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浦和が見せた3ボランチの可能性。柏木陽介復帰で見えたACLへの道すじ

■圧倒的な存在感を放った背番号10

浦和レッズは23日の明治安田生命J1リーグ第27節でヴィッセル神戸を4-0で粉砕。55,689 人を集めた満員の埼玉スタジアム2002で圧巻のゴールショーを披露した。戦前の注目はやはり、神戸のアンドレス・イニエスタであったが、ケガの影響でベンチ入りせず。“メイン不在”のなかで、主役に躍り出たのは約3週間ぶりに先発復帰を果たした浦和の柏木陽介だった。

試合前々日、雨の中でスタートしたトレーニングに柏木の姿があった。左内転筋の張りにより、前節・横浜F・マリノス戦は出場を回避。その後神戸戦への出場を目指して調整を続けてきた。神戸戦で復帰したい――。その思いはトレーニングに臨む目つきから明らかだった。「世界で唯一、ユニフォームを交換したい選手」と、イニエスタとの対戦を待ちわびていたことも10番を奮わせた。結局、イニエスタはベンチ入りしなかったが、柏木は1日の第25節・セレッソ大阪戦以来の先発出場となった。

この試合、浦和は従来の3-4-2-1ではなく、3-3-2-2の形を採用する。青木拓矢を1ボランチに置き、柏木と長澤和輝をインサイドハーフに配置。守備時には3ボランチ気味になる形を取った。

浦和は序盤から神戸にボールを保持される。神戸はスペイン人のファン・マヌエル・リージョ氏を新監督に迎えて以降初のリーグ戦であり、より「攻撃的ポゼッションサッカー」を目標に掲げて埼スタでの戦いに臨んでいた。リージョ氏の就労環境が整うまでは、林健太郎アシスタントコーチが暫定的に指揮。そうしたことこともあり、浦和にとって神戸にボールを握られる展開は、ある程度予想の範囲内だった。

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一方でこの日の浦和は中盤の3枚がしっかりつないで組み立てていく形をとる。その中で柏木は、クサビに入りワンタッチでさばいて速攻への流れを作ったり、味方選手をうまく使って自らが決定的なパスを出せる位置にフリーで受けたりを繰り返した。

23分に決まった青木拓矢の先制ミドルも柏木が起点だった。柏木が左サイドでボールを持ち、中へクロスを供給。相手にクリアされたが、長澤がセカンドボールを奪って、走り込んでいた青木が右足一閃。さらに36分、柏木はスピードあるドリブルでPA左に持ち込むとクロスを送る。DFに跳ね返されたが、そのこぼれ球を再び拾い、深い切り返しで相手をかわして左足シュート。これはDFのブロックに遭ったものの、独特の間合いで相手を翻弄した。

すると42分、10番が魅せる。敵陣中央でボールを受けた柏木は、DFの背後に走り抜ける興梠へロングパス。これを興梠が決めて追加点を手にした。長短、タイミングすべてが完璧だったパス。本人も「今年一番のアシストだった」と自画自賛しながら、「あれを決められるのは慎三だけ。慎三の能力を信じて出したし、信頼関係があったのが大きい。最高のアシストと、最高のゴールになった」と喜んだ。決めた興梠も「陽介じゃないとああいうパスは出せない。陽介だからこそ、ああいう動き出しを自分もするし、出てくるのを信じて僕は走っただけ」と、息の合う連係を見せた。

さらに浦和は後半序盤にも相手のミスを逃さなかった武藤が2試合連続ゴールをマークすると、76分には柏木のクロスに長澤が強烈ヘッドを決めて勝負あり。コンディションは決して万全な状態ではなかったものの、復帰戦で2アシストと柏木はこれ以上ない存在感を披露した。

■垣間見えた3ボランチの可能性

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柏木を先発させ、3ボランチを形成した狙いについてオズワルド・オリヴェイラ監督は「守備を安定させるため」と説明する。前節・横浜FM戦では、青木と長澤のダブルボランチだったが、相手に圧倒的なポゼッションを許し、セカンドボールも思うように拾えなかった。

スタイルこそ違うものの、同じくポゼッションサッカーを推し進める神戸に対して浦和は中盤を1枚増やしてフリースペースを与えずタイトな守備を遂行。3ボランチが流動的にポジションを変えて、神戸の背後への抜け出しや縦パスを警戒することで、神戸を機能不全にし、ほぼビッグチャンスを与えることはなかった。

「守備のところで自分がコントロールできるところはした」と柏木。チームメートも攻守に3ボランチの手応えを口にする。

「3人でスライドしてポジションを代わることもありました。相手が進入したところでファーストDFを決めていた。互いのプレーも分かっているのでやりやすかった」(長澤)

「長澤選手、柏木選手、青木選手、攻撃だけじゃなくて、守備のところでもハードワークをしてくれた。何よりも相手が一番守っていて嫌なところにポジションを取ってくれていた」(槙野)

神戸に「(ボールを)持たせていても怖くないという気持ちでプレーした」と、柏木が語るように、「持たれる」というより「持たせる」狙いがあった。結果的に神戸は効果的な縦パスを供給できず、痺れを切らしたポドルスキが下がってプレーすることになり、怖さは半減した。

まさに狙い通りの展開。神戸の林暫定監督も、浦和のタイトな守備に手こずったことを認めている。

「良いポジションにいるルーカス(ポドルスキ)のところにボールを入れる、中盤で人数をかけて優位に立ちたい狙いがあった。ただ、ボールを運んでうまく相手を引き出してボールを空いているところに付けていくという作業が少し足りなかった。浦和がしっかり人に付いてくるディフェンスをしていた」(林暫定監督)

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ここに来て新たなオプションがハマったことは、終盤戦に向けて好材料だろう。残り7試合、ACL出場圏まで勝ち点差は5。勝ち続ければ3位滑り込みも夢ではない。

「チームとしてどう戦うか、一人ひとりが考えて戦えている。それが良い結果になった。これで3位まで見えてきた。上を見て戦っていきたい」

柏木はそう言って兜の緒を締めた。頼れる10番の帰還は、ACL圏浮上を目指す浦和をさらに加速させる。

取材・文=大西勇輝(Goal編集部)

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