Benzema Ancelotti Vinicius GFXGetty/GOAL

レアル・マドリーのCLでの魔法がついに消滅。マン・Cとの差をどう埋めればいいのか

現地時間の水曜、マンチェスター・シティが大歓声の響くエティハド・スタジアムで4得点中の1点目を挙げた後、レアル・マドリーは見るからに崩壊した。ヴィニシウス・ジュニオールは盛んに身振りでカルロ・アンチェロッティ監督への不満を表し、カリム・ベンゼマのチームのまとめぶりは、ひどく乱雑だった。

すべてがボロボロだった。チャンピオンズリーグでのロス・ブランコスは、外見上は落ち着いていると思われていたのに、プレミアリーグの各チームが毎週、シティのホームスタジアムで見せるのと同じようなパニックに陥ってしまった。そして、それは、事態を悪化させるだけだった。シティはすべてが終わるまでにレアル・マドリーのゴールネットをさらに3度揺らし、経験豊かなスペインのチームは、そのゴールごとに今までとは違う様相をさらけだしていった。

シティにとってこれは当然の結果だった。ファンは、もう10年もチャンピオンズリーグでの輝かしい成績を享受しつづけている。もちろん、逃してきたチャンスも多々ある。特に、2021年には自信満々なペップ・グアルディオラ監督の偉業のひとつの後に、決勝で敗れてしまった。だが、決勝でインテルと対戦することが決まった今、あの時よりは違う結果を引き寄せる可能性が高いと思われる。

一方、レアル・マドリーにとっては最悪の結末だったろう。それでもロス・ブランコスはヨーロッパサッカーの巨人でありつづけるだろう。あれほどの巨大なクラブが、そうやすやすと没落するものではない。だが、マンチェスターでのあの試合は、ある意味、ヨーロッパの偉大なチームのひとつの最後の章のように思われる。

ベテランと若手が混じったこのチームは、2022年のチャンピオンズリーグ決勝でリヴァプールを下したときのチームとあまり変わらない顔ぶれだった。水曜、ベテラン勢は年齢を感じさせるようなプレーをし、若手たちは年齢どおり経験不足を露呈した。これがレアル・マドリーでなく、違うユニフォームを着た選手たちならば、ホームではなくアウェーで、ヨーロッパで最も恐れられるチームに負けたところで、おそらく許されたことだろう。だが、レアル・マドリーは違う。直近の9回のチャンピオンズリーグで5回も優勝したチームなのだ。準決勝での敗退は失望でしかない。

今大会はルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カリム・ベンゼマ、ダニエル・カルバハルにとって、ヨーロッパ・チャンピオンになる実質的に最後のチャンスだったろう。この4人はみな素晴らしいサッカー選手だが、水曜の試合では、もはや最高の舞台で勝つためにアテにできる選手ではないことを示してしまった。ほとんどの場合は出来が悪くても許されるが、レアル・マドリーでプレーするとなれば、そうもいかない。

だから、変化が必要だ。監督はおそらくクビになるだろう。選手たちの入れ替わりも起こるに違いない。ポジションも配置しなおされるだろうし、戦術も練りなおされるはずだ。だが、これら全部を一度にどう行うのか。実際のところ、必ずしも再建の必要はない、まだ将来有望なチームを改造するのに、どんなことができるのだろうか。

どうすればレアル・マドリーがいつものレベルに戻れるのか、レアル・マドリーが、シティとの差を詰めるにはどうすればいいのか、検討してみる。

  • Vinicius Ancelotti Real MadridGetty Images

    アンチェロッティ監督にさよならを

    思い出をありがとう、カルロ。きっとリオでチャンスがあるだろう……

    水曜の試合の後、アンチェロッティ監督は、自分はどこにも行かない、2024年の契約満了までレアル・マドリーとの契約はつづくと主張した。彼には、サンティアゴ・ベルナベウでの仕事、あるいは、そういうことならどんな仕事についても、自分の都合でやめる力をもっている。なんと言っても、ヨーロッパの五大リーグすべてで優勝したことがあり、4度もチャンピオンズリーグを制覇した、監督として華麗なる経歴の持ち主なのだ。

    アンチェロッティ監督は監督として、さまざまな時代を生きぬき、順応してきた。さまざまなスタイルを実行し、相手を簡単に倒すことができると証明してきた。ある意味、今のレアル・マドリーは彼の最高傑作だ。最高の状態なら、11人の選手が完璧なハーモニーでプレーし、忍耐強くポゼッションして、敵を壊滅させる。アンチェロッティ監督はメンタリティを少しずつ選手たちに規律正しく動くことを教え、それから自由にプレーさせてきた。

    だが、水曜の試合では、かつてほど信頼できるチームではなかった。アンチェロッティ監督は転職すべきだというサインは、今シーズンの大部分で見受けられていた。レアル・マドリーはラ・リーガで勝ちつづけることができず、優勝したバルセロナとは勝ち点差20の3位でシーズンを終えようとしている。つまり、あの試合は、彼が仕事をつづけるために、こうしたいつもと違うリーグ戦から離れて、勝ち試合とすべき試合だったのだ。

    ところが、チームは敗れた。必ずしもアンチェロッティ監督のせいではない。今のシティは誰にも止められない。それでも、監督交代はレアル・マドリーの答えになるべきだろう。この仕事にふさわしい人物を特定するのは難しい。過去3カ月で、2人のプロ中のプロであるトーマス・トゥヘルとマウリシオ・ポチェッティーノは待機者リストから外れてしまっている。

    とはいえ、レアル・マドリーでのアンチェロッティ監督の時代は終わったといえる。少なくともブラジルでは仕事があるに違いない。セレソンは彼を雇いたいと公然と手をあげている。

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  • Luka Modric Real Madrid 2022-23

    オールド・ガードを獲得せよ

    レアル・マドリーは、もう何年も、チャンピオンズリーグでの経験を頼りにしてきた。このところ毎シーズン、ベテランが加入してきている。クリスティアーノ・ロナウド、カゼミーロ、セルヒオ・ラモス、マルセロはみな、チャンピオンズリーグの優勝経験があり、さまざまなレベルの栄光を手にして、去って行った。

    このように勝ちつづけている選手たちの中で最後の4人が、レアル・マドリーに残っている。クロース、モドリッチ、ベンゼマは新たに1年契約を結んだか、あるいは結ぼうとしており、カルバハルとの契約が満了するのも2024年だ。この4人が来年もまた試合に出ることは間違いないが、よりよい結果を出してくれるだろうとは言い難い。特に、来年のチャンピオンズリーグでは、ライバルたちが新しいチームで躍進してくるであろうことを考えると。

    前述の4人は必ずしもレアル・マドリーの足を引っ張らないかもしれない。だが、エティハドではクロースのディフェンスの欠点が暴露された。モドリッチはいつになく棒立ちで、ボールに行くのをためらっているように見えた。一方、カルバハルはジャック・グリーリッシュの堂々たるプレーについていけず、ベンゼマもほとんど良いプレーがなかった。

    単純に4人全員を売りに出すとか、今後12カ月以内に全員がダメになると考えるのは短絡的すぎる。だがレアル・マドリーは未来に向かうべきだし、オーレリアン・チュアメニやエドゥアルド・カマヴィンガといった若い選手たちを、もっと頻繁に先発メンバーとして起用すべきである。

  • Jude Bellingham Borussia Dortmund 2023Getty Images

    ヘイ、ジュード

    幸いなことに、推定される強化策のひとつが、すでにレアル・マドリーの計画として始まっているといっていい。報道を信じるならば、ジュード・ベリンガムと個人的な同意を得ているという。ドルトムントがこのイングランド代表のミッドフィルダーにつけているド派手な値札を考えれば、財政的な問題があるかもしれない。だが、ロス・ブランコスなら払えるだろう。右サイドの強化のためならレアル・マドリーは常に金を払う。

    問題は、ベリンガムが正確にどのポジションでプレーするか、だ。中盤のどこででも楔になれるが、長期的にはチュアメニやバルベルデと組ませる第3の選手として完璧だろう。システムを再構築して、完璧な背番号10になれるようにするという考え方もある。

    だが、これはすぐに効果が出る策ではない。ベリンガムは、超一流のモドリッチやクロースのようにレアル・マドリーを成層圏のような高みにあげることはできないかもしれない。実際、レアル・マドリーはそんなところまで二度と上がれないかもしれない。だが、ベリンガムは、すぐに歩みはじめるべき正しい道を進むのに欠かせない選手なのである。

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  • Karim Benzema Real Madrid 2022-23Getty Images

    ストライカーと契約せよ

    他にも選手の補充が必要なポジションがある。ベンゼマは素晴らしいストライカーで、バロンドールも受賞した。まだ恐ろしいほどの割合で得点を決めることができ、スペースの支配やボールがないところでの動きは、他のストライカーでは真似できないレベルにある。だが、このフランス代表のストライカーは両足の具合がよくないようで、得点できないでいる。

    現実を見れば、ベンゼマは30代後半に入り、今年は筋肉の負傷でずっと苦しんでいた。大きな試合ではテーピングなどで保護する必要があった。レアル・マドリーには、時々はゲームをコントロールできる、もしくは少なくとも途中出場できる選手が必要だ。

    この夏、移籍市場には大勢のビッグネームが名を連ねそうだ。レアル・マドリーが他の誰よりも切望しているキリアン・エンバペを得られる可能性も、つねにある。もっとも、そこまでのことは必要ない――今は、まだ。

    それより、得点はどこからでも必要なのであり、移籍市場には1人か2人、入手可能な背番号9がいそうである。ロス・ブランコスは賢く立ち回るだろう。支払いを渋るはずがない。

  • Vinicius Jr Real Madrid 2022-23

    ヴィニシウスを全体の顔に

    今シーズンの途中から、バロンドール受賞者のベンゼマがもはやチームの顔ではないことがはっきりしてきている。確かにいつも話題になるし、得点もあげている。だが、もっとコンスタントに話題になり、最もインパクトのある選手はヴィニシウスだ。

    ヴィニシウスは今のレアル・マドリーの顔になるべき選手である。このブラジル代表は、すでにスーパースターとしての派手さや自信を身に着けており、いずれにせよ、ベンゼマが出られない試合では、ロス・ブランコスはヴィニシウスをフル出場させはじめている。今こそ、チームを適切に組み立て、最高の選手ができるだけ多くボールに触れられるよう、チームの歯車を合わせる時だ。

    そうは言っても、ここにもまだ問題はある。ヴィニシウスの現在の契約は2024年に満了する。一方で、彼は自分を怒らせる術をはっきりと知っている敵に対する反応をトーンダウンできるようにもなった。こうしたことは何とでもなることだ。とにかくレアル・マドリーはシステムをちゃんとしかるべき形にする必要がある。

  • Cristiano Ronaldo Real Madrid Champions LeagueGetty Images

    魔法を信じろ

    水曜の試合後、結果について問われたティエリ・アンリは、レアル・マドリーについて何も心配していないと断言した。彼はこう言った。「レアル・マドリーはいつもここで戦っている。それがいつかは関係ない」

    元バルセロナ所属のアンリは核心をついている。レアル・マドリーは他のどのクラブよりも多くチャンピオンズリーグを制しているし、過去13回のうち11回で準決勝に進出している。各年代で少なくとも1度は優勝しているし、グルーブステージで敗退したことは一度もない。今回のことが有名クラブの終焉に見えたとしても、このクラブには由緒正しき歴史があり、毎年才能ある選手が入れ替わりしている。

    昨年のチャンピオンズリーグ決勝までのレアル・マドリーの道のりは、しばしばラッキー、もしくは、まぐれだったといわれることがある。確かに、時々は運に恵まれていただろう。だが、あの道のりは単に運のつぎはぎではない。優れたチームはそう簡単には負けない。とんでもないスターが誕生したり、相手がミスをしたりするのだ。

    チャンピオンズリーグを戦うロス・ブランコスには不思議なオーラがあり、ヨーロッパの夜を疾走する別のギアを見つける能力がある。常に論争の的にあるレアル・マドリー来季に向けてどのようにチームを改良するのだろうか。

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