デニス・ナキは、ドイツ人やドイツサッカー連盟(DFB)の人種差別的な扱いを訴え、ドイツ代表からの引退を表明したメスト・エジルの考え方に疑問を抱いているようだ。自身のインスタグラムにエジルに向けた公開状を投稿した。
29歳のナキはドイツ生まれのクルド人で、レヴァークーゼン下部組織を経てザンクト・パウリやパダーボルンなどでプレー。過去3年間はトルコ3部のアミードスポルに所属していたが、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領を「国際法犯罪者」など批判すると、トルコサッカー連盟(TFF)は「差別的行為や思想的プロパガンダ活動」を理由に、サッカーからの永久追放処分を科されている。
ナキは「クルド族の血を引く僕は3年間、トルコのアミードスポルでプレーした。その間、アミードやクルディスタンで戦闘が起こり、人が死んだ。人が死なないために、僕は何度も平和のために立ち上がった」と記し、「クルド人の子供、母、若者たちが死に、クルド人の街が破壊された。僕は人が死ぬことを望まない。生きることを望む」と続けている。
「このような姿勢を示したことやクルドにルーツを持つため、僕はトルコでの3年間の間、アウェーマッチの度に、数えきれないほど多くの屈辱と暴力を受けた。トルコのファシストに何度か脅迫され、数週間に渡る出場停止処分も科された。最近、ドイツで僕に対して暗殺計画があった」
「だがそれだけでは十分じゃなかったようだ。TFFから27万3000リラ(約620万円)の罰金処分を言い渡された上、プレーヤーライセンスが永久に取り上げられ、辞めさせられた。それでも僕は平和を信じ続け、それを常に強調してきた」
ナキは、ロシア・ワールドカップ(W杯)前にトルコのエルドアン大統領との写真を撮影し、それを「政治的な意図はなかった」としたエジルに、次のように問いかけている。
「君は声明で君に対する人種差別、そしてそれに係わった代表を離れる理由について説明してくれた。何故、トルコで増え続ける僕やほかのクルド系、またはほかの少数民族のサッカー選手たちに人種差別的、ファシストの攻撃には同じような反応を見せない?」
「トルコで1人のサッカー選手のキャリアが終えさせられた。平和を求める人がテロリスト扱いにされたが、君はこの件についてどういう反応を見せたのかい?トルコで君のことを『同胞』や『愛国主義者』と見る人たちは何故、僕のことを『テロリスト』と呼ぶのだろうか?」
「忘れないでほしい。次にトルコに訪れるとき、君を温かく歓迎する人々は、僕に人種差別的な攻撃をした人々と同一人物であることを」とも指摘するナキは、エジルに「ドイツでのファシズムや人種差別だけではなく、全世界でのその類のものに対して戦ってほしい。トルコでのクルド族に対する人種差別にも繊細になり、それに対して戦ってほしい」と要求。公開状を「人々が自由であり、希望に満ちた、人種差別や搾取が存在しない平和な世界のために」と締めくくっている。
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