2018-04-06 Minamino SalzburgGetty Images

イタリア人記者が見た南野拓実…W杯メンバーに選ばれる可能性はあるのか

レッドブルが唯一アカデミーを所有していない大陸は、オセアニアを別とすれば、アジア地域だけである。しかしアジアのスカウティングはきちんと機能しており、満足できる結果を得ているといえる。最近スカウトによって花開いた選手と言えば、韓国人FWファン・ヒチャンや日本人FW南野拓実が挙げられる。2人はヨーロッパリーグ(EL)でそれぞれゴールを決め、シモーネ・インザーギ率いるラツィオのイレブンにその存在を知らしめた。

ザルツブルクでは前者のファン・ヒチャンがエースとしてけん引するが、今回はW杯イヤーにより期待がかかる南野について綴っていこう。

■チームを救った1点

南野が称賛されるべきプレーの一つが、ヨーロッパリーグのレアル・ソシエダ戦だ。南野はほとんどウォーミングアップすらせずに12人目の選手として交代でピッチに入ると一撃を与えた。出場からわずか14分で、ラツィオ相手にゴールを決めたのだ。それも引き分けに持ち込む貴重な得点だった。あの素早いゴールは、ザルツブルクにおける彼の役割を上手く代弁していたと言えよう。

2017-07-12-takumi-minamino(C)Getty Images

彼はザルツブルクに加入した当初から新たな環境に戸惑うことなく、すぐに適応していった。特に2015-16シーズンは合計40試合に出場し、13得点をマーク。平均すれば192分に1ゴールの計算になる。2015年1月、移籍金80万ユーロ(約1億円)で日本からやって来た南野は、これまで才能ある選手を数多く送り出してきたJ1クラブの1つ、セレッソ大阪の出身だ。セレッソ大阪は近年、MF香川真司やFW乾貴士、FW清武弘嗣らを輩出。南野も偉大な先輩に倣うように、オーストリアで過ごしたこの3年半において、順調に得点を挙げ続けているのだ。

■「プレーの幅を広げるためオーストリアに来た」

レッドブルの公式マガジンに対し南野は「ゴール前での才能を開花させ、プレーの幅を広げるにはオーストリアの経験が重要でした」と強調している。

「日本ではFWとして決まったパターンのプレーばかりでした。ゴール前ではいつも同じ2~3パターンからプレーを選択していました」

この言葉に、南野が自身のプレーを向上させたいと思った理由が集約されているだろう。

南野の飛躍を語る上で欠かせないのが、生まれながらのゴール嗅覚を持つストライカー、 FWホナタン・ソリアーノの存在だ。現在、中国でプレーするホナタンは、ザルツブルク在籍時には202試合で172得点を挙げている。翌年、南野は平均 133分間に1ゴールを決めており、近年のザルツブルクの歴史において、事実上ソリアーノに次ぐ2番目のゴールゲッターになっている。これは偶然ではないだろう。

2017-03-14 Minamino SalzburgGetty Images

これまで日本サッカーは、トップ下やウィンガー、セカンドトップの選手を輩出してきた。シーズンあたり20ゴールをマークするFWとなると、その数はかなり少ないのだ。南野もユース時代は、平均1試合あたり1ゴールを上回っていたというが、それでも20得点には及ばない。

だが彼は、プロの世界へ飛び込んでからというもの中盤から前線にまたがるポジションを担い、1トップや2トップの背後、さらには敏捷性やスピードを最大限に生かせるサイドでも問題なくプレーしているのだ。まさに“ハイブリッド”な選手へと進化し、成長したと言えるだろう。

■監督の解任で再びシャッフルされた代表のカード

さらに、平均得点数も胸を張れる数値をキープしている。先述したように南野は2015-16シーズンは13得点、2016-17シーズンは14得点、今シーズンは10得点をマークした。しかし最高の日本人選手の一人であるMF本田圭佑らが南野の前には立ちはだかり、南野はサムライブルーでは大鍋の中に埋もれている状態だ。これまでに出場した日本代表での試合は、わずかに「2」である。

Minamino Takumi, Cerezo Osaka

しかし、ワールドカップわずか2カ月前にして、ヴァイッド・ハリルホジッチが解任された今、カードが再びミックスされたことは南野にとって有利に働くかもしれない。同ポジションのライバルと比較しても、南野は高水準のゴール率をマークしているからだ。

南野は大阪で生まれ、セレッソ大阪の下部組織で育ったが、そこでは1970年代にオランダ人監督ウィール・クーバー氏が提唱した“クーバー・コーチング”の方法論に則った指導を受けていた。特に1対1やボールコントロールなど選手個人の能力を高めることを目的とした練習に重点が置かれ、南野もその技術を身に着けた一人と言えよう。

そんなオランダとの縁もあってか、17歳のとき、南野は初めてヨーロッパへと旅立った。そしてMF小野伸二やFW宮市亮ら才能ある日本人選手が活躍したクラブとして知られるフェイエノールトでテストを受けている。

■南野がW杯メンバーに選ばれる可能性

南野のA代表での出場数はこれまでにわずか2試合だが、ハリルホジッチが日本代表監督の座を解かれたこともあり、ロシアW杯に向けてサプライズ選出へ道が開けるかもしれない。過去を振り返れば、ウズベキスタンで開催されたAFC U-16選手権2010では5ゴールをマークし、得点王に輝いている。契約を勝ち取ることはできなかったものの、オランダではU -19メヘレンとの対戦でピッチに送り込まれ、チームが5-0で大勝したうちの2得点を決めている。そして 2016年には、カタールで行われたAFC U-23選手権に参加し、再び国際舞台で貴重な経験を得ることができた。所属先のレッドブルが許さなかったため、全日程に参加することはできなかったが、日本の優勝に貢献したことは間違いない。

南野は、レッドブルが見つけた最も優秀な日本人と言ってもいいだろう。今年、彼がW杯のピッチに立つことは、想像に容易い。

文=アレック・コロドルチーニ/Alec Cordolcini

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