さて、そうした忌まわしき雑音を取り除いたとしても、次の市場が久保にとってステップアップを果たす絶好の機会であることは間違いない。とはいえ、彼にはまだラ・レアルで証明しなくてはならないことがある。対戦相手はもちろん、ポジション争いをする未来のチームメートとも競い合える実力があること、世界最高峰の舞台でも輝けることを……。久保の才能と実力を考えれば、そうすることは十分に可能だろう。
ここ最近に久保が見せているプレーには、大きな期待が持てる。シーズン序盤こそラ・レアル全体の低調なパフォーマンスに引きずられたものの、ここ数カ月で流れを変えて、チームにとってかけがえのない貢献をする選手に戻っている。
久保はポジショナルな攻撃において大きな効力を発揮する。彼のようにフットボールというゲームを理解している選手は、ごくわずかだ。チームのビルドアップ時、中央とサイドのどちらでパスを受けるべきかを巧みに判断し、ボールをトラップすれば頭を上げて次の最適解となるプレーを選択。そのドリブル突破、ラストパスのクオリティーは凄まじく、それがラ・レアルにありとあらゆる可能性を与えている。
久彼は圧倒的な緩急のドリブルから内に切れ込んでフィニッシュを狙い、また縦に抜ければゴールライン際からクロスを供給する。加えて、その足の速さから、カウンター時には自らドリブルを仕掛けても、ボールなしでゴール前に走り込んでも相手にとって脅威となる。
久保は攻撃のほか、守備でも責任を背負える選手だ。彼はマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェに在籍した経験もあって、一連の守りの動きをしっかりこなせる。もし今夏、どこかのビッグクラブに移籍するならば、それは大きな利点となるだろう。
久保は守備における献身性が際立つ。積極的にプレスを仕掛け、必要なときにはサイドバックのカバーも怠らない……一つだけ難癖をつけるとすれば、ラ・レアルが後方で守備ブロックをつくるとき、背後のケアが少し疎かになってしまうところか。とはいえ、賢明かつ成長のための努力を怠らない彼のことである。そうした欠点も、時間とともに解消されていくはずだ。