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「遠藤航なしのリヴァプールは考えられない」なぜ短期間で不可欠な存在になれたのか?西大手紙副編集長が徹底分析

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昨年8月、突如として成立した遠藤航のリヴァプール移籍。シュトゥットガルト主将としてブンデスリーガでは名のある存在だったが、イングランドではあまり知る人はおらず、獲得した経緯(モイセス・カイセド&ロメオ・ラヴィアの失敗)もあって現地では物議を醸した。加入からしばらく適応に苦戦したことも、辛口コメンテーターの批判に拍車をかけている。

しかしカップ戦を中心に徐々に出番を増やしていくと、チーム状況もあって年末年始の過密日程でフル稼働。唯一公式戦8試合連続出場を果たし、その持ち味を存分に発揮すると、日本人として初めてリヴァプールの月間最優秀選手賞に輝いた。わずか1カ月で、チームに欠かせない存在になったのである。

では、遠藤は何が優れているのか? なぜ短期間で適応し、ユルゲン・クロップ監督にとって手放せない存在となったのか。スペイン大手紙『as』の副編集長を務めるハビ・シジェス氏が、日本代表キャプテンを徹底的に分析する。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎

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    リヴァプールに欠かせない存在に

    遠藤航(30)のような選手は稀だ。表面的にはあまり目立っていないながらも、自チームに巨大な実利を生み出している彼は、ピッチ上における真のバランサーである。

    リヴァプール加入直後の遠藤は、確かに苦しんでいた。が、弱火で少しずつ煮詰めていったその影響力は、今やチームに欠かせない偉大な隠し味となっている。

    「彼がいなければ、現在の私たちは一体どこに立っていたのだろうか?」

    少し前に、ユルゲン・クロップはそんなことを語っていた。その問いかけの答えは、遠藤がアジアカップに参加するこの1月に明らかとなるが、いずれにしても日本代表MFはプレミアリーグを代表する強豪チームに短期間で適応し、いなくなれば大きな不安を覚えさせるほどの信頼を勝ち取ったのだった。

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    「ポジションを失うことはない」

    正直に言って遠藤のリヴァプール加入は、そのほかの獲得候補のネームバリューと比較すればクラブのサポーターに大きな期待を生じさせるものではなかった。しかしこの日本人こそが、レッズにぴったりとはまる指輪だったのである。現在のクロップは夏にモイセス・カイセドを獲り逃したことをまったく悔やんでいないはずだ。このドイツ人指揮官は対戦相手の守備から攻撃へのトランジションを妨げるため、デュエルにおけるインテンシティー、プレスおよび後退守備の正確性をこよなく愛しているが、遠藤はそれらすべてを長所にしているのだから。

    遠藤がリヴァプール加入当初に出場機会を得ていなかったのは当たり前のことだ。たとえ彼の選手としての成熟ぶりが成功を約束していたとしても、ステップアップの移籍を果たしたならば、適応する時間はどうしたって必要になる。シュトゥットガルトからリヴァプールへ……その両クラブ間の移籍ではプレーの方法も変えなくてはならない。

    リヴァプールは常に試合の主役となることを義務付けられており、クロップの敷く大胆不敵な掟を隅から隅まで頭に入れておく必要がある。遠藤はわずかな出場時間しか得られないプレミアリーグ、より長い間ピッチに立っていられるヨーロッパリーグでその掟を学んでいき、アレクシス・マック・アリスターの負傷離脱後に、ついに定位置を奪取している。これから遠藤がポジションを失うことは、まずないだろう。これ以上ぴったりはまる指輪は、おそらくそうは見つかるまい。

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    「遠藤航こそがスター」

    遠藤はブレーキ、ホールド、ステアリングを同時に行う選手であり、彼がピッチに立っていれば予測不可能な事態は存在しない。この背番号3はリヴァプールにバランスをもたらす者なのだ。遠藤はピッチという銀河を駆け回って、バランスを崩壊させ得る問題を解決し続ける。ハイプレスを生命線とするリヴァプールにとっては、まさに必要不可欠だ。

    1-4-3-3のアンカーを務める遠藤は、「前に出てプレスを仕掛ける」、「サイドのカバーリングをする」、「チームメートのサポートに回る」という行動を几帳面かつ継続的に行なう。その戦術理解力とデュエルの強さは特筆もので、それらがチームの危機的状況を事前に防ぐことを可能としている。

    リヴァプールは守備から攻撃、攻撃から守備へのトランジションを要としているチームだが、几帳面かつ狡猾で、「攻撃→攻撃」から「攻撃→守備」、「守備→攻撃」、「守備→守備」の4局面を支配できる遠藤は要となる存在だ。彼こそ、まさに模範的な守備的MFであり、そのポジショニングと各アクションでの読みの鋭さによって、ピッチ上で権威を振るっている。

    では、遠藤の具体的なプレーはどういったものなのだろうか? 前からのプレスにおいてはインサイドハーフ2枚とともにスペースを消しながら、チーム全体のアグレシッブさも利用しながらボール奪取を試みる。自分が対応すべき相手に対しては前を向くことを許さず、パスを受ける前に先んじて“潰す”ことを狙う。もし相手がこの最初のプレスを突破すると、遠藤の主要な動きは中央のスペースを閉じることになるが、サイドの守備のサポートに回る意識も決して忘れない。

    遠藤は常に視野を確保して、あらゆる場所に駆けつけられるようスペースを管理している。中央に絞り過ぎることもサイドに開き過ぎることもない状態で、各場面で適切な決断を下している。加えて、彼はペナルティーエリア内に送られるクロスの守備者としても有能だ。例えばニューカッスル戦(第20節:4-2)、カーティス・ジョーンズのゴールで2-1となる前には、これまでにイブラヒマ・コナテやサイドバックの選手たちを助けてきたように、フィルジル・ファン・ダイクの面目も保っている。

    遠藤が従事している仕事は華々しいというよりも、まさにチームのために行う内々のもので、広く称賛される選手ではないかもしれない。が、その運動量やプレーリズム、戦術理解力は、対戦するチームの監督が畏怖の念を抱くレベルだ。指導者にとっては、遠藤のような選手こそがスターなのである。

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    「チームを輝かせる存在」

    遠藤がボール非保持のときに見せるプレーには、異論を挟む余地がない。それと同様に、ビルドアップのパスも称賛されるべきだろう。彼はビルドアップ時、両センターバックの間に入ることを常としているが、そこからいつリスクを冒すか冒さないかを的確に判断して、長短のパスを繰り出している。

    相手選手を引きつけてから、攻撃の第一歩となるボールを出す……。サイドへのパスは確実そのものだが、遠藤というパサーはそれだけにとどまらない。これはおそらく生来の才能だが、相手チームのラインを破るパスを、正確なタイミングと高い精度で出すことができる。

    昨年末のアーセナルとのビッグマッチ(第18節:1-1)で、ルイス・ディアスに送ったロングボールが良い例だろう。両ウィングがワイドに開くクロップのリヴァプールで、遠藤が論理と勇気を組み合わせて前線に送るボールは、チームの必要性に合致している。彼がボールを持ったとき、レッズはチームとして求められるプレーとパスを見逃すことがない。

    遠藤は表面的には注目を浴びにくく、しかしながら強豪チームを強豪チームたらしめる根幹たるポジションでプレーし、その役割を極めて高い水準でこなしている。今季のリヴァプールは失点数を減らしながら勝ち点数を増やしているが、この日本人の存在と無関係にはなり得ない。遠藤は、チームメートとチームをもっと輝かせられる存在なのだ。

    クロップにとって、遠藤なしのリヴァプールはもはや考えられないものとなった。レアル・ソシエダ指揮官イマノル・アルグアシルは、久保建英を取り戻すために「日本代表がアジアカップで早期敗退することを願う」と冗談混じりに語っていたが、リヴァプール指揮官も全く同じようなことを語っている。会見ではいつもの笑顔を見せたが、それが本心であることは明白だ。