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レアル・マドリーはマンチェスター・Cより先にハーランドを獲得できなかったことを後悔する?

レアル・マドリーはアーリング・ハーランドとの契約に二の足を踏んだわけだが、現地時間で先週の火曜日に行われたチャンピオンズリーグ準決勝のファーストレグでサンティアゴ・ベルナベウに乗りこんだマンチェスター・シティは、レアル・マドリーに心の底から後悔させたかもしれない。

22歳の若者がマンチェスター・Cの46試合で51ゴールを挙げ、記録を次々に塗り替えているのを見たレアル・マドリーは、ハーランドと契約していたら、その後どんなことが起こっていただろうと考えたに違いない。特に、ラ・リーガのタイトルをバルセロナにあっさりと明け渡すことになった後では…。

GOALは、白い巨人が最終的には彼との契約を断念した理由と、それでも彼らがまだハーランドを手に入れるチャンスはあるかもしれない理由を考察した。

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    移籍騒動の始まりは2019年

    レアル・マドリーが初めてハーランドとの契約に興味を示したのは、彼がチャンピオンズリーグで驚異的なデビューを飾ったときだった。当時レッドブル・ザルツブルクに所属していたハーランドは、6試合で8ゴールを記録したのである。だが白い巨人は、センターフォワードのルカ・ヨヴィッチと契約するのに6,000万ユーロ(約89億円)を使ったばかりで、さらにエデン・アザールに1億1,500万ユーロ(約170億円)、当時まだ10代だったロドリゴに5,400万ユーロ(約80億円)を費やしていた。もうひとり、大金のかかる若いフォワードとの契約を正当化するのは、現実的に無理だったのだ。

    一方、ハーランドとその家族、代理人たちは、慎重にハーランドのキャリア形成の青写真を描いており、まだ若く、毎週試合に出ることが必要なハーランドには、レアル・マドリーは大きすぎると感じていた。マンチェスター・ユナイテッドやボルシア・ドルトムントと話し合った後、ハーランドの次なる所属クラブはブンデスリーガのチームが理想的だと決めたのであった。

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  • Mino Raiola JuventusGetty/GOAL

    レアル・マドリーとの話し合い

    ハーランドはオーストリアにいたとき同様、すぐにドイツでもゴールを量産し、チャンピオンズリーグでも着実に得点していった。当時の代理人ミーノ・ライオラは、ヨーロッパの巨大クラブがハーランドにどのくらい興味を持っているか、探り始めた。イタリア出身のライオラは、おおっぴらにスペインに出かけていき、同じ日にバルセロナとレアル・マドリーで話をした。

    ライオラはイングランドにも行って、チェルシーやマンチェスター・シティと会談を実施。だが、当時の報道によると、ハーランドが一番行きたかったのはレアル・マドリーであった。1年後、ハーランドは今こそドルトムントを去るときと決め、スペインの首都でライオラと自身の父親のアルフに合流した。

  • Karim Benzema Real Madrid 2022-23Getty

    ベンゼマに関する懸念

    2022年3月下旬の話し合いでは、レアル・マドリーはハーランドと契約したいと表明し、報道によると、ハーランドの方はある懸念を口にしたという。『エル・ムンド』によると、ハーランドは自分が加入したらどのくらいカリム・ベンゼマに影響を与えるか、知りたがったというのだ。ベンゼマはレアル・マドリーで確たる地位を占めており、つい最近でも、チャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンを蹴落とした試合でハットトリックを決めている。

    「それで、ベンゼマはどうなるんですか?」と、ハーランドは尋ねたと報道されている。レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長も、ベンゼマはチームの中心であり続けると答え、これが理由のひとつとなって、クラブは最終的にハーランドと契約しないことを選択し、ハーランドはマンチェスター・Cとの契約を確定させた。

    「わがチームには世界一の背番号9がおり、ハーランドを加入させて彼をベンチに追いやることはしない」と、ペレス会長はスペインのテレビ番組で語っている。

  • Erling Haaland West Ham 2022-23Getty

    「マンチェスター・Cは10点満点」

    レアル・マドリーが昨シーズンのバロンドール受賞者にして、チームをラ・リーガ優勝とチャンピオンズリーグ制覇に導いたベンゼマを誇っている一方、マンチェスター・Cには当時、大半の試合をセンターフォワードなしで戦っていた。ペップ・グアルディオラ監督はセルヒオ・アグエロを起用しなくなり、2021年の夏、ハリー・ケインは高額すぎることが判明した後、アグエロはチームを去った。

    チームに残った天性のストライカーはガブリエウ・ジェズスだけで、半分以上の試合で、偽の背番号9として、ラヒーム・スターリングやベルナルド・シウヴァ、ケヴィン・デ・ブライネらがプレーしていた。ハーランドがマンチェスター・Cに移籍すれば、ほとんどすべての試合でプレーすることになるのは間違いなかったのだ。

    アーリング・ハーランドを扱ったドキュメンタリー番組『The Big Decision』の中で、ハーランドの父親がクラブ決定に大きな役割を担っていたことが見てとれる。「本気でレアル・マドリーにノーとは言えないが、こうと決めた基準が私たちにはある。背番号9を欲しがっているのは誰か? マンチェスター・シティは十中八九どころか10点中10点がそうであり、選択肢として完璧だ。レアル・マドリーは、ベンゼマが現役で、10点中5か6だろう。レアル・マドリーは(キリアン・)エンバペと契約しようとしているか?」と、アルフは問いかけていた。

  • Kylian Mbappe Angers PSG Ligue 1 21042023Getty

    エンバペ問題

    2022年の夏、当時のレアル・マドリーはハーランドやエンバペと契約する余裕があることを示していたが、実際には、フランス代表のストライカーを加入させようと考えており、それがハーランドを取らないという決定の理由のひとつであったことは間違いない。

    ペレス会長は、エンバペからレアル・マドリーに入りたいと言われており、エンバペの母親も同じことを言っていたと暴露し、とうとうフランスのエマニュエル・マクロン大統領が乗り出してきて、パリ・サンジェルマンとの契約更新にサインするようエンバペを説得した。

    エンバペ、ハーランド、ヴィニシウス・ジュニオール、ベンゼマがレアル・マドリーの前線に並べば、それを見るだけで相手チームは脅威を感じるだろうが、経済面やスポーツとしての視点から見れば、絶対に持続可能ではない。

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    身体的な不安材料はなかった

    レアル・マドリーが、ハーランドはケガをしやすいのではないかと多少の不安を抱いていたことも知られている。最近、レアル・マドリーは、クラブ史上最も高額な選手であるガレス・ベイルとアザールが長引く負傷でどれほど活躍できていないかを見ていたことも拍車をかけた。

    そしてハーランドを見るに、この選手が筋肉の負傷で先の2シーズンの大半を棒に振っていることに注目せざるを得なかったのだ。だが、この心配はお門違いだったようだ。2022-23シーズン、ハーランドはマンチェスター・Cのプレミアリーグ34試合中32試合に出場し、1週間以上休むことは一度もなかった。

    むしろグアルディオラ監督は、ハーランドが自分の体のケアに気を使っていることを絶賛している。「ハーランドはビッグな選手なので、注意してやらなければならないことはわかっている」と、グアルディオラ監督は言った。「理学療法、マッサージ、背中や肩、腱をほぐすこと、すべてやらなければならない。ハーランドは、ピッチにいるとき以上に、トレーニング・センターで熱心にトレーニングをしている」。

    さらにグアルディオラ監督は、ハーランドがプレミアリーグ史上1シーズンの得点としては最多となる35ゴール目を奪った後、マンチェスター・Cの練習場に直行し、1時間ものマッサージを受けていたと明かした。ハーランドは食事や睡眠のサイクルにも大いに気を配っている。ベイルやアザールのように練習後にゴルフを何ラウンドもプレーしたり、シーズン前に体重が増えたりするリスクは決してないのだ。

  • Erling Haaland Man City 2022-23Getty Images

    プレミアリーグとチャンピオンズリーグの記録を更新

    レアル・マドリーと違い、マンチェスター・Cは、ハーランドとの契約において何ひとつ心配することはなく、彼を信頼したが、ハーランドはその信頼に素晴らしい形で応えた。プレミアリーグの全ゴールの39%がハーランドのゴールであり、7アシストも記録している。チャンピオンズリーグでも12ゴールを決めて得点王となり、3月のRBライプツィヒ戦では、決勝トーナメントの試合で1試合5得点というリオネル・メッシの記録に並んだ。

    ハーランドのおかげでマンチェスター・Cは、昨シーズンの準決勝のリベンジを果たせるという自信を持ってレアル・マドリーに挑む。グアルディオラ監督率いるマンチェスター・Cは、昨シーズンの準決勝2試合の大半で対戦相手を上回るプレーをしており、合計スコア5-3とリードしてアディショナルタイムへ突入していた。ところが最後の2分でロドリゴに2ゴールを許して延長戦に突入、ベンゼマのPKによる得点でレアル・マドリーの決勝進出が決まり、マンチェスター・Cは敗退という屈辱を味わったのだった。

    ロドリゴが得点する前、マンチェスター・Cは決勝進出を決定づける最高のチャンスを何度も逃しており、その時ハーランドがいれば、間違いなく勝っていただろう。

  • Endrick, Palmeiras 09042023Getty Images

    レアル・マドリーの関心はエンドリッキへ

    現在、ハーランドはマンチェスター・C自慢の宝であるが、だからといっていつかはベルナベウのピッチに立ち、最新の銀河系軍団となることはないということにはならない。だが、レアル・マドリーはごく近い将来にハーランドと契約しようとは思っていない。特に、マンチェスター・Cとハーランドのもともとの契約に書かれている1億5,000万ポンド(約253億円)の条項が解除にならない限りは。

    その代わり、レアル・マドリーは近年目覚ましい成功を見せている10代のブラジル出身選手の動向に関心を寄せるようになってきている。12月には16歳のフォワード、エンドリッキを6,000万ポンド(約101億円)でパルメイラスから移籍させる契約に同意した。

    エンドリッキがレアル・マドリーに来るのは、ベンゼマの最新の契約が満了する年である2024年の夏である。スペインのメディアの中には、ベンゼマが本当に去ればハーランドと契約するという報道もあるが、ハーランドのマンチェスター・Cとの契約は2027年まであり、2024年では少し早いかもしれない。

    それでも、昨年の夏、スターリングやジェズス、オレクサンドル・ジンチェンコを放出したように、マンチェスター・Cはチームを出たいと望む選手の前に立ちはだかったことはない。

  • Erling Haaland Alf-Inge HaalandIG/erling.haaland

    「レアル・マドリーには特別なものがある」

    まだ22歳にもかかわらず、ハーランドはプロになってから5つのクラブに所属しており、3シーズン以上長くひとつのチームにいたことはない。マンチェスター・Cでの居心地がよく、クラブとの間に素晴らしい関係を築けているとしても、ハーランドがマンチェスター・Cに忠誠を誓い続けると考える理由はない。

    このところケガとは無縁であるのを見ると、ハーランドは行きたいところに行ける贅沢を享受できそうであり、レアル・マドリーより大きなクラブはない。2022年にライオラが亡くなった後代理人となったラファエラ・ピメンタは、彼女自身もクライアントであるハーランドも常に次のステップのことを考えていると話す。

    「プレミアリーグがあり、レアル・マドリーがある。レアル・マドリーには特別なものがあり、どんな選手にとっても夢の国だ。レアル・マドリーはこの魔法を持ち続けている。毎週リーグ戦があるわけではないが、チャンピオンズリーグの試合がある」

    「私の代理社では計画を立てることを心掛ける。私たちには目標を持つことが必要だ。どこに向かっているのかはっきりわからなければそこにたどり着くことはできず、目標を達成することはできない。選手を相手にするときは、複数の計画を立てる」

    ハーランドの父は、他のクラブでプレーしたいという息子の希望を隠そうとしない。「アーリングはいろいろなリーグで自分の才能を試したいと思っていると思う。だからひとつのリーグにいる期間は3シーズンか、長くて4シーズンだろう」と、アルフは『The Big Decision』の中で語った。

    「ドイツには2年半いて、イングランドでは2年半いる。あとはスペイン、イタリア、フランス、だね。そんな風になるかどうかはわからないけれど、息子は大きなリーグで実力を試したがっていると思う」

    そうなると、ハーランドの未来にレアル・マドリーという選択肢はありえる。マンチェスター・Cの初めての真の銀河系軍団は、ほんの数年後に本家ベルナベウに呼ばれるかもしれない。