ユーロ快進撃を知るFWが見るロシア…古巣トッテナムでは「素晴らしい日々だった」【W杯開幕直前連載】

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開幕まで残りわずかとなったロシア・ワールドカップ。『Goal』では、ついに開幕する祭典までロシアのレジェンドに話を聞き、全8弾の独占インタビューをお届けする。第3弾はロマン・パヴリュチェンコ。

4年に一度の祭典が、間もなくやってくる。

『Goal』はFIFAワールドカップの開幕を前に、開催国ロシアのレジェンドたちにインタビューを行った。全世界の目がロシアに集まる特別な1カ月。レジェンドたちの現在や、ワールドカップに抱く期待、願い、思いとは?

「スペシャルウィーク・ロシア」の第3弾はロマン・パヴリュチェンコ。ロシア国内だけでなく、トッテナムでも活躍し、国際的な成功を収めた数少ないストライカーだ。代表レベルでもユーロ2008では、主力としてベスト4進出に貢献。大会で3ゴールを挙げ、優秀選手にも選出された。いまだ現役を続けるパヴリュチェンコは現在のロシア代表についてどのような思いを抱えているのか、胸中を明かしてくれた。

■キャリアの現在と過去…

Roman Pavlyuchenko Lokomotiv

――ご無沙汰しています。アララト・モスクワを去ってからどうお過ごしですか?

フットボール界からは少し離れて過ごしている。いくつかオファーも受け取ったけど、合わないと思い全て断った。今は指導者になるために勉強をしているけど、現役を引退したわけではないよ。最低でもあと1年はプレーしたいね。

――またトップレベルであなたを見れるということでしょうか? 例えば、ロシア・プレミアリーグで。

もし正式にオファーがあれば、それもあり得る。そのときがキャリアの終わりになるだろうね。

――インドネシアのクラブからオファーが来てたというのは本当でしょうか? そこでプレーする可能性は今もありますか?

本当だよ。どのクラブかは憶えていないけど、インドネシア、そしてタイのクラブからオファーがあった。しかし遠すぎるという理由で断ったんだ。あそこでプレーするということは妻と子供たちも一緒に連れていかなければならず、それは彼女たちにとって大きな問題だった。だからオファーに断りを入れたんだ。

――あなたとともにプレーした元スパルタク・モスクワの選手の多くは指導者になっています。この流れについてあなたの見解を教えてください。

恐らく、多くの選手が現役を引退してもフットボールに関わっていたいからだろう。時間があるなら、自分の進みたい道に進まない手はない。5年後、10年後何が起こるかわかる人はいない。だからこそ、僕にも時間があるならプロの指導者を目指したいと思っている。

■ユーロ2008は「記憶に残る快進撃だった」

Russia 2008

――ユーロ2008はロシア代表が最も輝かしい成績を収めた大会であり、あなたはそのときの中心メンバーでした。このときがキャリアの中で一番の瞬間でしたか?

他にも良い思い出はあるけど、2008年が僕にとってもロシアにとっても特別だったのは間違いない。準決勝まで行ったんだからね! 本当に記憶に残る快進撃だった。選手にとってもファンにとってもあの忘れられない熱狂は、思い出としてずっと残っているよ。

――近年、ロシア代表が国際舞台で輝けない理由は何でしょうか?

2010年はW杯の出場権を逃したが、プレーオフまで僕たちは諦めずに戦った。ただ、その試合でスロベニアに負け、世界から取り残されてしまったんだ。その後、フース・ヒディンク氏が退任してから歯車が狂い始めた。2008年以降、ロシアは世界の舞台から遠ざかっているけど、今年は私たちがW杯を開催する年だ。これを機に、また国としての威厳を取り戻し、正しい道を歩めれば良いね。

――ユーロでは本大会に出て活躍しましたが、W杯出場の経験はないですよね。それについて後悔はありますか? 例えばスロベニア戦の敗退は今も心残りでしょうか?

もう昔のことだし、ほとんど忘れかけている。しかし、当時の敗北の衝撃は本当に計り知れなかった。選手、スタッフ、ファンの悲しみが目に見えてわかり、ロシアサッカー界はどん底に追いやられたんだ。痛ましい記憶ですが今は今、過去は過去だよ。

■「W杯は何が起こるかわからない。全ての可能性がある」

Russia team

――今のロシア代表についてコメントをお願いします。

W杯では何が起こるかわからない。チームとして良い準備ができていることを願うばかりだよ。しかし、彼らなら問題ないと思っているし、やってくれると信じている。ホームで戦う以上、チームが団結することが大切だ。さらに、スタジアムを埋め尽くすファンが代表チームとともにいるんだ、何があっても大丈夫だよ。

――2008年のようにロシア代表はまた旋風を起こせると思いますか? それとも以前ほどのレベルにはやはりないのでしょうか?

全ては起こり得ること、僕から言えるのはそれだけだよ。もちろんユーロのように準決勝まで行くこともあり得るけど、決勝はどのチームにとっても長い道のりだ。ただ、何が起こるかわからないからこそ自分たちを見つめ直し、次に備えることが重要になる。だから、最初の関門はベスト16に行くこと。かなわなければ、失敗とも言える。ホームでW杯を戦うからこそ国全体も、ファンも期待を膨らませているし、それに応えなければならない。

――現在の指揮官、スタニスラフ・チェルチェソフはロシア代表を率いるに最適な人物でしょうか? あなたはスパルタクで彼の指導の下、成長したからこそ詳しく知っていると思うのですが。

今のロシアはイングランドやスペイン、イタリアほど人材に溢れていない。しかしコーチ陣はよく観察しているからこそ誰がチームに最適な選手かわかっているはずだ。チェルチェソフはその中で最高のメンバーを選んだと思う。もし他に良い選手がいれば、呼ぶことも可能だっただろうけど、彼は最高の結果を手にするための最高の人選をしたと思うよ。

Aleksandr Golovin Russia

――今大会でロシアの中心となる選手は誰でしょうか?

恐らくCSKAモスクワの若きスター、アレクサンドル・ゴロビンだろう。得点感覚があり違いを作れる希少な選手だ。ロコモティフ・モスクワのアレクセイ・ミランチュクも期待できる若き才能だね。それにまだまだ可能性を秘めた選手も多くいる。

――以前のようにロシア代表はFW不足に思えますが、その点はどうでしょうか?

フョードル・スモロフはゴールへの嗅覚があり、親善試合でも証明している。それより、何より大事なことはチャンスを多く作り上げることだ。それができれば、前線にはチャンスをものにするFW陣がいて、アルテム・ジューバもそのうちの一人だ。彼は近年多くのゴールを挙げていますし、彼を含め素晴らしいフィニッシャーたちがいる。心配することなど何もないよ。

■ロシア全体のサッカー環境は…

――20年近くに及ぶロシアでのキャリアがあるからこそ気づくこともあると思います。フットボールを取り巻く環境はどう変わっていきましたか?

もちろん進歩している部分もあって、毎年フットボールは進化している。何よりW杯を迎えるだけの準備もできているし、歴史上最高のW杯になると信じている。大会のためのスタジアムを7つ新しく建設したことに加え、あらゆるものをW杯のために整備してきた。ソチ・オリンピックでの成功を再現できると思う。

――国内の育成システムはどうでしょうか? ヨーロッパの列強たちと渡り合えるようになるでしょうか?

イングランドやスペインなどの強国のものとはまだ比べられない。ロシアでは近年になってやっと育成に力を入れ始め、フットボールというものに熱が入った。ただ、ユース世代は以前まで優先事項ではなかった。イングランドを例にとって見ると、彼らは何年もユース世代の育成に力を入れていたよね。この点、ロシアではまだ始まったばかりで、そのギャップこそが私たちと他の強国の差になっている。しかし、ロシアのフットボールも進歩しているし、あと数年経てばチャンピオンズリーグ決勝にロシアのクラブがみられるはずだよ。

■古巣トッテナムでの日々と近年の躍進には

Roman Pavlyuchenko Tottenham

――トッテナム・ホットスパーについて話しましょう。今でも動向をチェックしてますか?

もちろんだ。かつてともに戦った選手も所属しているし、今も現況が気になって試合を見ている。チームとファンを愛しているし、あそこで過ごした3年半は特別だった。これからも動向はチェックすると思うよ。

――スパーズでの日々はどうでしたか?

とても素晴らしい日々だった。選手、スタッフ、ファン、そしてクラブとしてまとまり合い、素晴らしい雰囲気の中で生きていた。スパーズにいたときは何をやってもうまくいくような気がしたし、特にチャンピオンズリーグではベスト8まで駒を進め、プレミアリーグでも上位を常に争っていたね。忘れられない日々だよ。

――今のトッテナムについてはどうですか? あなたがいた頃と比べてさらにレベルアップしていますか?

トッテナムは常に魅力的なチームであり、攻撃的で熱い試合を展開するチームだ。選手が出て行ったり加入したりしても、スタイルは変わらない。トッテナムが僕に興味を抱いていると聞いたとき、とても嬉しくて、「ここのスタイルは必ず僕に合う」と思った。今もそのスタイルは引き継がれ、変わっていない。さらに今では優勝争いまで食い込むようになり、間違いなくビッグクラブの一つだよ。

――トッテナムでは「語学の壁」に苦しめられていたと思います。あまり英語の上達に熱心ではなかったとお聞きしたのですが、本当ですか?

そんなことはないよ(笑)。ちゃんと授業も受けていたけど、半年で言語を習得するなんて現実的ではなかっただけだ。移籍初年度は大変だろうとわかっていたから通訳を雇っていたけど、それは普通のことだろう。そして1年経って、ようやくコミュニケーションが取れるようになった。ただ、最初の1年は本当に大変だったね。

――かつて多くのロシア人プレーヤーがイングランドで活躍していました。それについてどう思いますか?

それだけユーロ2008での快進撃がイングランドにとって衝撃的だったんだろうね。僕、(アンドレイ)アルシャビン、(ユーリ)ジルコフ、(ディニャル)ビリャレトディノフ…。たくさんいたね。

――どうしてトッテナムではロシア時代の輝きを放てなかったんでしょうか?

あまり詳しくは話せないけど、僕個人の見解ではとても充実した日々だったよ。多くのゲームでたくさんゴールを記録したのは今も記憶に残っている。ただ、(エマニュエル)アデバヨール、(ラファエル)ファン・デル・ファールト、(ピーター)クラウチや(ジャーメイン)デフォーなどたくさんの競争相手がいて熾烈を極めていた。でも、彼らがいるにも関わらず、僕はゴールを重ねていた。トッテナムで40ゴール以上挙げたんだからね。FWとしてはとても満足しているよ。

――イングランドでは、何が一番印象的でしたか?

出場した試合全てだね。今も鮮明に残っている。あのスタジアム、会場の熱気…、例え敗北したとしてもファンは前を向いていた。それは本当に後押しとなった。毎試合毎試合本当に新鮮で楽しんでできた。それに、毎試合僕のために歌ってくれるファンに心打たれたよ。

――当時の監督だったハリー・レドナップとの関係はどうでしたか?

とても良い関係だった。プロ意識が高く、衝突することもなかったね。そして誰もが彼の指示に耳を傾けていた。良い思い出しかないよ。

――とても厳しく、頑固な指導者と伺ったのですが…

まさか(笑)。確かに負けた試合や情けない試合をした後は、ドレッシングルームに入ってきて怒鳴ったりもあったけどね。普段はジョークと笑顔が絶えない穏やかな人柄だよ。監督によってチームの空気が変わるとかそんな殺伐とはしていなかったし、とても良好な関係だったよ。

Harry Kane Tottenham Hotspur 09052018

――少しの間一緒にプレーしたハリー・ケインについてお聞かせください。彼はヨーロッパ最高のストライカーだと思いますか?

彼が若手の頃、一緒にプレーしていた。ともにトレーニングをし、ヨーロッパリーグの舞台にも出たね。そのときに彼はトップチームデビューをだったはずだ。しかし今や彼は恐ろしいストライカーへと変貌し、多くのクラブの注目の的になっている。ただただ「よくやった」と言うほかないよね。彼ほど優雅にプレーする選手は見当たらないし、今となってはトッテナムのシンボルだよ。

――成長するためにスパーズを離れたほうが彼にとっても良いと思いますか?

もしバルセロナやレアル・マドリードのようなチームが彼を欲しがったら、「NO」とは言えないだろう。ただリーガやセリエで“上位”を争っている程度のチームでは意味はないと思う。ただ、移籍したいという気持ちがあればそれに嘘をつくべきではない。レアルやバルサのようなビッグクラブに行きたいというのは当然だけど、トッテナムもビッグクラブの一つだ。しかしチャンピオンズリーグ決勝で戦ったことはない。さらなる高みに行きたいというのであれば、真のビッグクラブに活躍の場を移すべきだろうね。

インタビュー・文=ナイーム・ベネドラ/Naim Beneddra

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