■前後半で激変した浦和の戦い
浦和レッズは15日に行われた明治安田生命J1リーグ第22節でジュビロ磐田と対戦。前半はスコアレスで折り返したが、後半にファブリシオのハットトリックなど4ゴールを奪い、3試合ぶりの白星を収めた。
浦和は累積警告で出場停止のマウリシオに代わって阿部勇樹を3バックの中央で起用する。さらに、右ウイングバックには、定位置をつかんでいた19歳の橋岡大樹ではなく、ベテランの森脇良太が先発。前線は興梠慎三を最前線に、2シャドーはファブリシオと武藤雄樹が入るおなじみの顔ぶれでスタートした。
対する磐田は、前節までの4バックではなく、浦和と同じ3バックを採用。高い位置を取る浦和のウイングバック対策のため、守備時は5バック気味になるなど、序盤からミラーゲームの様相を呈した。
前半、磐田のこの策が奏功する。「プラン通りの内容だった」と名波浩監督が振り返ったように、粘り強く守ったアウェイチームは、崩されかけたものの、何度かのピンチを切り抜け、狙い通りと言えるスコアレスで折り返した。
ハーフタイム、浦和のオズワルド・オリヴェイラ監督が動く。「相手のボランチにもっと強くプレッシャーをかけて自由を奪う」ことを選手たちに求め、結果、磐田へ傾いていた流れをグッと引き寄せることになる。
■守備での変化。最終ラインで光った阿部
正直どちらに転んでもおかしくないゲームだった。しかし、終わってみれば4-0と浦和の圧勝。ではなぜ浦和は試合の流れを劇的に変えられたのか?
先に述べたように、ハーフタイムにオズワルド・オリヴェイラ監督が施した修正は「中盤の枚数を増やす」こと。
そもそも磐田の狙いは、両ウイングバックの櫻内渚と小川大貴が背後へ抜け出して得点を奪うことだった。しかし、浦和は後半にその狙いの裏を突くべく、中盤でのルーズボールを徹底的に拾い、セカンドボールへの対応もよりスピーディーさを追求する。コンパクトな陣形を崩さず中盤を制すると、前半に起点となっていた磐田2シャドーの松浦拓弥と山田大記が危険なエリアで前を向く機会が激減。背後への抜け出しに至る芽を摘み取っていった。
「失点シーンもですが、セカンドボール、中盤でのルーズボールも含めて拾えなかったり、いい状態なのにファールを取られてしまったりと、なかなかマイボールにできなくなった」。名波監督は試合後この変化を認めている。
一方でオリヴェイラ監督はこう述べる。
「(2シャドーの)武藤かファブリシオが降りて、(ボランチの)青木(拓矢)や柏木(陽介)のところに加わる。攻撃を仕掛けているときは、阿部が上がって中盤のスペースを埋める。それを実行することによって、よりボールを持つことができたし、より押し込む場面が出てきたと思う。サイドにもボールをさばくことができ、そこが攻撃の起点になった」
ただし、中盤の枚数を増やしてより厚みを持たせても、全体をコンパクトに保てなければ意味がない。この試合は阿部が最終ラインの中央に入ったことで、緻密なラインコントロールが可能になり、全体が絶妙な距離感を保つことができた。
「阿部選手が真ん中に入ってラインを上げ下げすることで、興梠選手から最終ラインの選手まで約25mぐらいの中で良いラインとコンパクトな状況を作れた」。阿部の左に入り、ラインを形成していた槙野は振り返る。「中盤を押し上げることにより、セカンドボールを拾える状況を作り出すことができた。セカンドボールへの意識、守から攻への切り替えは非常に良かった」と収穫を口にした。

点を取らなければ勝てない。しかし、点をどんなに取っても守備が脆ければ勝てないのは同じ。オリヴェイラ監督は、『守』に始まり、『攻』に転ずるという共通意識を植え付けることを率先して行っている。
「チームづくりのベースとして、ディフェンスを組み立てていかないといけない。ディフェンスを作ることによって、それが相手の攻撃のフィルターになり、攻撃しにくい形ができる。それができれば、今度は攻撃に転じることができるようになる」
「私が選手に指示を出しているのは『攻撃を仕掛けているときこそ、守備の用意をしろ』ということ。一部の選手たちが攻撃を仕掛けていて、それ以外の選手たちはそれを眺めながら応援してしまってはいけない。選手たちはハードワークをしながら、それをしっかり実行してくれている」
『守』から『攻』への流れを大切にするオリヴェイラ監督。その哲学を理解し、ゲームにしっかり落とした阿部という存在。指揮官は「阿部は非常に珍しい宝石」と最大級の賛辞を送るほどであった。
浦和が5年半続けてきたミシャの可変式3-4-2-1は、特に攻撃面にフォーカスされる部分が多かった。オリヴェイラ監督はそこに守備の哲学を持ち込み、選手たちは実行した。
「良い守備ができれば、それが自信につながる」
夏場の厳しい連戦だからこそ、阿部のようなベテランが力を発揮したことは、チームにとって心強いこと以外の何物でもない。勝ち点2差で6チームがひしめく大混戦から抜け出し、逆転でのトップ3入りへ。チーム全員がオリヴェイラ哲学を実践しながら、上位への階段を一気に駆け上がっていく。
取材・文=大西勇輝(Goal編集部)
▶Jリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【DAZN関連記事】
● DAZN(ダゾーン)を使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)に登録・視聴する方法とは?加入・契約の仕方をまとめてみた
● DAZNの番組表は?サッカーの放送予定やスケジュールを紹介
● DAZNでJリーグの放送を視聴する5つのメリットとは?
● 野球、F1、バスケも楽しみたい!DAZN×他スポーツ視聴の“トリセツ”はこちら ※提携サイト:Sporting Newsへ

