浦和レッズが、46,893人のホーム大観衆を背に宿敵・鹿島アントラーズから久しぶりの白星を挙げた。約2年勝利できていなかった相手になぜ逆転できたのか?後半に見せた攻めのアプローチにその理由が隠されていた。
遡れば2016年11月のチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦。浦和は阿部勇樹のPKで鹿島を1-0で下した。しかし、続く第2戦ではホームで痛恨の逆転負け。悲願のリーグ制覇を逃すとともに、これ以上ない屈辱を味わった。浦和はそのCS決勝第2戦以降、鹿島相手にFUJI XEROX SUPER CUP 2017、天皇杯を含む公式戦で6連敗。約2年、勝てていなかったのだ。
今季も前半戦に満を持して敵地へ乗り込んだが、またも0-1で敗戦。鹿島の勝負強さを前に苦手意識さえ芽生え始めていた。そして迎えた今季2度目の顔合わせ。ともにACL出場権を目指せる位置につけており、両者の勝ち点差はわずか4。浦和にとっては勝てばその差を1に縮められる一方で、敗れると7ポイントに開き、3位滑り込みは厳しい状況になってしまう。是が非でも勝ち点3が欲しい一戦となった。
■前半は鹿島の「狙い通り」に
©J.LEAGUE浦和は、橋岡大樹がU-19日本代表に選出されているため、右ウイングバックにはベテランの森脇良太を起用。前節、負傷交代した青木拓矢も無事先発入りを果たした。日本代表の三竿健斗を出場停止で欠き、内田篤人や中村充孝など、ケガ人が続出している鹿島とは対照的に、ほぼベストメンバーで臨むことができた。
序盤は「非常にいい入りができた。躍動感があって、人もボールも動いた。自分のサイドからも非常に良い崩しができた」と森脇が語るように、前半にペースを握ったのは浦和だった。開始2分に森脇がファーストシュートを放つと、12分には長澤和輝とのワンツーから武藤が抜け出し、決定機を迎えた。いずれもゴールには至らなかったが、圧倒的にボールを支配する浦和に対し、鹿島は20分までまったくと言っていいほどノーチャンスだった。
しかし20分を過ぎると、鹿島が徐々にリズムをつかみ始める。24分に安西幸輝が初めてシュートを放つと、左サイドから攻勢を強めていく。すると35分、ペナルティーエリア手前でパスを受けたセルジーニョが、左サイドをオーバーラップする山本脩斗へパス。山本は利き足ではない右足でふわりとしたクロスを挙げると、ファーに走り込んでいた西大伍がダイレクトで叩き込んだ。
「前半は間違いなく想定内」(昌子源)、「前半はプラン通り」(土居聖真)とそれぞれが振り返るように、劣勢だった鹿島が少ないチャンスをしっかりとゴールにつないだ。
■それでも後半に逆転
©J.LEAGUE前半を1点ビハインドで終えた浦和。今までならここで攻め急いでいしまい、鹿島の術中にハマってきた。しかし、失点をしても冷静に戦況を見つめていたオズワルド・オリヴェイラ監督はハーフタイムに選手たちにな明確な指示を与えた。「リードされているけれど、(やり方は)変えなくてもいい」と話し、その上で「良いプレーはできている。まず落ち着こう。そして逆転しよう」と鼓舞した。
すると後半、連戦続きの鹿島が徐々に足が止まり始めたことで、スペースが生まれ始める。52分に柏木のCKに岩波拓也が頭で合わせて同点とすると、続く60分、青木の鋭い縦パスを受けた武藤が、対応する小笠原満男を反転ターンで一気に置き去りに。「蹴ったときの感触はすごく良くて、行ったな」と本人が振り返る強烈な左足シュートがゴールに突き刺さった。
追う展開となった鹿島は鈴木優磨らを投入して前線の活性化を図ったものの、浦和も対抗してルーキー・柴戸海を森脇に代えて右ウイングバックに据え、長澤を下げて阿部勇樹も投入。守備時は5-4-1の布陣にシフトチェンジしてリードを守る態勢に入る。
さらに、85分には「相手にプレスを掛けるため」(オリヴェイラ監督)と、興梠を下げてアンドリュー・ナバウトを投入。これが奏功し、後半アディショナルタイムにはナバウトから武藤へとつなぎ、DFをごぼう抜きにする「美しいスペクタクルなゴール」(オリヴェイラ監督)を叩き込んだ。
■組織プレーの継続が、武藤の個を活かした
「対鹿島でいうと、耐えられて、あそこで簡単に一発やられて、そのままなかなかうまくいかずに上の位置で、ということが多かった」(青木)
なぜ、鹿島相手に後半3ゴールを挙げることができたのか。オリヴェイラ監督は、前半でトライしたことの継続を後半にも求めていたという。細かなパスワークを駆使する組織プレーの継続は、すなわち武藤の個を活かすものであったと話す。
「全体的に組織プレーができるようになってきた。今日も組織プレーがしっかりとできていたから、個人プレーも生きたのが武藤だった。私は組織プレーが強ければ、個人が活躍できると思っている」(オリヴェイラ監督)
©J.LEAGUE興梠のポストプレーから2列目の選手が追い越す分厚い攻撃など、ベースとなる組織プレーを続けた浦和。そのなかで、果敢な裏への抜け出しと、前への推進力を意識する武藤の90分を通した走りは重要な役割を担い、試合終盤では、個でも試合を決定づけるフィニッシャーとしてその存在感を確かなものにした。オリヴェイラ監督も武藤の成長を確かに感じ取っている。
「選手たちは、練習で伝えていることをしっかりと吸収して、それを体現するようになっている。武藤の場合も、私が来たばかりのころは、自信やフィジカルコンディションの部分で物足りなさを感じていた。せっかく運動量がある選手なのに、そこを発揮できていない状況だった。彼には、勇敢にプレーをすることを求めていたが、それができるようになってきたと思う」(オリヴェイラ監督)
“オリヴェイラ改革”により、アタッカーとしての真骨頂を見いだした武藤。本人もこれまでにない調子の良さを実感している。
「オリヴェイラ監督の下でしっかり練習を積んで、僕自身、今すごく体が動いているし、90分走り切れています。やっぱり練習の成果は出ていると思います」(武藤)
約2年ぶりの鹿島戦白星に、鳴り止まなかった「We are Reds!」コール。武藤の2発で来季ACL出場権にじりじりと迫り、3位・FC東京との勝ち点差はわずか1に肉薄している。
泣いても笑っても残りは4試合。3位へ入るために、一つひとつ着実に3ポイントを取るしかない。この一勝を無駄にしないためにも、レッズのさらなる奮起が期待される。
取材・文=大西勇輝(Goal編集部)
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