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あれから8年…“死のグループ”を経験した鄭大世が語るW杯で流した涙のワケ

■ずっとこのきらびやかな時間が続けば

現地時間14日にロシア・ワールドカップが開幕した。4年に1度の祭典。サッカー選手である以上、目指すべき頂点がこの舞台であることは間違いない。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にとって44年ぶり2度目の出場となった2010年南アフリカ大会。代表メンバーとして、ピッチに立ったFW鄭大世が当時の逸話を語ってくれた。

当時川崎フロンターレに所属していた鄭大世は、安英学(元大宮アルディージャ)、梁勇基(ベガルタ仙台)といったJリーガーとともに世界の舞台に臨んだ。北朝鮮代表は、ブラジル、ポルトガル、コートジボワールと同居する激戦必至の“死のグループ”に属することになった。

「死のグループと呼ばれる組に入ったから、最初はうれしかったですね。だってそういうチームとなかなかできないじゃないですか」

どんな相手でも物怖じしない姿勢。鄭大世らしさが垣間見えた瞬間だった。

「実際ワールドカップに行ってみて、他のグループだったら(突破は)行けるんじゃないかって思いました」

満を持して迎えたブラジルとの初戦。2点を先行されながらも、終盤に鄭大世のアシストから1点を奪取。最後の最後までブラジルを追い詰める激闘を演じた。そんな中でやはり取り上げるべきは、試合前に涙を流した鄭大世についてだろう。本人は涙を堪えきれなかった理由が2つあったと語る。

「ブラジル戦は1秒でも長くこのピッチに立っていたいと思っていました。試合前、横でブラジル代表がウォーミングアップをしている姿を見ただけで涙が出たし、国歌を聞いた時にも涙が出ました。ブラジルの国歌を聞いても、テレビで見て聞いていたものだったので感動しましたね。ずっと、このきらびやかな時間が続けばいいなって」

■欧州の強豪に叩きのめされる

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ブラジル戦で確かな自信を手にした北朝鮮だったが、続くポルトガル戦ではショッキングなシーンが待ち受けていた。前半は1点ビハインドで折り返す善戦を演じたが、後半に入ると立て続けに6失点。戦意喪失に陥るまでにヨーロッパの強敵に打ちのめされてしまった。

「ポルトガル戦では1秒でも早く試合が終わってほしいと思いました。試合中に『もういいだろう。10分早く終わって!』って(笑)」

そう思うのも無理はない。南アフリカ大会最多失点を喫し、1試合を残して無念のグループリーグ敗退。想像以上に世界との差を感じた瞬間だった。

最終戦の相手はコートジボワール。3戦連続で先発出場を果たした鄭大世は、憧れのディディエ・ドログバと同じピッチに立った。

「ドログバに憧れていた時期があって、その頃自分はJリーグでは体が強いと言われていましたが、ドログバを見た瞬間に『俺が目指すところはここじゃない』と感じました。背負っていても、ディフェンスがいないようなターンをするし、それくらい圧倒的でした」
大会前に右腕を骨折し、本調子ではなかったドログバであっても、その凄さがはっきりと見て取れた。

終わってみれば3戦全敗。しかし、そこで得られた経験は計り知れない。この悔しい思いもあって、鄭大世は大会後にドイツに移籍を決意する。その後、韓国Kリーグで経験を重ね、2015年にJリーグへ復帰した。

「4年に一度のワールドカップですが、ワールドカップが来るたびに、もうそんなに時間が経ったのかと寂しくなります。あれから8年か…って。自分の記憶が色あせていくのは怖いなと思います」

その後のサッカー人生を変えるきっかけの一つとなったW杯での経験。自身の記憶が色あせていったとしても、国の威信を懸けて戦ったその勇姿は、ファン・サポーターの心に残り続けることだろう。

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