バルセロナにとっては、ネイマールを売却する必要はなかった。 しかし、2億2200万ユーロに設定していた契約解除金を支払うクラブが現れれば話は違う。ラ・リーガへ史上最高額となる移籍金を支払い、パリ・サンジェルマンが正式に契約解除条項を行使。世界中に衝撃を与える移籍劇となった。
なぜヨーロッパ屈指のチームを離れ、世界最高の3トップを解散し、人気の劣るリーグ・アンへ挑戦するのか? 当時のサッカーファンは疑問だらけだった。最初に浮かぶ言葉は「カネ」という人も多かった。それでも本人は、ロナウジーニョなどPSGで活躍した歴代のブラジル人選手の後を追いたかったと語っている。
PSGのデビューシーズン、公式戦30試合で28ゴール16アシストを記録。平均62分で1ゴールに絡んだ計算だ。これこそ、メッシに期待するようなスタッツである。だが3月初旬に中足骨を骨折し、シーズンは早々に終了。エースを失ったPSGの夢は、チャンピオンズリーグ・ラウンド16でレアル・マドリーに打ち砕かれた。 翌シーズンもケガによって欠場が続き、マンチェスター・ユナイテッド相手にまたもラウンド16で姿を消している。
そして迎えた2019-20シーズン、世界中が新型コロナウイルスに揺れる中、PSGに最大のチャンスが訪れる。ロックダウン中に行われた特別方式のトーナメントを勝ち抜き、クラブ史上初の決勝戦へと進んだのである。しかし欧州制覇の夢は、冷酷なバイエルン・ミュンヘンを前に散った。決勝後に涙を流したネイマールにとって、二度目のビッグイヤーは実現しなかった。