・ボバンを途中交代したことだ。彼はケガをしていたわけではなく、それまでにいくつかミスをして気を落としていただけだった。最後の笛が鳴るまで彼をチームに残していれば、後半に得点し、あの試合を勝っていたと確信している。私はミスを犯した。私は私を決して許せない。
――運命だから仕方がなかったとは思わないんですか?
そうかもしれない。何事も運命に逆らうことはできないというのは真実だ。
■「クロアチアは私にとってサプライズじゃない」
Getty――先ほど、「ロシアで素晴らしい結果を残すことができる」とおっしゃいましたが、今回のクロアチア代表が良いところはどこでしょうか?
今回のクロアチア代表には、非常に才能ある選手が集結している。(ルカ)モドリッチ、(イヴァン)ラキティッチ、(デヤン)ロヴレン、(イヴァン)ペリシッチ、(マリオ)マンジュキッチ、他にも非常に素晴らしい選手たちでチームが構成されている。非常にハイレベルな選手たちだ。比較的無名な選手も2~3名いるが、彼らも優れた才能があって監督の信頼を勝ち得ている。だから、私はクロアチア代表に大いに期待しているんだ。
――ズラトコ・ダリッチ監督は、少し経験不足だとは思いませんか?
いや、そうは思わない。非常に優れた監督だ。正直でもある。権威主義的なところもあるね。リーダーとしての資質をすべて備えていて、選手たちは素直に従っている。
――ワールドカップでは、どこが優勝すると思いますか?
伝統的に強いチームが今回も強いだろうね。だけど、今回はきっとサプライズがあるよ。
――クロアチアとか?
いや、クロアチアは私にとってサプライズじゃない、優勝候補だ。だけど、予想をするのはサッカーの専門家の専売特許じゃない。私は専門家ぶるつもりはないよ。予想はいつだって難しいし、マスコミはよく間違える。でも、だからこそサッカーは面白いんだ。真実がわかっているふりをするなんて、誰にもできはしない。
インタビュー・文=ナイーム・ベネドラ/Naim Beneddra

▶サッカー観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【DAZN関連記事】
● DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
● DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
● DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
● 野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ


