Pedri Injury Career

ペドリを襲うケガの悲劇。バルセロナのゴールデンボーイは高みに到達できるのか

ペドリは涙を隠せなかった。バルセロナのミッドフィルダーは右脚四頭筋をひねった後、サン・マメスのピッチに崩れ落ちた。助けなしにピッチを去ったものの、取り乱した姿で足を引きずりながらサイドラインに向かう様子に、アトレティック・クルブのファンからも励ましの拍手が送られた。

3日に負ったこのケガは、輝かしいキャリアを送っていくはずの若者が長く悩まされてきたフィジカル的な問題の最新のものだ。バルサ・デビューから4年足らず、かつてゴールデンボーイ賞を獲得し、「イニエスタの再来」と呼ばれたペドリが、果たして多くの人々が期待したトップレベルのミッドフィルダーになれるのかどうか、疑問を呼び起こす事態である。

これまでのペドリのケガの歴史を振り返り、バルセロナのスターが、疑う余地のない果てしない可能性に戻ってくることができるかどうかを検討してみよう…。

  • Pedri 20082020AA

    2020年6月:才能ある選手の獲得

    ペドリはラ・マシア出身ではない。この物腰柔らかなミッドフィルダーが、ガビやアンス・ファティなどのアカデミー出身たちに負けず劣らず活躍してきたことは特筆すべきことだ。2019年にブラウグラナは、当時セグンダ・ディビシオンに属していたラス・パルマスからの翌年のペドリの移籍を急いで契約した。当初の契約金は500万ユーロ(約8億1000万円)。当時、トップチームでの経験がほとんどない16歳との契約にしては法外な値段だと思われていた。

    しかし、バルサには真に才能ある選手を獲得したとの実感があった。移籍合意してから実際に加入するまでの数カ月間、ペドリはラス・パルマスで躍進し、クラブの最年少ゴール記録を打ち立て、2部リーグで10得点に絡む活躍をしたのだ。

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  • Pedri and Messi celebrateSoccrates Images/Getty Images

    2020年10月:「10年に一人の逸材」

    「ペドリは10年に一人の逸材」。2020年10月、スペインの日刊スポーツ紙『マルカ』はそう書き立てた。まだ10代だったペドリが、チャンピオンズリーグのユヴェントス戦で人々を魅了するパフォーマンスを披露したばかりの時だった。そのプレーぶりはリオネル・メッシ以上のものだった――もっとも、後半アディショナルタイムに決定的なペナルティキックを沈め、2対0の勝利を確定させたのはバルサのレジェンドであったが。

    この試合により、ペドリの知名度は急速に高まった。カタルーニャに来て1カ月も経たないうちに、当時のロナルド・クーマン監督の先発イレブンに割りこむと、ほどなくタレント揃いの中盤での地位を確立し、過渡期にあったバルセロナにおいて、貴重な明るい光となった。

  • pedriGetty Images

    2021年8月:オーバーワーク

    ペドリに問題が生じ始めたのは、熱心にプレーしすぎるせいだと言う人もいるかもしれない。2020-21シーズンはバルサにとって苦いシーズンであった。メッシ最後の年だったシーズンで、ラ・リーガを3位で終えた。ただし、ペドリは中盤を自在に飛びまわり、メッシがいなくなっても美しいシーズンが続くかもしれないと思わせてくれた。

    大騒ぎしたのは、監督たちだった。クーマンはデビューしたてのペドリを53試合に出場させ、バルサが3つの大会を勝ち進んだためペドリにはほとんど休日がなかった。ルイス・エンリケはこの若者をさらに重宝し、2021年3月にスペイン代表に招集。ユーロ2020の予選2試合で先発させた。本大会が始まるころにペドリはチームの中心選手となり、準決勝進出までの戦いでペドリがプレーしなかった時間は1分しかなかった。ピッチのほぼすべてをカバーし、大会ベストイレブンに選ばれ、大会の最優秀若手選手賞をスペインにもたらした。

    それで終わればよかったのだが、ペドリはスペインのオリンピック代表にも選ばれ、日本に向かった。当然のことながら、それまでの12カ月ですでに多くの試合をプレーしてきたペドリは、母国のために苦しみながらも戦った。すべてが終わってみれば、ペドリは73試合に出場しており、1年足らずで4,000分以上もプレーしていたのだった。

  • Pedri BarcelonaGetty Images

    2021年9月:ケガに襲われる

    医学の専門家でなくとも、次に何が起こるか予想できただろう。最初に悲鳴をあげた筋肉はハムストリングだった。2021年9月、ペドリは軽い違和感のために、2週間で3試合を欠場した。トップレベルのアスリートにはよくあるケガの類だった。ペドリにとって不運なことに、それは始まりにすぎなかった。

  • Pedri FC BarcelonaGetty Images

    2021年10月:雪だるま式

    2021年の次のケガは最初のケガから復帰してわずか3日で起こった。負傷した箇所はほとんど同じ場所で、はるかに深刻なケガであった。

    ペドリは丸々3ヶ月プレーできず、新監督のチャビがブラウグラナを動かすのに苦労していた頃、23試合をサイドラインから見守っていた。それでも、バルセロナの未来を託されるような大きな契約を新たに結んだのだった。

  • Aubameyang y Pedri, Galatasaray vs. Barcelona UEFA Europa LeagueGetty

    2022年4月:悲惨なシーズンの悲惨な結末

    新年になってペドリは復帰し、再び楽しそうにプレーをしているように見えたまさにその時、再びケガに見舞われた。今度はさらに深刻な筋肉の断裂で、クラブからの声明はかなり厳しいものだった。「ケガが完治するまでチームには戻れません」

    それはつまり、ペドリがそのシーズンにプレーすることはもうないということだった。73試合に出場した翌シーズンに、ヨーロッパで最も将来を嘱望される選手が、たった26試合しか出られなかったのだ。

  • PedriGetty Images

    2022年8月:必要な休息

    2022年の夏はペドリにとって非常な貴重なものになると予想されていた。大きな大会はなく、比較的ゆったりとケガの回復に専念できた。半狂乱のスケジュールに合わせて、慌ててフィジカルを整える必要はなかった。

    そのおかげで、2022-23シーズンは第1節からバルサの先発メンバーとなり、その後もレギュラーとしてプレーした。復活したフレンキー・デ・ヨングや死に物狂いのガビと素晴らしいコンビを構築し、この3人がセルヒオ・ブスケツの前で動きまわることで、シーズン前半、ブラウグラナは着実に結果を出していった。

  • Pedri Barcelona 2022-23Getty

    2023年2月:暗黒の日々再び

    だが、必然なのか事態は再び暗転した。ヨーロッパリーグでバルセロナがマンチェスター・ユナイテッドに敗れた試合の前半、ペドリはまたしてもハムストリングを負傷し、結果的にシーズンの残り全部を棒に振ることとなった。

    その時までバルサはタイトル獲得に向けて全力を尽くしていたが、ペドリは11試合を欠場することとなり、その中にはチャビのチームがレアル・マドリーに敗れたコパ・デル・レイの準決勝のクラシコもあった。

  • Pedri Barcelona 2023-24Getty

    2023年8月:さらなる衝撃

    タイトル防衛を目指すバルセロナは常にトリッキーだった。2023年の夏、レアル・マドリーはベテラン揃いのチームを活性化すべくジュード・ベリンガムを加入させて活性化したが、バルサは比較的小規模な取引ばかりで、それがいずれのエリアにおいても直ちに強化につながるようには見えなかった。バルサは今まで以上にペドリを必要としていた。

    そんな重要な岐路に、またしてもペドリは負傷した。今度は練習中に再びハムストリングをやってしまったのだ。これにより8月から11月まで試合に出られなかった。この間、安定性を求めたバルサの願いは消え失せた。

  • Pedri Gonzalez BarcelonaGetty

    2024年3月:ベンチでの涙

    昨年の冬、ペドリはピッチに戻ってきたが、調子を取り戻しはじめたころ再びそれが起こった。8月に痛めたハムストリングの問題は回復し、ここ数週間、先発メンバーからは外れていたが、以前の彼らしさを取り戻しつつあるように見えていた。いつものように全力で走り、入りこむべきスペースを見つけ、バルサの攻撃の不振を払拭しつつあった。

    だが、その時、同じことが起こった。ヘドリはビルバオのピッチから自力で足を引きずりながら去った。ベンチから試合の続きを見ている間、感情を抑えきれずに涙していた。

  • PedriGetty Images

    永久に続くのか?

    ここ最近のバルサでは、才能ある若手がケガで苦しむことが多い。アンス・ファティとガビも、若いころ大きなケガを負っている。2人ともベストコンディションに戻ることはできそうで、特にガビは順調に進んでいるように見える。だが、それでも若手のケガがバルサのパターンになりつつあることは確かだ。

    ペドリは、身体のあちこちにケガを負っているというわけではない。むしろ、ある特定の箇所のケガに苦しんでおり、何度もキャリアの中断を余儀なくされている。ハムストリングを安定させるための外科手術を受けるべきだという話もあり、長期的な耐久力をつけるための強力なパーソナル・トレーニング・プログラムが報告されている。

    だが、基本的にペドリはプレーしすぎなのだ。これまでのキャリアで、トップレベルの25歳の選手よりも多くの時間、ピッチに立っている。監督たちは、優秀すぎるペドリを調子のよい時に外すことなど、とてもではないができないと思っている。

    ペドリのキャリアは終わったわけではない。だが、きちんと管理されることなくこのペースを続けていくことになれば、長く好調を維持する彼を見ることは難しいだろう。

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