だがある意味では、デンベレが退団する方がこれまでのドラマのすべての幕切れにふさわしいと言える。カンプ・ノウでのデンベレのキャリアは全体的に失望でしかなかった。
バルサでのデンベレのイメージの一つは、疲れ切ったリオネル・メッシを地面から立ち上がらせようとしている姿だ。2019年、チャンピオンズリーグでリヴァプールと戦ったバルサは、ファーストレグの試合終了直前にメッシがデンベレに絶好のお膳立てをした。あの時デンベレがゴールを決めていたら、ユルゲン・クロップ率いる「メンタルお化け」たちであったとしても、アンフィールドでの逆転は不可能だったと信じられている。その後の不名誉なセカンドレグでの大敗の責任は、デンベレ一人が負うようなものでないことは明らかだが、それでもあのミスはデンベレのバルサでのキャリアを見事に要約したものとなっている。
デンベレがバルセロナでスーパースターになるためのすべては整っていた。そうならなかったのは、すべて本人の責任である。自分でも、昨年の9月にプロ意識の欠けた行動で人生の「5年間を無駄にした」と認めている。少なくとも自業自得だという意識はあるということだ。だが、そんな自分の無作法を改善する最後のチャンスを無駄にもしている。バルサのファンは、良い時も悪い時も応援し続けてきた選手が、ライバルクラブのひとつに入る姿を見たくないと思っているだろう。
しかし、デンベレが出ていくことは不幸に見えて実は有益なことなのだ。バルサには、PSGからできるだけ多くのカネを引き出すために戦う権利があることは明らかだ。
単純に言って、彼は頼れる選手ではなかった。そういうキャラクターではなかったのだ。おそらく、パリで遅ればせながら自分の才能を開花させるだろうが、PSGの問題児になる可能性も高いと言えるだろう。バルサのサポーターは、彼がいないほうが良いチームになるということに気づくべきである。