ストイコビッチが語るヴェンゲル監督。秘話と“すごい特権”、恩師の将来/独占インタビュー

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アーセン・ヴェンゲルが自身の後継者の資質を備えると語った人物がいる。ドラガン・ストイコビッチ。現在、53歳となった“ピクシー”が恩師の退任に関し、『Goal』の独占インタビューに応じた。

2011年、アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督がこんな発言をしていたことをご存知だろうか。

「ドラガン・ストイコビッチは私の後継者として最適だと思うよ。理由はいくつもあるが、私と同じアイデアを共有しているんだ。完璧なフットボールを追求するという点でね。パスを多くつなぐ攻撃的なフットボールができるチーム作りを目指している。すでにそうだが、彼は偉大な指揮官になるはずだ」(セルビア紙『Vecernje Novosti』より)

22年にわたって指揮してきたクラブを今季限りで退任することが決まったヴェンゲル。彼はキャリア晩年になっても、後任監督について語ることはほとんどなかった。だが、ストイコビッチは“ほとんど”に含まれない例外的な人物だ。

“ピクシー”の愛称で知られるレジェンドは、1994年から8年にわたってJリーグの名古屋グランパスでプレーし、うち2シーズンはヴェンゲルから指導を受けた。現役引退後の2008年に監督として名古屋に復帰。2010年には愛する古巣に初のリーグ優勝をもたらし、Jリーグ優秀監督賞を受賞した。6年間指揮を執った後に日本を離れ、2015年から中国スーパーリーグの広州富力を率いている。

ヴェンゲルと「同じアイデアを共有している」というピクシーは、恩師の退任に何を思うのか? 彼は我々『Goal』の取材に、快く応じてくれた。そして、話を進めるうちに、名古屋時代の秘話や現在の関係に至るまで、数々のエピソードを明かしてくれた。

Emperor's Cup

■「ヴェンゲルのおかげでフットボールを楽しめた」

――ヴェンゲル監督の退任が発表されました。かつて師弟関係にあったわけですが、彼からどんなことを学んだのでしょうか?

彼のもとで2年間プレーしたよ。指導者になるにあたって、その経験が私にインスピレーションを与えてくれた。(ヴェンゲル監督時代)名古屋は魅力的なフットボールができていたよね。素晴らしい外国籍選手がいて、実際に天皇杯で優勝することができた。彼はJリーグ優秀監督賞を受賞し、私もリーグMVPに選ばれた。2人はもちろん、クラブも大きな成果を得ることができたんだ。

彼のもとにいて「フットボールはとてもシンプルなもの」と気づかされたよ。フットボールは非常にシンプルで、それゆえとても難しかった。でも彼が監督に就任したことで、私はフットボールを本当に楽しむことができた。ピッチに立ってチームのためにプレーすること、トレーニングや試合に向けて準備していくこと……あらゆることに、大きな喜びを感じられたんだ。

――「ヴェンゲルが名古屋にやって来るかもしれない」と聞いたとき、どう思われましたか?

当時のクラブ代表だった西垣(成美)さんとテクニカルディレクターの曽我見(健二)さんと話した。彼らは「ヴェンゲルを知っているか」と尋ねてきたんだ。名前をうまく発音できていなかったから、何度も聞き返すはめになったけどね(笑)。結局、聞き取れなくて紙に書いてもらった。そして、名前を見た瞬間に質問したんだ。「彼を連れて来るチャンスがあるのか?」ってね。彼らは「Yes」と答えた。だから、すぐにこう返したよ。「何をしてるんだ! 今すぐ、彼を連れて来てくれ!」ってね。

――やり取りが目に浮かびますね(笑)。しかし、彼は今ほど有名ではありませんでした。なぜそこまで強く推薦したのでしょうか? 「今すぐ!」と言うほどに。

「ヴェンゲルは皆が求めるフットボールを名古屋にもたらしてくれる」と確信していたんだ。100%ね。そして私たちは1995年の1月にパリのホテルで会った。日本について色々なことを聞いてきたよ。私は、彼がリスペクトを受けるであろうこと、仕事をする上で誰のプレッシャーも受けないこと、思うように仕事ができるということ……その他にも何でも話した。特に日本にはリスペクトの文化があること、他にも名古屋や日本についての良い情報を伝えたんだ。

Stojkovic Wenger

■私たちは同じ哲学を共有している

――ヴェンゲル監督はあなたと「同じアイデアを共有している」と言っていました。

そうだね、私たちは同じフットボール哲学を共有している。人々に素晴らしいフットボールを届けるためにね。彼の取り組み方やトレーニング方法が好きなんだ。今の私がチームを見るときも同じだ。この考え方をヴェンゲルと共有できているのがうれしいよ。

――先ほどから何度か話に出ていますが、指導者としても影響を受けているということですね?

ヴェンゲルは私が監督になる上でインスピレーションをくれた人物だ。プロライセンスの最終試験の前、私はアーセナルの練習場で1週間を過ごした。彼のフットボール哲学はとても大切なものだと感じている。常にテクニカルなフットボールを目指していて、過度なフィジカル重視の戦術やロングボールを重視しない。これらはフットボールとは別物なんだ。ボールはピッチの上にある質の高いプレーによって運ばれるべきだからね。

技術を重要視するから、知性と優れたテクニックを持つ選手と契約する。トレーニングはとてもシンプルだけど、面白い。トレーニングセッションで退屈したことはなかったよ。そして、フットボールへの情熱を強く持っている。四六時中、フットボールのことばかり考えているからね。

Arsene Wenger Jack Wilshere

■アーセナルへの誘いと、移籍断念の秘話

――名古屋で指揮を執った後、ヴェンゲルはロンドンに渡りました。アーセナルを率いるにあたり、彼はデニス・ベルカンプのパートナーとしてあなたを獲得する考えがあったようですね。

1996年にオファーを受けた。本当にうれしかったよ。選手として、そんなに評価してくれていたなんてね。ただ、Jリーグのスター選手として名古屋にいられて満足していたことや、子どもたちが日本で学校に通い始めたことを考慮して断ることにしたんだ。そういうわけで、お互いの健闘を祈って別れることになった。

ただそのとき、彼は「これまで良い選手を何人も指導してきたけど、君はトップ3に入る」と言ってくれたんだ。他の2人は誰か聞いたら、ジョージ・ウェアとグレン・ホドルだって言っていたよ。誰が一番か聞いたら、「それを決めるのは難しい。だが間違いなくトップ3に入るよ」って言ってくれたんだ。彼からそんな言葉をもらえるなんて、最高だったね。

――アーセナルに行かなかったことに後悔はありませんか?

プロとしては当然、後悔している。彼はちゃんとすべてを説明してくれた。ベルカンプの相棒として考えてくれていたし、パトリック・ヴィエラも加入すると聞いていたんだ。でも私は(日本で)快適だったし、子どもたちの学校も始まったばかりで、ロンドン行きはあまりに唐突なことだったんだ。こういう事情さえなければアーセナルに行っていただろうね。

ただオファーをもらえたことだけを見ても、選手としての評価の証と考えることができる。それにヴェンゲルが「一緒にやってきた中で最もインテリジェンスのある選手の一人」だと評価してくれた。これは大きな栄誉だよ。

 Stojkovic

■アーセナルは2つある。ヴェンゲル以前と、以後だ

――22年でヴェンゲルの評価は「Arsene Who?(アーセンって誰?)」から「Le Professeur(教授)」に変わりました。

当時はデビッド・デイン氏(当時副会長)がヴェンゲルを連れて来たことに対し、多くの人がクエスチョンマークを浮かべていたよね。誰もこの“教授”がチームをチャンピオンにするなんて想像していなかったんだ。だが幸運なことに、選手たちが彼のやり方やフットボールに数カ月で順応した。いまや、彼がアーセナルでやってきたことを知らない者はいない。まさにレジェンドだ。軽々に誰かをレジェンドとは言えないものだけど、彼は真のレジェンドだよ。

――とても、とても長い期間にわたって成功を収め続けました。

世界有数のクラブを22年にわたって率いたなんて信じられないことだ。新たな時代、新たなアーセナルを作り上げた。アーセナルは2つある。ヴェンゲル以前と、以後だ。1996年以降のガナーズは毎年素晴らしい成績を収めてスキルフルな選手が次々やってきた。そして毎シーズン、チャンピオンズリーグへの出場を果たすようになったんだ。

これだけ長期にわたって指揮を執ってきたんだから、彼がベンチからいなくなったら、ちょっとした違和感があるだろうね。今回の決定は彼の個人的な考えによるところが大きいと思う。毎年恒例になっているんだけど、また彼に電話してロンドンで会うつもりだ。私がヨーロッパに戻るときはいつもそうしている。ランチを食べながらフットボールについて語り合うんだ。彼と一緒に、ランチにコーヒーだなんて、すごい特権だね。

Wenger Stojkovic

――では、もしその際に、今後についてアドバイスを送るとすれば、どんな言葉をかけますか?

休みを取って世界中を旅行するのが良いと思うよ。誰もが彼を知っているから簡単なことではないだろうけどね。彼は知的な人間だから、何をすべきか分かっているはずだ。いずれにせよ、少なからず休暇が必要だと思うよ。今は友人たちとゆっくり過ごしてもいいんじゃないかな。

ただし、はっきり言えることがある。

彼がフットボールに別れを告げることは、ないだろうということさ。

インタビュー・文=クリス・ホイットリー/Chris Wheatley

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