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なぜ川崎Fは連覇できたのか?3つの理由から読み解く優勝の要因

川崎フロンターレがJ1連覇を達成した。優勝を決めた明治安田生命J1リーグ第32節のセレッソ大阪戦こそ、試合終了間際に失点して1-2で敗れたが、2位のサンフレッチェ広島もベガルタ仙台に敗れたため優勝が確定した。なぜ、川崎Fは連覇を成し遂げることができたのか。3つの理由から優勝の要因を読み解く。

■研ぎ澄まされた超攻撃的スタイル

就任2年目にして2季連続のリーグ優勝に導いた鬼木達監督は、連覇に至った要因を次のように話す。

「序盤は厳しいゲームもありましたけど、シーズンを通して選手たちが崩れることなく、自分たちのサッカーを信じ続けたこと。それが良かったと思います」

ひと言に『自分たちのサッカー』と言ってしまえば賛否両論あるが、川崎Fはまさにこれを突き詰めてきた。その軸は、パスワークを主体としたポゼッションサッカーにある。在籍10年目を迎えた登里享平に聞けば、追い求めるサッカーについて、こう表現してくれた。

「チームとしては相手陣内の半分に押し込んでサッカーすることを目指している。ボールを奪われても、すぐに相手陣内で取り返す。守備においては中央のリスク管理も必要ですけど、今季は相手コート半面でプレーする時間帯を増やそうとやってきた」

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初優勝した昨季以上に磨きがかかったのが、前線からの効果的なハイプレスである。1トップを務める小林悠は、攻撃はもちろんのこと、守備のスイッチャーとしても機能。小林が方向を限定することで、2列目の中村憲剛、阿部浩之、家長昭博が連動して相手を追い込んでいった。その守備のスイッチを38歳になった中村が入れることもあるのだから、否が応でも他は続かなければならないし、走らなければならない。

日々の練習によって“阿吽”の領域に達したパスワークでボールを支配すれば、ハイプレスによって高い位置でボールを奪取することもできる。これこそが、中盤の底だけでなく、DF陣までもが高いポジショニングを取り続けられた要因だろう。必然的に攻撃にかける人数は増し、川崎Fの超攻撃的サッカーは研ぎ澄まされていった。

実際、相手陣内でのボールポゼッション率はJ1の18チーム中でも特筆だった。第32節を終えて、53得点とリーグ2位の得点力が誇っているように、攻撃ばかりに目が行きがちだが、26失点はリーグ最少である。攻撃は最大の防御――。川崎Fは攻めることで、強固な守備をも手に入れた。CBとして堅守を支える谷口彰悟は、こんなことを言っていた。

「これはいつもオニさん(鬼木監督)が言っていることでもあるんですけど、うちの守備は一番前からはじまっている。みんなが連動して視野やコースを限定してくれることで、僕らがきっちり狙えているところがある。そういう意味ではみんなで守備をしていますし、その分、攻撃も一番後ろからはじまっているという気持ちでプレーしています」

■進化の一端を担った新戦力の融合

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また今季の川崎Fは優勝するチームに相応しく、既存の選手だけではなく、新戦力も次々と台頭した。その筆頭は守田英正であろう。開幕戦にも途中出場した大卒ルーキーは、早々にエドゥアルド・ネットからポジションを奪うと、9月には日本代表デビューも飾った。

守備に強さを見せる守田がどっしりと構えることで、大島がより攻撃に参加する機会が増え、先輩である大島が試合をコントロールしようとする成長も見られた。

台頭したのは、守田だけではない。2連敗で迎えた第14節の柏戦で決勝点をマークしたのは、今季加入した鈴木雄斗だった。さらに、中盤の底を担う大島や守田がケガで離脱したときには、下田北斗がきっちりとその穴を埋めた。撃ち合いとなった第30節の神戸戦では、遅ればせながら齋藤学が今季初ゴールを決めて結果を残した。

キャプテンの小林は、初優勝した昨季よりも今季のほうがよりチームの成長を実感していると話す。

「日頃の練習からみんなのプライドが見えた1年間でした。選手一人ひとりの成長という視点で見れば、昨季よりも今季のほうが大きい。試合に出ている出ていないにもかかわらず、みんながみんな、自分の成長に目を向けていた。キャプテンとしてはそれがすごく頼もしかったんですよね」

■ここ一番の勝負強さと試合巧者ぶりも健在

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第32節を終えて19勝6分7敗。決して平坦な道のりではなかったが、そこには勝負強さもあった。『優勝』を合言葉にまい進するなかで、チームはただ攻撃的だけでもなければ、鮮やかなだけでもない。試合巧者だった。

「試合の状況によっては、引き分けることもできるチームになったと言ったら、少し語弊があるかもしれないですけど、戦い方を変えられるチームになりました」

そう語る大島は、その最たる例として第29節の鹿島アントラーズ戦(0-0)を挙げた。

「引き分ければ、相手の優勝の可能性を食い止められる状況で、引き分けることができた。毎試合、勝ちに行こうとしていましたけど、流れの中でそれが難しいと思えば、ゼロで抑えようと切り替えられるチームになりました」

振り返れば、32試合中14試合が完封勝利である。先制した19試合では16勝2分1敗と無類の強さを誇った。昨季優勝したことで対策を練られ、守備的な戦いを挑まれる機会も多かった。だが、それでもボールを保持して攻め続ければ、いずれ相手の体力が消耗し、綻びが出ることを選手たちは知っていた。小林はブレずにやってきた結果と胸を張る。

「自分たちのスタイルに合わせて戦ってくるチームが多かった中で連覇できたのは、自分たちがブレずにやってきた結果だと思います」

中村は言う。「このサッカーに完成はない」と。自分たちのサッカーへの飽くなき追求が川崎Fに2つ目のタイトルをもたらした。そして、その探求はこれからも続いていく。

文=原田大輔

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