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ハーランドはよりリスペクトされるべき存在。マンチェスター・Cストライカーの驚くべき得点記録

プレミアリーグの得点王争いが熾烈を極めたのはいつだったか。2021-22シーズンはソン・フンミンとモハメド・サラーが同時に得点王となり、2018-19シーズンは22得点で3人の選手が得点ランキングのトップとなった。2019-20シーズン、2020-21シーズン、2015-16シーズンは、1位と2位の差がわずか1ゴールだった。

そこへ現れたのがアーリング・ハーランドだった。このマンチェスター・シティのストライカーは、イングランドでのデビュー・シーズンとなった昨年、1995年に達成されたそれまでの記録を更新する、36得点をあげた。2位のハリー・ケインとの差は6得点もあり、2014年以降の得点王と2位との差としては最大だった。

さらに、足のケガで2カ月近くプレーできず、試合に復帰してからも思うようにならなかった期間が長かったにもかかわらず、ハーランドは今シーズンもまた、大差で得点王になれそうである。ウルブス戦でのゴール前での見事なパフォーマンスにより、今シーズンのリーグでの得点数が25となり、2位のコール・パーマーとの差は4に開いた。

ハーランドは全公式戦で36得点をあげており、シーズン終了までには40ゴールをあげそうな勢いである。再びリーグ戦で30得点というのもあり得ない話ではない。それにもかかわらず、ハーランドの功績がもはや充分に評価されていないのではないかと思われるのだ。

  • Erling Haaland Manchester City 2023-24Getty Images

    記者たちからの冷遇

    ウルブス戦でのハーランドの大量得点は、毎年恒例のサッカーライター賞が発表された翌日に起こった。ハーランドは昨年、82%の得票率で男子の年間最優秀選手賞を受賞したが、2024年はハーランドではなくチームメイトのフィル・フォーデンが受賞することとなったのは、そう驚くべきことではない。

    驚くべきことはハーランドの得票数であり、なんと1票も入らなかったのである。ハーランドは、ケガのために2カ月も試合に出ていなかったにもかかわらず、シーズンを通して得点ランキングのトップに立っていたし、マンチェスター・シティが歴史的4冠を達成するのに重要な役割を果たしていた。それなのに、彼を今シーズンのイングランドで最高の選手だと思った記者がひとりもいなかったのだ。

    対照的に、チームとしては悲惨なシーズンを送っているマンチェスター・ユナイテッドから、ディオゴ・ダロトとブルーノ・フェルナンデスがそれぞれ少なくとも1票は獲得している。さらに少数ながら、アレクシス・マク・アリスター、ロス・バークリー、オリー・ワトキンス、ジョン・マッギンのほうがハーランドよりも良かったとみなした記者もいるのだ。

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  • Erling Haaland Man City 2023-24Getty

    驚きが普通のことに

    これは、ハーランドが成功しすぎたせいであり、得点するのが当たり前になってしまって、驚くほど多くの得点をあげていることまで普通のことになってしまったからかもしれない。昨シーズン、リーグで36得点をあげた選手が25得点したところで、多くの人にとっては当然のことであり、特別に価値があることとは認識されないのだろう。

    だが、本当にそうだろうか。ハーランドが来るまではマンチェスター・シティの歴代最多得点者にして最高のストライカーだったセルヒオ・アグエロですら、クラブに10年間いたなかで25得点以上をあげたことは一度しかない。全公式戦でも36得点をあげたことはなかった。ケインはイングランドにいた時に一度だけ達成したことがあり、サラーも同様である。

  • Erling Haaland Man City 2023-24Getty

    定義が異なる

    得点王を確実にしたのみならず、ハーランドは土曜に別の驚くべき記録を打ち立てた。過去5シーズンにわたり、レッドブル・ザルツブルク、ボルシア・ドルトムント、マンチェスター・シティという3つのクラブにまたがって、通算201得点を達成したのである。つまり、いちシーズン平均40得点をあげたというのだ。オーストリア、ドイツ、イングランドでプレーしながら、210試合で203得点を決めたのである。

    「彼は仕事に戻った」と、グアルディオラ監督はハーランドのゴールラッシュを評した。チームのエースに、ここ数週間であげた以上のゴールを期待していたことを総括したのである。ハーランドは、それまで10試合で5得点を決めており、他のストライカーならば称賛されるか、少なくとも批判はされない数字である。

    ハーランドはマンチェスター・シティに加入して以来、それどころか2019年にザルツブルクで名をあげて以来、ゴールを量産し続けている。彼にとってのスランプやゴールが少ないという定義が、他のストライカーとは全く違うのだ。今シーズン彼が得点をあげられなかった最長期間は、3カ月である。

  • Erling Haaland Manchester City 2024Getty Images

    真っ先にやり玉に

    ハーランドのサッカーとは何か。彼は何よりも得点することに身を捧げており、驚くべきペースでボールをネットに入れ続けないと称賛されない。ゴール前でのプレーが少なかったり、チャンスを逃したりするようなヒリヒリする試合で、マンチェスター・シティが負けた場合に必ず真っ先にやり玉にあがるのがハーランドなのである。

    ロイ・キーンは、3月のアーセナル戦で得点できなかったハーランドのことを「2部リーグの選手」と酷評し、スペインのメディアはレアル・マドリーとの2試合で音無しだったハーランドの悪口を言いふらした。ハーランドはオールラウンドな選手で、確かにクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシ、サラー、ケイン、ルイス・スアレス、ウェイン・ルーニー、ティエリ・アンリほど強烈な印象を残さない。だが、だからと言って彼の得点力を過小評価すべきではない。

  • haaland de bruyne(C)Getty Images

    新しい環境への適応

    マンチェスター・シティは、あらゆるポジションに素晴らしい選手が大勢おり、選手を配置し、スルーパスを繰り出したり深く守備したり、ゲームを支配するのに必ずしもハーランドを必要としない。マンチェスター・シティにはフォーデンやケヴィン・デ・ブライネ、ロドリ、フリアン・アルバレス、ベルナルド・シウヴァ、ジャック・グリーリッシュ、ジェレミー・ドクがいるのである。

    もっと多くの試合に出場できれば、ハーランドはさらにチームに貢献できる。ウルブス戦でそれまでの5試合よりもタッチ数が多く、ゴールが多かったのは偶然ではない。ただ、彼の本当の仕事はペナルティーエリアに進入し、得点のチャンスを見出だすことである。彼がそれをひときわ得意としていることは、リーグ戦での25得点を先発した26試合であげているのを見ればわかる。

    ウルブス戦の後、グアルディオラ監督はハーランドのことを、12月上旬から1月下旬にかけてリーグ戦5試合を含む10試合を足のケガで欠場して以降、彼らしいプレーをできていなかったと指摘した。ハーランドは大柄な体形のため、フォーデンやアルバレスのような小柄なチームメイトに比べ、ケガから100%のキレを取り戻すのに時間がかかってしまうと監督は言ったのだ。

    ケガをする前も、ハーランドには不利に働く別の要因があった。リーグ戦の最初の5カ月、一番の理解者であるチームメイトのデ・ブライネがケガをして、一緒にプレーできなかった。マンチェスターの創造性にとって不可欠だったイルカイ・ギュンドアンの退団にも適応しなければならなかった。

  • Erling Haaland Man City 2023-24Getty

    批評家への評価を

    ギュンドアンやデ・ブライネのいないチームで、リーグ戦の最初の4カ月間ハーランドは21得点5アシストを記録した。自身のケガにより当然ながら調子を落としていったが、それでも復帰から1カ月で見る者を驚かすようなプレーをゴール前で披露し続け、エヴァートン戦では後半に2得点をあげてチームに勝利をもたらし、FAカップでのルートン戦では大量5得点を荒稼ぎした。

    最新の犠牲者はウルブスだが、ハーランドが完全復帰を果たしたとなれば、シーズン最後の犠牲者ということにはならないだろう。リーグ戦30得点、全公式戦で40得点をあげたとしても驚くべきことではない。

    それが実現し、ハーランドが得点王のみならずプレミアリーグとFAカップの優勝を手にしてシーズンを終えたなら、サッカーライター賞に関わる記者たちは投票をやり直したいと思うに違いない。