2018_9_16_Mansour(C)Getty Images

【オイルマネーでCLを制するか~マン・C編~】マンチェスター・シティは優勝候補筆頭にあらず、都並敏史がプレミア王者の苦戦を予想

ついに開幕を迎えた2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)。3連覇中のレアル・マドリーを止める新たな王者が誕生するのかが見どころの中、『Goal』では近年のシーズンで毎年優勝候補の一角に挙げられながらも苦戦が続くマンチェスター・シティとパリ・サンジェルマン(PSG)に注目。いずれも“オイルマネー”をバックにここ数シーズンで大きく規模を拡大させ、自国リーグを席捲するクラブだが、欧州の頂点に立つには至っていない。

今回、『Goal』では民間放送のCL番組などで解説者を務めた経験を持ち、欧州最高峰の大会を見続けている元日本代表DF都並敏史氏に、両クラブがCLで苦戦している理由と今季の行方を占ってもらった。第1回のPSG編に続き、第2回はマンチェスター・シティに迫る。

2008年にアブダビの王族であるシェイフ・マンスール主導の下、アブダビ・ユナイテッド・グループが買収したマンチェスター・Cは、その後の10年で推定14億ポンド(約2000億円)もの資金を市場に投入。積極補強の効果もあり、3度のプレミアリーグ戴冠を果たした。しかし、いまだ欧州制覇には至っていない。ジョゼップ・グアルディオラを招へいして3年目。欧州制覇へ期する思いのマンチェスター・Cの今季CLを都並敏史氏が占う。

■ペップ体制でクラブとしてさらに強化

2018_9_16_Mansour(C)Getty Images

2008年にオーナーが変わってから、派手な補強によってチームを強化してきた点はPSGと同じですね。当初は補強に関して現場とクラブ上層部の意思疎通という点で少し疑問に思える点もありましたが、特に2016-17シーズンにグアルディオラ監督が就任してからは、現場の意見を取り入れた一貫した強化方針になっていることがうかがえます。以前からグアルディオラ監督と仕事をしてきたチキ・ベギリスタイン(フットボールディレクター)とフェラン・ソリアーノ(CEO)がフロントにいますしね。

サッカーのスタイルとしても少し守備的なロベルト・マンチーニ監督から、より攻撃的なマヌエル・ペジェグリーニ監督、そしてグアルディオラ監督と、変わってきた。私たちの時代はマンチェスターと言えば、ユナイテッド。そして、絶対勝てないのがマンチェスター・シティという位置づけでしたが、それはもうなくなって、それを越えるかというところにまで成長しました。

グアルディオラ監督の体制になってからだけみても、1シーズン目、そして2シーズン目と進化しています。もともとのポゼッションサッカーに加え、スピード感が上がっていて、より相手に捕まえられにくくなっています。足下の技術に長けるアイメリク・ラポルテが新たに加入したことで、ビルドアップの安定感も増しています。ニコラス・オタメンディ、ジョン・ストーンズ、ヴァンサン・コンパニに加えて、ラポルテもセットプレーが強いので、これは強みになります。

■マンチェスター・Cの懸念点

2018_9_16_manchestercity(C)Getty Images

積極的な取り組みもあり、プレミアリーグはここ7シーズンで3回制していますし、今シーズンも優勝候補筆頭の一つですよね。ただ、CLにおいては過去7シーズンのうちに5度がベスト16までで、2015-16シーズンのベスト4が最高成績です。

今シーズンも、マンチェスター・CはCLの優勝候補筆頭というのが一般的な見方でしょう(※編集部注 18日現在、ブックメーカー『Sky Bet』で1番人気)。CLを制するために必要なこととして、私は「緻密な分析をしてくる相手すら凌駕するような明確なコンセプトを備えているチーム」か、あるいは「ソリッドな守備のメカニズムを備えているチーム」ということが重要であると考えています。3連覇中のレアル・マドリーなんかはまさに、クラブとして伝統的にコンセプトが一貫していますよね。

その点で言えば、グアルディオラ監督個人は「明確なコンセプト」を持っています。ただ、3シーズン目ですし、クラブの伝統になるには至っていない。また、グアルディオラ監督の性格で言えば、基本的には自らのスタイルを貫き通します。当然、プレミアリーグの下位クラブ相手だと、そのコンセプトの下、つまりポゼッションしながらボールを動かし、相手の穴を見逃さず、得点を重ねる。それで大抵、勝てます。

ただ、CLでは、よりソリッドな速攻を持っていたり、異なる潰し方のパターンを持っているチームとぶつかります。グアルディオラ監督の場合、そこすらも凌駕することで上を目指そうとする。もともと哲学が選手たちに浸透していたバルセロナでは組織的な決め事を植え付けるのは簡単でしたでしょうが、マンチェスター・Cでスタイルを植え付けるのは、より時間がかかるものです。

相手の速攻や潰し方のパターンという話で言えば、例えばバンジャマン・メンディ。彼は今シーズン、第4節までの4試合で4アシストを記録して、メディアにかなり評価されていますよね。でも、私としてはCLの上の方で、このままの彼を使っていたら厳しいと思います。

ここまでの試合の中でも、メンディの背後のスペースは非常に危ないですし、ボールに食いつきすぎるところやスペースケアという戦術的な部分の理解度が足りていないと思います。今のままでは、彼のところは狙われるでしょう。そのあたりはグアルディオラ監督がどの程度、選手を成長させられるかにもよりますけどね。CLで勝ち上がってくるユヴェントスやアトレティコ・マドリーみたいなチームは、そのあたりの守備の徹底の仕方が違います。

逆に攻撃面の話でもグアルディオラ監督は、ユヴェントスやアトレティコのような強固な守備網を持つチームに対して、ポゼッションやボール回しで相手の穴を生んでゴールを狙う、という戦いをすると思います。グアルディオラ監督は、そこでもこだわりを捨てないでしょう。本当はクリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルのような圧倒的な個を持つ選手を擁して、カウンターを使ったりする方が効率的だとも私は思いますが。

昨シーズンにベスト8で敗れたリヴァプールなんかは、ユルゲン・クロップ監督がうまくそのスタイルを活用していますし、モハメド・サラーもいる。マンチェスター・Cがプレミアリーグで圧倒的な強さを見せて優勝しても、私がCLでクエスチョンマークを付けたいのは、そのようなところが理由です。

■グアルディオラの“隠し玉”に期待

2018_9_16_Guardiola(C)Getty Images

逆に言えば、グアルディオラ監督の底知れない引き出しで、私のこれらの懸念をぶち破るような戦いを見ることができるのか、楽しみでもあります。策士であるグアルディオラ監督は、プレミアリーグやCLのグループステージで見せていない隠された戦術を大一番で出してくる可能性も高いです。

その中で、ベスト4以上に進出するためのキーマンは、やはりケビン・デ・ブライネでしょう。序盤は負傷で長期離脱しますが、決勝トーナメントに入るころには復帰して調子を上げているはずです。この選手は何でもできるし、ミドルシュートという飛び道具も装備していますよね。そして、ポジショニングだけで相手の組織を混乱させることができます。

CLは本当に曲者が多いです。シャフタール・ドネツク、リヨン、ホッフェンハイムとのグループステージは楽な相手はいませんが、力関係からみれば問題なく突破できると思います。そして決勝トーナメントは、組み合わせもありますが、私の予想としてはベスト8か、良くてベスト4です。優勝は難しいという予想ですが、話したとおりグアルディオラ監督の“隠し玉”には期待しています。彼の傾向として、その“ヒント”となる戦術や選手起用法を直前のリーグ戦などで試したりするので、そこを注視してみるのも楽しいと思います。

▶UEFAチャンピオンズリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【DAZN関連記事】
DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ

Goal-live-scores
広告