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サウジ・プロリーグ、23-24シーズン前半の勝者と敗者:絶好調クリスティアーノ・ロナウドにジェラードの悪夢

世界中の多くのリーグ同様、サウジ・プロリーグはシーズン半ばのブレイクに入った。先週末に2023年を終え、再開は2月半ばの予定である。

夏に目が飛び出るような大盤振る舞いをしながら、このリーグの野心はとどまるところを知らない。冬の移籍市場でどのような動きが出てくるのか、まったく目が離せない状況だ。今冬も、ビッグマネーをめぐって再び数多くのトッププレーヤーが中東に移籍することだろう。

そしてピッチ上では、何人ものビッグネームが金額に見合う働きをしている一方で、すべてのクラブが大満足で休暇に入ったわけではない。タイトル争いは上位数チームに絞られ、中には自身の立場が危うい監督だっている。

そうしたことすべてを考慮に入れて、これまでのサウジ・プロリーグの勝者と敗者についてまとめてみよう。

  • Cristiano Ronaldo Al-Nassr 2023-24Getty Images

    勝者:クリスティアーノ・ロナウド

    今季これまでのサウジ・プロリーグのMVPは、何の疑いもない。C・ロナウドはたった18試合で20得点と復活を遂げている。リーグ全体のレベルについて言いたいことはあるかもしれないが、5度のバロンドール受賞者は、39歳の誕生日が近づく中でまだ試合を支配する力があることを示しているのだ。

    C・ロナウドのパフォーマンスは、開幕2連敗を喫した当初とは全く違う。あれ以降、アル・ナスルが勝ち点を取りこぼしたのはたったの2試合、リーグ2位の好成績でシーズン半ばのブレイクに突入した。AFCチャンピオンズリーグと国王杯でも勝ち残っている。

    2024年が明けてもポルトガルのスーパースターが好調を維持すれば、リヤドにリーグ優勝のトロフィーがもたらされるかもしれない。

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  • Neymar Al-HilalGetty

    敗者:ネイマール

    サウジ・プロリーグ最高のビッグネームはC・ロナウドであり続けているが、リーグ史上最高額の契約という栄誉は、8月にパリ・サンジェルマンから9億ユーロ(約1400億円)でアル・ヒラルにやってきたネイマールのものとなった。

    だが、サウジ・プロリーグ史上最も成功したクラブにとって不運なことに、ネイマールはたった3試合リーグ戦に出場しただけで、中東での最初のシーズンを終えることに。クラブの投資額が回収されるまでには、長い年月が必要になっている。

    元バルセロナのスターは、ピッチに立てば3試合で3アシストという活躍を見せたが、長く続かなかった。10月のブラジル代表戦で膝を負傷し、シーズンを棒に振ることになったのである。

    32回目の誕生日が近づく中、再び以前のような活躍ができるかどうかは予断を許さない。みなが期待していたシーズンではないことは確かだ。アル・ヒラルにとって幸いなのは、ネイマールがいなくてもチームにとってはそれほど痛手でなさそうなことである……。

  • Aleksandar Mitrovic Al-Hilal 2023-24Getty Images

    勝者:アル・ヒラルのその他の契約

    攻撃の要になると見られていた選手が離脱したというのに、アル・ヒラルはサウジ・プロリーグの優等生であることを証明し続けている。ジョルジェ・ジェズス監督のチームは19試合負けなしで、2位と勝ち点差7で順位表のトップに君臨している。

    アル・ヒラルは去年の夏、他のチームよりもはるかに多くのビッグネームと契約を交わし、躍進している。セビージャからやってきたGKヤシン・ブヌは、たちまちリーグ最高のGKであることを証明した。彼が来る前からカリドゥ・クリバリが守備陣を統率しており、リーグ戦これまでで、たったの9失点しかしていない。

    中盤では、ルベン・ネヴェスとセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチが変革をもたらせるコンビとしての期待に応えてきた。FWアレクサンダル・ミトロヴィッチはC・ロナウドと得点王争いを繰り広げており、17試合で17得点をあげている。その隣ではマルコムが9得点5アシストを記録、ハットトリックを2度も達成した。

    クリバリを除き、こうした選手たちの誰も、シーズン前チームに加入した時に全盛期を過ぎたとは言われていなかった。おそらくアル・ヒラルは、今後の移籍市場で巨額の資金をもって狙いをつけるべき他のクラブの選手のプロフィールに関して、青写真を描いていることだろう。

  • Karim BenzemaGetty

    敗者:カリム・ベンゼマ&アル・イテハド

    夏にやってきたもう一人のスーパースターであるベンゼマ。バロンドールを受賞したばかりの男は、数週間前にサウジ・プロリーグを制覇したばかりでお祝いムードのアル・イテハドに加入した。しかし控えめに言っても、事態は計画どおりには進んでいない。

    ディフェンディング・チャンピオンのアル・イテハドは、7位という寂しい順位でブレイクに入った。首位とはすでに勝ち点差が「25」に開いている。来シーズンのAFCチャンピオンズリーグ参加すら危うい事態に陥っており、トップ3との勝ち点差よりも下位3チームとの勝ち点差の方が少ないのが現状だ。

    序盤からチーム状態はうまくいかず、報道によるとヌーノ前監督はベンゼマの加入をまったく歓迎していなかったと言われている。夏に大きな注目を集めたジョタは、移籍市場閉幕後に登録メンバーから除外されている。

    その後ヌーノ監督はシーズン当初の成績不振を理由に解任されたが、後任のマルセロ・ガジャルド監督の下でも事態はあまり改善されていない。アルゼンチン出身のガジャルド監督は、リーグ戦5試合で1勝しかしておらず、直近の3試合で全敗。C・ロナウド率いるアル・ナスルにも2-5で惨敗した。

    ベンゼマ個人も、リーグ戦で9得点5アシストという成績は悪いとまでは言えないが、 得点ランキング争いからは外れている。元レアル・マドリーのストライカーとして、試合に臨む態度やコンディションの悪さが批判されるようになった。21世紀最高の選手の1人は、その最終章はぱっとしないものになりそうだ。

  • Steven Gerrard Al-Ettifaq 2023-24Getty Images

    敗者:スティーヴン・ジェラード

    もうひとりの世界的スーパースターであるジェラードも、これまた忘れてしまいたいシーズンを送っている。監督としての評判を再構築するべく、夏にアル・イテファクの監督に就任。サウジ・パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が所有する4つのクラブではないにも関わらず、ジェラードは豊富な資金を使える立場にあった。

    そこでリヴァプールの元キャプテンは、ジョーダン・ヘンダーソン、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ムサ・デンベレといった選手を獲得。少なくとも、トップ4に続く結果は間違いないとみられていた。ところが、シーズン開幕日にアル・ナスルに衝撃を与えた後、事態はたちまち指揮官にとって厳しいものになっていった。

    アル・イテファクは10月28日の勝利を最後に、1勝もできないままブレイクに入った。全公式戦9試合連続未勝利で8位に後退し、降格圏内のチームとの勝ち点差は「8」しかない。最も心配なことは、その間たった3得点しかしていないこと。リーグ戦での得点が22というのは、トップ10でワーストだ。デンベレのケガは確かに痛いが、事態を早々に改善させろというプレッシャーは、デンベレよりもジェラード監督にかかっている。

    皮肉にもこの間、アストン・ヴィラがジェラード解任からたった1年で降格争いから優勝争いをするまで躍進している。若手指揮官として期待されたジェラードだが、その評判はすでに地に落ちてしまっている。

  • Franck Kessie Al-Ahli 2023-24

    勝者:アル・アハリ

    言うまでもなくそれらは起こり、ヤイスレ監督にはプレッシャーがのしかかった。チームは9月と10月のリーグ戦7試合で3勝しかできず、国王杯ではリーグで降格争いをしているアブハーに敗れて敗退した。

    しかしながらその後は調子を持ち直し、現在は8試合負けなし。そのうち7試合は無失点という快進撃を続け、順位も3位まであがった。AFCチャンピオンズリーグ出場圏内まで勝ち点差6と迫っている。

    夏に契約したリヤド・マフレズとフランク・ケシエがここ数カ月調子を取り戻し、スペインの若きスター、ガブリ・ベイガもスロースタートながら中東でのキャリアに改善の兆しを見せ始めている。

  • Roberto Firmino Ahli 2023-2024Getty

    敗者:ロベルト・フィルミーノ

    現在のアル・アハリを取り巻く歓喜をよそに、夏の最大の契約のひとつが忘れ去られようとしている。フィルミーノはシーズン開幕戦でハットトリックを決めて絶好のスタートを切ったが、その後は下降の一途をたどっている。

    あのハットトリックは、フィルミーノが新天地でネットを揺らした唯一のシーンに。このところのアル・アハリの無敗街道は、フィルミーノが先発メンバーを外れたまさにその時から始まっている。それ以降、交代要員としてほんの少ししか出場できていない。

    報道では、今月早々ヨーロッパ復帰が噂されている。サウジ最大の移籍失敗のひとつが起こるのは時間の問題であろう。

  • Al-Taawoun 2023-24Getty Images

    勝者:アル・タアーウン

    もはやサウジ・プロリーグでは何が起こっても驚きではないと言われていたが、アル・タアーウンのシーズン前半の躍進が、新たな秩序をひっくり返したのは間違いない。

    2019-20シーズンにかろうじて降格をまぬがれたが、ここ数年は力をつけてきており、昨シーズンの最終成績は5位。しかし夏の移籍市場ではライバルたちと比べて大きな話題になることはなく、順位表の中位に戻るのではないかと予想されていた。

    ところが、アル・タアーウンは4位でブレイクに入った。C・ロナウドのアル・ナスルやジェラードのアル・イテファクにも勝利。2023年の年末はホームで2連敗を喫したが、それでも来年のAFCチャンピオンズリーグ出場を目指せる順位にはつけている。

  • Ever Banega Al-Shabab 2023-24Getty Images

    敗者:アル・シャバブ

    今シーズン最大の失望とまでは言えないにせよ、サウジ・プロリーグで最も有能なチームのひとつであるアル・シャバブが、今シーズン19試合でたった5勝しかしていないのは予想を大きく下回る結果である。

    セビージャで策士として名をはせたエベル・バネガは、2023-24シーズンを前にすでにクラブに定着していたが、そこへこの夏ベテランのヤニック・カラスコやロマン・サイスも加わった。さらに、昨シーズンにリーグ・アンのストラスブールで20得点したストライカー、ハビブ・ディアロも、プレミアリーグのチームとの競争に勝って契約した。

    だが、ディアロはこれまで1得点しかしておらず、大いにがっかりさせられている。チームは降格圏内のチームをたった勝ち点4しか上回っておらず、マルセル・カイザーとイゴール・ビシュチャンを解任して、すでに今シーズン3人目の監督を探している。

  • 勝者:ジョルジュ=ケヴィン・エンクドゥ

    トッテナムのファンは、2016年~2019年にかけて27試合に出場したエンクドゥを覚えているだろうか? このカメルーン代表選手はベシクタシュからフリーでダマクに加入し、サウジアラビアでの新生活を始めることとなった。

    エンクドゥは今季、C・ロナウドとミトロヴィッチに次ぐ14得点をあげており、最近では4試合で8得点、ディフェンディング・チャンピオンのアル・イテハドとの試合では2得点を決めている。10月、11月、12月の11試合では先頭に立ってチームを牽引し、この間ダマクが負けたのは1試合だけで、6位に急浮上した。

  • Roberto Mancini Saudi Arabia 2023Getty

    敗者:ロベルト・マンチーニ

    過去1年半でサウジアラビア・サッカー界が行ったすべての中で、おそらく最も予想できなかったのがロベルト・マンチーニのサウジアラビア代表監督就任だろう。

    イタリア代表をEURO2020優勝に導いた名将だが、初めてのアジアカップへ向けた準備に際し、いくつもの問題に直面している。サウジアラビアのスター選手の中には、ヨーロッパのスター選手が押し寄せたために、リーグ戦に大して出場できないまま大会を迎えることになりそうなのだ。

    代表キャプテンのサルマーン・アル=ファラジュ、中盤でコンビを組むモハメド・カンノは、ネヴェスとミリンコヴィッチ=サヴィッチにアル・ヒラルでのポジションを奪われてしまった。正ゴールキーパーのムハンマド・アル=オワイスも、リーグ首位のチームにおいて、ブヌに出番を奪われている。

    代表チームの全選手が新しいサウジ・プロリーグの生態系に苦しんでいるというわけではないが、2026年のワールドカップまでにさらに多くのビッグネームがサウジに来ることになれば、マンチーニにとって大きな頭痛の種になることだろう。