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かつて“ズラタン”よりビッグだった男。しかし待っていたのは悲しい最後「彼からの返事はなくなった」

19:40 JST 2019/01/02
Tony Flygare Zlatan Ibrahimovic
若き日々、ズラタン・イブラヒモヴィッチとトニー・フリガレは親友同士で、とにかく何をするにも一緒だった。だが、今やイブラヒモヴィッチは世界的なスターになり、一方のフリガレは飛躍を果たすことなく終わってしまった。

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30万の人口を抱えるスウェーデン第3の都市マルメの桟橋では、絵に描いたように静かに凪いだバルト海が陽射しに輝き、水浴を楽しむいくつかの人影の足元で、浜辺の白い砂がきしむように鳴っている。空気は温かく、辺りにはリラックスした雰囲気が漂い、日曜の朝にやっている海外ドラマから切り取ってきたような光景だ。

港湾都市マルメの片隅のこの牧歌的な状景は、2人のティーンエージャーの登場によって突如かき乱される。彼らはボールを持って桟橋をうろつき回り、助走をつけてはボールと一緒に宙を飛び、できるだけアクロバティックなキックでボールを水中に叩きこもうとする。それは当然一度では終わらず、2人は何度も繰り返す。互いに煽り合い、大声で喚いたり笑ったりし、どんどんエスカレートする曲芸じみた荒技によって浜辺にいる女の子たちの気を引こうとしているのだ。そして、この乱暴な少年たち2人は、何度も少女たちの感嘆の声を引き出している。

■「いつもズラタンの上を行っていた」

そんな屈託のない日々を送っていた2人の少年のうち、一方は今では世界的なスターになって、この20年間で最も優れたフットボーラーの一人に数えられている。だが、同じように才能に恵まれていたもう一人はプロの世界で足場を築くに至らず、33歳という年齢を迎えてから再び母のもとに身を寄せるようになった。ズラタン・イブラヒモヴィッチとトニー・フリガレの場合、そのキャリアはほとんどありえないほどかけ離れた形で展開することになったのである

長い間、フリガレとイブラヒモヴィッチは切っても切れない絆で結ばれていた。温かなバルト海の桟橋で2人が何度も共に過ごした夕暮れ時の時間、フリガレはその思い出をイギリス紙『デイリー・メール』に次のように語っている。

「水の中へ落ちれば痛くなかったから、僕たちはあそこで何時間も練習したんだよ。かわいい女の子たちが見ていたせいで、僕たちはどんどん思い切ったことをやるようになった。2人でスコアを張り合ってたんだけど、確かに言えるのは、いつも僕の方がズラタンの上を行ってたってことだ」

フリガレと “ズィッゲ“ ――フリガレはズラタンのことをこう呼ぶ――は、6歳の頃からずっと非常に親密な間柄だった。彼らはともにマルメ郊外のローゼンゴードで育ったが、そこは魅力に富むとは言い難い、数々の問題を抱えた地区だった。2人はいつも一緒に過ごし、BMX(競技用自転車)で街路を乗り回して盛り上がったり、バカなことをやったりしていたが、何と言っても2人の頭を占めていたのは同じひとつのこと、フットボールだった。ブラジルのスター選手ロマーリオやベベットのビデオを一緒に何時間も研究して、彼らの素晴らしい技を自分のものにしようとした。

最高のフットボールをやっているのはどのリーグか、2人で熱くなって議論もした。フリガレはプレミアリーグの、中でもニューカッスルのファンだった。これに対して、後にマンチェスター・ユナイテッドでプレーすることになるイブラヒモヴィッチの方は、イングランドのフットボールに魅力を感じていなかったという。

「ズラタンは常にイタリアを目指していた。そして結局、実際にやってのけたんだ」

昔の仲間フリガレはそう証言する。

■「2人は双子のようだった」

当時の2人の関係を訊かれたフリガレは「僕らは双子のようだった」としつつ、意外な真実を明かす。

「けれどある意味では、僕はズラタンにとって父親のような存在だったね。彼は僕を尊敬の目で見ていたんだ。それでも、彼はものすごく野心を燃やしていたよ。女の子のことでもフットボールでもゲームでも、どんなことについても僕を負かしたいと思っていたんだ。時には喧嘩になってしまうこともあった。僕は彼の前に山のように立ちはだがっていて、彼は僕を乗り越えたいと思っていたんだよ」

当時の2人は自由時間だけでなく、クラブでも多くの時間を一緒に過ごしていた。マルメFFのユースチームでともにトップを張り、大量の得点を挙げて2人そろって並外れた才能としての評判を勝ち得ていた。

しかし、フリガレはプロでこの評判通りの働きを見せることはできなかった。キャリアの挫折は、彼が成人に達しないうちに訪れた。1999年、誇り高きマルメFFはアルスヴェンスカン(スウェーデンのトップリーグ)から陥落する危機にあった。残留を懸けたハルムスタッズBK戦の終了数分前にマルメFFにPKが与えられると、当時まだ17歳のフリガレが、経験の乏しい若者だったにもかかわらず大役を買って出る。――そして、失敗した。現在アルスヴェンスカンで最多優勝を誇るマルメFFだが、この時クラブ史上初めて2部リーグへの降格を甘受しなければならなかった。

後に、イブラヒモヴィッチは自伝『俺はズラタン』の中で次のように書いている。

「あいつは調子に乗りすぎたのさ。トニーは冷蔵庫に入って、そのままお蔵入りになってしまった。あの瞬間、俺は奴を追い越したんだ。トニーは二度とトップレベルに戻って来れなかったんだから」

■イブラヒモヴィッチはアヤックス、フリガレは3部へ

自信に満ちて何でも楽々とこなしていたフリガレが、まさに冷蔵庫に入れられたように、PKの失敗によってキャリアは停滞。まだユースでは敵を破ることができたものの、年長の選手と1対1で相対すると苦戦した。フリガレの成長は止まり、マルメのトップチームでの出場は7試合のみとなった。

その後も、2人は2年間マルメFFに在籍していた。そしてイブラヒモヴィッチはアヤックス・アムステルダムへ移籍したが、そこで世界的なプレーヤーへと飛躍する彼のキャリアに拍車がかかった。一方のフリガレは、スウェーデン3部のIFKルーレオへ移っていった。

仲間だったズラタンとのコンタクトも途絶えた。フリガレは何度もクラブを変え、2002年にドイツのSVヴェーエン・ヴィースバーデンに加入したが、南部レギオナルリーガ(当時は3部リーグ)で3度、後半の終盤に投入されただけにとどまった。その後、さらにマケドニアのツェメンタルニツァ・スコプイェへ移ったものの、ここでも目立った実績は残せず。フリガレの才能は跡形もなく消え去り、自信も失せ、今ではピッチの上での意気込みも並の選手のそれとなってしまったのだ。

かつてはズラタンと2人で愚にもつかないことを思いついては浮かれていたアドレナリン・ジャンキーのフリガレだが、当時は満たされない思いを埋めてくれるものを探していた。

「アルコールだけじゃない、マリファナやコカインのようなドラッグ、それにギャンブルもやったよ。とにかく何でもやってみたんだ。けれど、ゴールを決めた時の感覚を埋め合わせてくれるようなものはなかった」

■連絡を断ったイブラヒモヴィッチ

スウェーデンのアマチュアクラブBW 90 IF に所属した後、2008年に、フリガレはキャリアに終止符を打った。この時点でイブラヒモヴィッチはすでに6回リーグ優勝を経験し、3度スウェーデンの年間最優秀選手に選ばれていた。2人のキャリアが対照的な経過をたどったことで、2人の関係もまた変わってしまった。変わったと言うよりむしろ、存在せず消え去った。アヤックスへ移ってからのイブラヒモヴィッチはコンタクトを絶ってしまったからだ。

フリガレは当時の記憶をたどって語る。

「ドイツでプレーしていた頃ズラタンに連絡したら、『どのトニーだ?』という返事が返ってきたんだ。僕は言ったよ、『おいおい、よせよ、ズラタン。僕がどのトニーだかわかってるだろ』ってね。そして、僕だってことがわかるように、2人だけに通じるジョークを送ってやったんだ。だが、それ以上彼からは何の返事もなかったよ」

以前の友人に思いを馳せつつ、フリガレは次のように言い添えた。

「いいとも、今の君には自分の生活というものがある。僕はそれを尊重するし、君のことを誇りに思っている。もし今君に会ったら、僕は言うだろう。『来いよ、古なじみ』ってね。実際、僕はそう思っているんだから。だけど、少なくとも僕をリスペクトする気持ちを失わないでほしい。僕の誇りを奪わないでほしいんだ」

イブラヒモヴィッチと同じように、フリガレもまた自伝を著した。そこでは、ズラタンとともに過ごした子供時代のことに多くのページが割かれている。それは当然のことだろう。フリガレはこの自伝に「かつて僕はズラタンよりビッグだった」というタイトルをつけた。この本では、フリガレがフットボールの世界で味わった挫折についてはほんのわずかしか触れられていない。

現在36歳になるフリガレだが、ほかにもいくつかの事柄については書かずに済ませたのだと語っている。

「僕はこの本をまったく違った内容のものにすることもできただろう。けれど僕は、ズラタンのこと、僕らが2人で共有したもののこと、その2つを大切にしたいと思ったんだ」

ひとりの特別なフットボーラーに対する特別な友情の思い出、今のフリガレに残っているのはそれだけだ。フリガレはいつもその思い出を温めている。イブラヒモヴィッチがまたもや目を奪うようなゴールを決め、昔もこんなことをやっていたっけ、とぼんやり記憶が甦るたびに。そう、かつてはズラタンもマルメの桟橋で、仲間のトニーと同じように、女の子たちを感心させようと骨折っていたのである。

文=ファルコ・ブレーディング/Falko Blöding

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