■無力さが露呈されるプレシーズンに
マンチェスター・ユナイテッドのプレミアリーグのシーズン開幕まで 1週間を切った現在、ジョゼ・モウリーニョには課題が山積みである。
というのも、いまだにロシア・ワールドカップに出場したマンチェスター・Uの数選手が、モウリーニョとともに戦えない可能性があるのである。アントニー・マルシャルに放出の噂がある上に、アントニオ・バレンシア、クリス・スモーリング、ネマニャ・マティッチが米国ツアーで負傷した。それを受けてモウリーニョは、できるかぎりの機会を利用し、クラブの移籍責任者たちに「現在の移籍期間中にもっと選手を獲得しろ」と催促しているところなのだ。
新しいシーズンに向けて、準備が整っているとは言い難い。開幕戦、オールド・トラッフォードで行われるレスター・シティ戦に向けて、「夢の劇場」の周りには不平不満が渦巻いている。プレシーズンでは、多くの人々がマンチェスター・Uの今シーズンのタイトル獲得を期待させるような試合ぶりを期待していたにもかかわらず、チームの無力さが露呈される結果となってしまった。
この事態は、多くの点において、ジョゼ・モウリーニョにとって目新しいことではない。マンチェスター・U での3シーズン目において、かつてチェルシーやレアル・マドリーでそうだったように、様々な壁がモウリーニョの前に立ちはだかるであろうことは、大勢の人々が予想するところなのだ。
■過去の3年目
モウリーニョが3シーズン目に苦労することは、よく知られていることであり、しばしば証明されていることである。チェルシーでは、オーナーのロマン・アブラモヴィッチが、監督3期目を迎えたモウリーニョの希望に反してアンドリー・シェフチェンコを加入させる決断を下し、そのことによって両者の間に不信の種が植えつけられ、最終的に次のシーズンには早々の仲違いにつながっていった。
そうした内紛を経て、モウリーニョはレアル・マドリーの監督となったが、キャプテンだったイケル・カシージャスとの確執が発生。そして再びチェルシーの監督になったものの、女医のエヴァ・カルネイロとの一連の騒動、および、ピッチでのチームの予想外の不振で降格圏に勝ち点1まで迫ったことにより、12月に途中解任されることとなった。
■モウリーニョ自身もシーズンを不安視
マンチェスター・Uの監督になる前には、いずれのチームの監督としても、2年目にリーグタイトルを獲得しているにもかかわらず、モウリーニョは3シーズン目に大きなタイトルをつかむことに失敗している。そのうえ、ほとんど例外なく、最大級の論争を巻き起こすようなことをしでかしてしまっているのだ。いずれの場合も結果は惨憺たるものだったが、その結果自体が、彼がそれぞれのチームを去る主な要因だったわけではない。
この夏、モウリーニョのいくつかの態度が、マンチェスター・Uでも同じようなことが起こるのではないかとの多くの憶測を呼んでいる。最高経営責任者のエド・ウッドワードと本格的な口論をしたという可能性が噂されているのだ。確かに、モウリーニョの物腰は、目の前のチャレンジに挑もうとしているというよりも、今後どうなるのか不安を感じているように見受けられる。リーグ開幕に当たってチームの準備が不十分であることに、いくばくかの不安を感じていることを、彼自身が認めているのだ。
「ワールドカップに出場した選手たちはトレーニング不足で、彼らなしで開幕を迎えることになりそうだ。難しい開幕となるだろう。正直に言って、少し不安を感じている」
■識者が指摘するモウリーニョが向き合うべき問題は?
マンチェスター・Uの元スター、ルー・マカリは『Goal 』に対してマンチェスター・Uに衆人の厳しい注目が集まることで、モウリーニョにとって事態はより厳しくなっていると語っている。
「マンチェスター・Uに来た時、モウリーニョはこのクラブがどれほどビッグか、よくわかっていただろう。だが、いかに巨大であるかは、今ようやく思い知ったところだろうと思う。ユナイテッドは、あらゆる注目が集まる、世界最大のクラブだ。モウリーニョは、あらゆるニュース速報に少なからず苛立ちを感じはじめていることだろう。しばらくは、少しタフな時間を過ごさなければならなくなると思う」
「チェルシーにいた時は、マンチェスター・Uほど注目が集まることはなかったはずだ。それに、彼がスペインやイタリアにいた時、当地のメディアは、今とはおそらく違うタイプだったろう。ユナイテッドほど大きなクラブはなく、ありとあらゆることに対処しなければならない」
マカリはこうも言う。最高レベルの期待がかけられるマンチェスター・Uの監督は、困難な事態に襲われるものだが、ジョゼ・モウリーニョは必要な変化を生みだすのに適切な人物である、と。
「どこにいても、何かしら得るものはある。だが、マンチェスター・ユナイテッドでは、それ以上だ。何かしらのものを得るということは、負けなかったということだ。何も得るものがないということは、失敗したということに他ならない」
「モウリーニョを好むと好まないとのかかわらず、すでに成果はあがっている。プレースタイルやそういうものすべてが気に入らないとしても、トロフィーを得たことは事実だ。それだけでは十分でないとしても、ジョゼは、きっと栄冠を手にするだろう。そして、自分はハッピーではないと感じたら、事態を変えようとするだろう。だけど、そうしたことすべてに集中するのは、少しタフなことだと感じていると思う」
実際、マンチェスター・Uに当たるスポットライトは、まぶしくなる一方だ。シーズンを通してモウリーニョの態度、やり方、行動、言葉は、チームの結果と同じように、すべてが細かく審査される。誰もが、モウリーニョの失敗や、モウリーニョの辛辣な言葉が、誰かの喉元に襲いかかるところを見たいと思っているのである。
モウリーニョの周りでは、実態よりも噂話が先行する。そのため、過ぎ去った年月の失敗は肥大化して扱われ、現実の「3」シーズン目に、これまでとは違う結果が出ないかぎり、そうしたことが続くのである。問題は、モウリーニョに外野の騒音を締めだす能力があるかどうか、そして、長く待たれている、マンチェスター・ユナイテッド史上21回目のリーグタイトル獲得がなるかどうか、ということだ。
困難な夏を経て、モウリーニョがいつしか旧聞となり、来年の5月、マンチェスター・Uがプレミアリーグのトロフィーを手にしなかったとしても、驚くものはいないだろう。モウリーニョは、またしても現実に内紛を起こしてしまうのだろうか。
文=クリス・ヴォークス/Kris Voakes
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