Liverpool vs Roma Champions LeagueGetty

なぜリヴァプールは復活したか?「実りある」シーズンを最高のフィナーレで…【CL決勝プレビュー】

ノルマだったプレミアリーグでのトップ4入りを、ほぼ危なげなく確保した。実は、リヴァプールが2年連続でCL出場権を獲得したのは2007-08、08-09シーズン以来のこと。この10年は見られなかった一貫性を、ようやく手にしつつある。そんな印象のシーズンだった。

チームを引っ張ったのは、彗星のごとく現れた新エースの決定力だ。リーグ戦32ゴール10アシスト。モハメド・サラーは、リヴァプールの選手ではルイス・スアレス以来となる“ダブル2桁”を達成した。そのスアレスの最高記録(13-14の31得点)を上回る32得点は、38試合制になってからのプレミア最多記録でもあった。リーグ得点王に加え、選手選考、記者選考、リーグ選出、ファン投票とあらゆる年間最優秀選手賞を総なめにしたエジプト代表FWの活躍は、まさにセンセーショナルだった。

ただ、サラーのワンマンチームだったわけではない。ユルゲン・クロップ監督は、ユニットとして機能する効率的な攻撃陣を作った。“偽9番”のロベルト・フィルミーノを影のキーマンとし、彼がふらふらと右へ左へ、はたまた中盤の低い位置にまで顔を出して相手DFを引きつけることで、サラーの快足をより引き立てた。「過去のどのチームよりもゴールに近い位置でプレーしている。練習でもゴールの近くに留まるよう求められている」とはサラーのコメントだが、クロップはフィルミーノのスペースメークを最大限に生かしてゴールを狙い続けるよう、彼に言い聞かせていたのだ。

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そして、対戦相手がサラーに気を取られればその分、周囲も生きる。同じく俊足で逆サイドから飛び出すサディオ・マネに、エネルギッシュなインサイドハーフの面々(エムレ・カン、アレックス・オックスレイド・チェンバレン、ジェイムズ・ミルナー、ジョルジニオ・ワイナルドゥム)。さらに普段は“黒子”のフィルミーノもゴール前になだれこみ、ゴールネットを揺らすのだ。彼らによる怒涛のカウンターは、ペップ・シティをも圧倒する破壊力を見せた。

■コウチーニョ放出の英断

機能的なユニットを作る過程には、クロップの“英断”もあった。それがフィリペ・コウチーニョの放出だ。持ち前の発想力と技術、一撃必殺のミドルシュートによって独力で試合を決めることも多々あったコウチーニョが、彼は天才ゆえに良くも悪くもチームの異物だった。ゲーゲンプレス+高速アタックというクロップ流の最大化を目指すなら、ウイングは走力と献身性に秀でたマネとサラーで、4-3-3のインサイドハーフにもハードワーカーを置く方が適していた。もちろんバルセロナの巨額オファーがあってこそだったが、この機を利用してコウチーニョという個に頼らない方法に舵を切ったクロップの“割り切り”は見事に吉と出た。

加えて、10番の流出を受け入れる代わりに、その売却益によって実質“タダ”でビルヒル・ファン・ダイクを獲得したのも抜け目なかった。彼の加入で最終ラインは明らかに安定感を増した。事実、1月に彼がデビューして以降に限れば、16試合13失点はリーグで2番目という堅守だった。

■ジダンが奇策を用いれば劣勢に?

とはいえ、である。26日にキエフで戦うチャンピオンズリーグ決勝の相手、レアル・マドリーにはクリスティアーノ・ロナウドがいる。トーナメントで無類の勝負強さを発揮するこの男を相手にすれば、いくら安定を手にした守備陣でも、無傷では済まないだろう。

やられたら、やり返す。その意味で、やはりリヴァプールが持つ最大の武器、すなわち黄金の3トップが決勝でも勝負のカギになりそうだ。今季のCLでレッズは大会最多の40ゴールを挙げているが、うち31ゴールがサラー(11)、フィルミーノ(11)、マネ(9)によって生み出されている。彼らが通常運転のパフォーマンスを発揮できれば、3連覇を狙う絶対王者レアル・マドリーが相手でも必ず勝機はある。

ただし、レアル・マドリーが引いて守り、リヴァプールにスペースを与えない戦い方を選択したならば、3トップはあっさりと無効化されてしまう恐れがある。リヴァプールはポゼッションやハイプレス主体のチームには相性がいいが、自陣に引きこもって待ち構える相手は不得手としている。ペップのシティには滅法強いが、ジョゼ・モウリーニョのユナイテッドにはなぜか勝てないのがいい例だ。

真っ向勝負の撃ち合いなら望むところだが、決勝慣れしているレアルは“モウリーニョ流”、つまりリヴァプールの持ち味を消すことに注力してくる可能性がある。敵将ジネディーヌ・ジダンは、しばしば大一番でなりふり構わず勝利を目指し、奇策を打てる指揮官だ。たとえば、15-16シーズンのCL決勝でアトレティコ・マドリーのお株を奪うようなブロック守備を披露した采配がそうだった。

いずれにせよ、もし仮にキエフでの決戦に敗れたとしても、クロップ政権の3年目は実りあるシーズンだったと言っていい。しかし、「イスタンブールの奇跡」以来となる欧州制覇で1年を締めくくることができれば、それはクラブ史に残る偉大なシーズンとなる。

ドルトムント時代にCL決勝でバイエルンに屈し、アンフィールドでの1年目にも EL決勝でセビージャに敗れたクロップにとっても、ヨーロッパのトロフィーは喉から手が出るほど欲しいはず。「二度あることは三度ある」のか、それとも「三度目の正直」か。クロップと仲間たちは、白い巨人を真っ赤な炎で焼き尽くすことができるだろうか。

文=大谷 駿

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