もちろん、この一戦で最も注目を集めるのは現・世界最高の選手キリアン・エンバペであり、準々決勝進出の本命は彼が引っ張るPSGだ。それでもラ・レアルのサポーターは巨人のようなチームとの対戦で、世界中にサプライズを与えることを期待している。自チームがCLグループステージの頃のような輝きを取り戻すことに。
そして、その期待の中心にいる選手こそが、久保なのだ。
日本でこの試合を放送する映像会社は、とにかく久保の存在をプッシュするプロモーションを行なっていることだろう。程度やニュアンスの差こそあれど、それはスペインやバスクでも同じだ。例えば、イマノルが久保を温存したラ・リーガ第27節セビージャ戦でも、ベンチに座る日本人MFの様子をテレビカメラが何度も捉え、実況や解説も「最たる違いを生み出す選手」として何度もその名に言及していた。それはラ・レアル、ひいてはリーガにとって久保がいかに重要な選手であるかを物語っている。
そう、イマノルはわざわざ日本でも見やすい時間帯に開催されたセビージャ戦で、久保を最後まで出場させず、さらにミケル・オヤルサバル、ミケル・メリーノもベンチスタートとして後半途中から起用した。もちろんPSGとの決戦に向けて、フレッシュな彼らを必要としているからだ。
ラ・レアルの攻撃がPSGの守備を穿てるかどうかは、何よりも久保の閃きにかかっている。この背番号14がリュカ・エルナンデスを相手に何ができるか、に。アノエタに住まう人々はすでに分かっている。日本人MFが大一番でこそ勝負強さを発揮することに。
サポーターが心に深く刻んでいる久保のプレーは、アノエタのバスクダービーで決めた昨季と今季のゴールだ。とりわけ昨季、まだ前半だったにもかかわらず衝動的にユニフォームを脱いでゴールを喜んでいた姿は、彼がすでに“私たちの一人”であることを強く感じさせた。今回のPSG戦で、久保が私たちの心にさらに食い込むプレーと振る舞いを見せてくれるならば、これほどうれしいことははない。