Pedri Injury Career

バルセロナを新時代に導くペドリ…スペインの至宝の未来は負傷癖の克服にかかっている

今週初め、バルセロナのペドリがスペイン・スーパーカップのオサスナ戦で数分ならプレーできそうだと判明した。客観的に見て、これはバルサにとって朗報である。とはいえ、今シーズン苦戦続きのブラウグラナが最高の選手のひとりを欠いて我慢の戦いを強いられてきたことは確かだ。

現在のバルセロナにとってペドリが重要な選手であるというのは逃れようのない事実だ。過去2シーズン半、バルサはペドリが出場した試合で3敗しかしていない。ペドリがピッチにいない場合は負ける可能性が高くなるばかりではなく、彼の才能を再確認することにもなっている。

だが、実際問題としてペドリが多くの試合に出場していたというわけではない。2021-22シーズンの開幕以降、ラ・リーガでは46試合しかプレーしておらず、全公式戦でも67試合だけだ。時期尚早に起用されすぎた10代は、自身に課せられた巨大な任務をこなしきれないことが判明している。

つまり、どうにも打ち破れそうにない悪循環が生まれつつあるのだ。天才少年から中盤のダイナモとなったペドリは、コンディションを維持できないために自身の可能性を狭めてしまっているようなのである。サッカーにはケガがつきものだが、ペドリはあらゆる筋力を使って何でもこなすミッドフィルダーであり、そのために現在苦しんでいる。下手をすれば将来有望なはずのキャリアが終わってしまうかもしれない。

  • Lionel Messi Pedri Barcelona 2020-21Getty Images

    暗闇の中で輝く光

    ペドリはラ・マシアの出身ではない。2020年にラス・パルマスから加入した。だが、彼のプレースタイルや、わずか18歳でトップチームのスターとなったことで、ブラウグラナ最新の才能ある地元出身選手のひとりと言われ続けてきた。

    ペドリは奇妙な時にカタルーニャにやってきた。2020年9月、バルサはひとつの時代の終わりにさしかかっていたのだ。リオネル・メッシの全盛期は遠ざかったように思われ、一連の攻撃的選手たちとの高額契約はうまくいっていなかった。さらに、中盤が混乱していた。セルヒオ・ブスケツは相変わらず世界最高のひとりとみなされていたが、彼の隣の2人は決してうまくいっていなかった。フレンキー・デ・ヨングはバルサでのキャリアを華々しくスタートさせていたとは言い難く、当時のロナルド・クーマン監督には信頼に足る3人目のセントラル・ミッドフィルダーがいなかった。

    そこへペドリが加入した。才能よりも必要に駆られて先発入りを余儀なくされたが、そこから着実にヨーロッパで最も将来有望なミッドフィルダーのひとりであることを証明していった。ブスケツの馬力が落ちてきたため、ペドリはあらゆることをやった。前線にボールを運び、バルサに得点をもたらす絶好の角度を見つけ、メッシとの相互理解も素晴らしく、バルサをコパ・デル・レイ制覇に導いた。

    財政問題やメッシの離脱をめぐる紛争、バルサの投資が破綻しつつある避けがたい現実のせためにめちゃめちゃになったシーズンにおいて、ペドリは輝く光であった。

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  • Pedri Spain 2021Getty Images

    のしかかる負担

    バルサのスタメンに入ったペドリが、その座を手放すことはなかった。デビューシーズンが終了するまでに、カタルーニャの巨人のために53試合に出場し、目覚ましい活躍をしたことで、新型コロナウイルスにより延期となったユーロ2020ではスペイン代表の先発メンバーにまで上りつめた。当時のルイス・エンリケ監督が、当時10代だったペドリをチームの中心に据えたのである。チアゴ・アルカンタラ、ロドリ、コケは、スペインの「新たなアンドレス・イニエスタ」が、最終的に準決勝で敗れたチームを操る様子を、ただ見守るしかなかった。

    10代だったペドリがスペインのオリンピック代表に選ばれたことは、むしろ不可解ですらあった。というのも、その年の夏、2つ目となる大会に参加するために東京へ渡航するまでにわずか1週間しか時間がなかったからだ。東京に着いたペドリが疲労困憊であったのは仕方のないことだった。

    それでも翌シーズン早々、クーマン監督から短い休暇をもらうと、ペドリは12カ月足らずの間に全公式戦で73試合に出場した。プレー時間は4,000分を超え、これは普通の10代が対処すべき2倍の時間に値する。次に何が起こるか、まったく予想できなくなっていた。

  • Pedri Barcelona Frankfurt 2021-22

    問題の始まり

    シニアとなったペドリが最初にケガをしたのは2021年9月、ハムストリングの肉離れだった。3試合を欠場したが2週間ほどのことだった。どんなシーズンでも同じようなケガをするサッカー選手は多く、大したことではなかった。

    だが2度目のケガは簡単なものではなかった。試合に戻ってわすが3日後、1回目とほとんど同じところをやってしまったのだ。今回は3カ月の休養を余儀なくされ、23試合を脇から見守るしかなかった。

    ピッチに戻ってわずか3カ月後、ペドリは再びハムストリングを痛めてしまい、チャビ監督は最も影響力のあるミッドフィルダーなしで、バルサの監督になって最初のシーズンを立て直さなければならなかった。シーズン終了までにペドリはクラブと代表で26試合しか出場できず、バルサに来て最初のシーズンの出場時間の半分しかプレーできなかった。

  • Pedri Barcelona 2022-23Getty

    タイトルを獲得した複雑なシーズン

    2022-23シーズンは新しい希望をもたらした。ペドリは開幕戦からピッチに立ち、シーズン前半はずっと好調だった。バルサはチャンピオンズリーグで苦労したものの、ペドリは再び、中盤の真ん中からチームの指揮を執っていた。

    ロベルト・レヴァンドフスキの得点や水も漏らさぬ守備もあったが、バルサをラ・リーガ制覇に邁進させたのはペドリのプレーだった。チャンスメイクやシュートにつながるプレー、前へのパスやドリブルにおいてペドリはリーグトップクラスの活躍をした。バランスの良くなったシステムは、ブスケツを活性化させ、デ・ヨングを進化させ、ペドリは自由に行動して創造性を発揮した。20歳になったペドリは、どこから見ても成熟したスーパースターとなり、今後も長くバルサを牽引するだろうと見られていた。

    だが、2月、ヨーロッパ・リーグのバルサ対マンチェスター・ユナイテッド戦の前半、ペドリは2年近く悩まされてきた同じハムストリングを負傷し、途中交代した。彼にとってこのシーズンは事実上、ここで終わったのだった。

    ご存じのとおりブラウグラナはリーグ優勝を果たし、ペドリは少なからずそれに貢献した。だが、彼の時間はまたしても途切れてしまったのだった。

  • Pedri Barcelona 2023-24Getty Images

    フラストレーションの溜まる今シーズン

    今シーズン、ペドリをめぐる状況は変わっていない。ラ・リーガに2試合しか出場しないうちに、8月に別の筋肉系のケガに見舞われてしまった。だがそのすぐ後、ファンとの集いでのインタビューでこの不幸について驚くほど平然と、こう語った。「僕らの仕事にケガはつきものだ。ケガをする前よりもいいプレーができるように、頑張らないといけない」

    だが、彼の前向きな言葉と態度をもってしても、彼なしではバルセロナは立ち行かないという現実をカバーすることはできなかった。あらゆるポジションでケガ人が続出し、レアル・マドリーが台頭してジローナがかつてのレスター・シティを髣髴とさせるようなミラクル・スタートを切ったため、ペドリが戻ってきた時にはブラウグラナは優勝争いからほぼ脱落していた。

    それでもペドリは、またしてもピッチへの復帰を果たした。ただ、今回は今までとは違っていた。ペドリはどう見ても、いち選手として急ピッチで復帰したのであって、苦しむチームを順位表のトップに戻す準備ができていたわけではなかった。ペドリの戻ったバルサは前よりはよくなったが、首位との勝ち点差はまだ7もある。

    2023年の終盤に負った直近のケガは、重傷ではなかったようだが、完璧なコンディションでプレーできるようになるまでは、まだかかるだろう。本当にそこまで回復できるとも言い切れない。

  • Gavi Pedri Barcelona 2022-23Getty Images

    またしてもバルセロナのスターがケガで消えるのか?

    木曜のオサスナ戦までのペドリの成績は苦々しいものだった。とてつもない才能を持ったミッドフィルダーなのに、ピッチで輝くことができないのだ。2020-21シーズンの4,000分は彼に大きな負担を課し、ハムストリングの状態を維持するのが困難になってしまったのである。

    ペドリは疲れ果ててしまったのか、それとも頻繁にケガをするようになってしまったのか。おそらく、その両方だろう。サッカー選手が注目を集めるには、ピッチの上でプレーする必要がある。それなのにペドリは必ずピッチに立てるとは言えなくなってしまった。

    このことは、スペインサッカーにおいて、あるいはバルセロナにおいて、目新しい話ではない。アンス・ファティとガビはともに、同じようにプレーのしすぎで苦しみ、膝に深刻なケガを負っている。彼らが負わされた持続不可能な役割がその一因である。だが、ファティの代わりはレヴァンドフスキやラミン・ヤマルが務められるし、ガビの方はイルカイ・ギュンドアンや、フレンキー・デ・ヨングでも代わりができる。

    しかしペドリは、世代を代表する才能の持ち主であり、彼に課せられたとてつもない期待に応えられるだけのものを見せてきた。視力検査や数字、チームで残してきた明らかに素晴らしい記録すべてが、彼が今後何年にもわたってチームを背負える選手であることを示してきた。それなのに今、彼はピッチに立つことができない。

    イニエスタに比較されるようなあの将来有望な姿は、ただの夢になってしまうのだろうか。次にまた大きなことが起これば、ペドリはサッカー界における巨大な「たられば」のひとつになるだろう。