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オリヴェイラ監督の言葉から読み解く。浦和に“力強さ”が戻ってきた理由

力強い浦和レッズが戻ってきた。

浦和は、1日に行われた明治安田生命J1リーグ第19節で川崎フロンターレを2-0で下して2連勝をマーク。無敗も6試合に伸ばして7位まで浮上してきた。

昨季、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を10年ぶりに制覇し、アジア王者に輝いた浦和だったが、今季の明治安田生命J1リーグは開幕5試合勝利なしと低迷していた。クラブはすぐに堀孝史監督の解任を決断。大槻毅育成ダイレクターが暫定的に指揮を執ることとなった。その大槻体制初陣となった第6節のベガルタ仙台戦で今季初白星を挙げると、続く2試合も勝利し、3連勝と復調。第9節の北海道コンサドーレ札幌戦(0-0)をもって、オズワルド・オリヴェイラ監督にバトンタッチした。

■「短期間で水をワインに変えることはできない」

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かつて鹿島アントラーズを率いて前人未到のリーグ3連覇を成し遂げた名将の指揮官就任は、浦和の『逆襲』への固い決意を予感させる決断であった。しかし、新体制初陣の柏レイソル戦で敗れると、続く湘南ベルマーレ戦も為す術なく完敗。勝ち星に恵まれないままW杯中断を迎えた。

当時の就任会見でオリヴェイラ監督は「今シーズンのスタートからできあがってきている形を尊重しながら、大きく崩すことはしたくない」と話していた。

その上で「この状況で一番賢いやり方は、少なくともワールドカップの中断までは、今のやり方に継続性を持たせることが重要。そこに継続性を持たしながら、徐々に、私の狙っていることを加えていこうと思っている。そして中断のときに、我々のより多くの指示、我々の望んでいるものを与えることができる」と、中断までは前体制の戦い方を踏襲するやり方に舵を切った。

湘南戦後にも指揮官は「短期間で水をワインに変えるようなことはできない」と独特の表現で今のチーム事情を吐露。「時間が必要だと思う。時間が経過するにつれ、選手を見極め、誰が必要な仕事ができるのか、ということも分かっていくと思う」と自信をのぞかせていた。

■「徐々に練習してきた形が出てくるようになった」

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そして中断明けの初戦となった名古屋グランパス戦ではセットプレーから3ゴールを奪取して快勝。「選手たちが向上心を持って、トレーニングしてきた成果」と、中断中に重視してきたセットプレー対策が功を奏した。

続くセレッソ大阪戦ではドローに終わったが、新加入のファブリシオがデビュー。前半に主導権を握られたが、後半は完全に試合を支配。決定機を作りながらも不運に見舞われ、追加点を奪えなかったものの、悲観する内容ではなかった。

前節はサンフレッチェ広島と激突。首位との戦いは厳しいものになると見られていたが、戦前の予想を覆す展開となった。リーグ最少失点を誇る鉄壁守備陣に対して4ゴールを奪取。一方でリーグ得点ランクトップに立つパトリックら強力アタッカーを1点に抑えきり、4-1の快勝を飾った。ここでもオリヴェイラ監督は、名古屋戦同様にトレーニングの成果を強調。徐々にオリヴェイラ・スタイルが浸透しつつあることが見て取れた。

「徐々に練習してきた形が出てくるようになった。カウンターからチャンスをつくり、得点を重ねて我々にとっては素晴らしい結果になった」

広島戦の大勝で露呈していた得点力不足を打破。とりわけファブリシオが2ゴールの起点となり、後半アディショナルタイムには加入後初ゴールをマーク。チームとして吹っ切れた瞬間であった。

■「選手の聞く耳と規律を守る姿は、最高レベルにある」

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そして、迎えた昨季王者の川崎フロンターレとの決戦。浦和は前半から川崎Fにボールを保持されながらも、前からのプレスで圧迫。開始7分に岩波拓也のロングパスに武藤雄樹が抜け出すと、中へクロスを供給。走り込んでいた興梠慎三が冷静に流し込み、幸先よく先制点を獲得した。

自陣でブロックを固めつつ、ボール奪ってからの堅守速攻で少ない決定機をモノにする形で、リーグ屈指の攻撃力を誇る川崎Fをシャットアウト。終盤にはピンチを迎えながらも、全員が最後まで走りきる・攻めきる姿勢を崩さず、後半アディショナルタイムにPKを奪取。ファブリシオがきっちり決めてとどめを刺した。

「選手たちは、非常に意欲的に指示を実行しようとしている。組織として、チームとして戦うというところを、彼らはやってくれている。その中で、個々のクオリティーも出ている」

その中でもオリヴェイラ監督は名指しで柏木陽介を称賛。「今は柏木がいい驚きを与えてくれている。彼には読みやテクニックがあるが、それだけではなく守備のサポートもしている。さらに、守備を手伝うだけでなく、そこから形を作って最終的にPKにつながった。柏木の評価は、我々だけではなく日本代表の方もすべきだと思う」と、10番の好守における奮闘を絶賛した。

鹿島時代に慣れ親しんだ4バックシステムを敷かず、浦和の普遍的スタイルを踏襲しつつ、それぞれに適した役割を与えていく。セットプレー、スペースへの裏抜け、サイドからの崩し、相手にボールを持たせても、奪ってからの速攻で決定機を作る、といった多彩な攻撃が今の浦和にはある。与えられた役割が激変した“最たる例”として柏木の名前が挙がったが、本人も、今のチームが変化し続けていることをしっかりと感じ取っている。

「残り25分くらいから正直めちゃくちゃキツかった。これを乗り越えたら自分が強くなれると思って、そういう気持ちを持って戦えた。強くなったんじゃないかと思う」

「阿部ちゃん、森脇といった途中から入ってきた選手が、良い声掛けだったり、良い守備をしてくれてたので、本当に今チームが強くなっている感じがあるし、それが強さかなと思う」

ディフェンディング・チャンピオン相手の一勝は、指揮官がこれまで抱いていた“自信”が“確信”に変わった瞬間だった。

「選手たちの聞く耳と規律を守る姿は、最高レベルにある。我々の哲学、我々の仕事の仕方を、最初から最後まで貫いてくれた。このチームに対して誇りを感じる」

名将から『最高レベル』という言葉が出るほど、今の浦和には抜かりがない。気づけば順位は7位、ACL出場圏内となる3位の川崎Fまで勝ち点6差に。

名将・オリヴェイラは就任当初からすべてを達観していた。必ずや『逆襲』のときが訪れることを。そして、ようやく力強さが戻ってきた浦和。ここから本当の『逆襲』が始まる。

取材・文=大西勇輝(Goal編集部)

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