アカデミー時代を過ごした柏レイソルを離れ、「選手として必要としてくれた」横浜F・マリノスに加入した上島拓巳。新天地は言うまでもなくJリーグ王者である。熾烈なスタメン争いは覚悟の上だった。今はサイドバックという新たなポジションで、自身の価値を見いだそうと突き進んでいる。【取材日:4月10日/聞き手=小津那(GOAL編集部)/取材協力=アシックス】
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■CBとしてポジションを勝ち取るために
――今年、横浜FMに加入しました。移籍の決め手とここまでの印象を教えてください。
まずは去年のチャンピオンチームであること。そして自分自身がより上のステップに行くためにこのチャレンジは必要だと思ったので移籍を決断しました。ここまでの自分自身のフィーリングはいいですし、特に攻撃の部分で求められることがすごく増えたので、やりがいも感じます。選手としての幅が広がっている印象です。
――柏時代に横浜FMにはどのような印象を持っていましたか?
昨季は日産スタジアムで0-4で負けています(2022年6月25日 J1 第18節)。この試合は攻撃され続けていて、じっと自陣で圧迫されているような感覚があって。ボールが切れた後もすぐリスタートしてきますし、すごく嫌なチームだなという印象がありました。
――実際に加入して気づいたことはありますか?
やっぱり個の能力は非常に高いですし、強度もすごく高くて。一番はすごくチームワークがいいところですね。選手一人ひとりがお互いにリスペクトしていて、監督・コーチもすごく選手をリスペクトしています。みんなが自信と誇りを持ってプレーしているなと感じます。
――ケヴィン・マスカット監督の指導で特徴的なところはありますか?
要求はすごく高いです。チームとしての形だったりやるべきことだったりは、しっかり言いますけど、その中でも選手の良さや特長をすごくほめてくれますし、ポジティブな声掛けがすごく多いです。選手としてはこのチームのために頑張りたいっていう気持ちにすごくなってきますね。
――開幕前の富士フイルムスーパー杯で右サイドバック(SB)に抜擢されましたが、以降はスタメン争いをしている状況です。
今、右SBで途中出場することが多くて、それはすごくポジティブに捉えています。自分自身の選手としての幅、プレーにすごくいい影響を与えていると感じているところです。
――右SBの経験を経て変わったところはありますか?
SBの受け方、SBが(ボールを)欲しいタイミングがより分かったことですね。センターバック(CB)の選手にとって、(SBがボールを)欲しいポジションはSBをやらないと経験できないです。あとは、より攻撃的なポジションなので、CBに入ったとしてもSBのようにどんどん上がって行くところはこれからトライしていってもいいのかなと感じていますね。
――スタメン争いを勝ち抜くために立てている目標や考えていることはありますか?
自分の本職はCBです。そこでポジションを勝ち取りたい気持ちは強いです。ただ今はチームも勝っていますし、同じポジションの選手のパフォーマンスもすごくいい。ですから今は与えられている、求められているところで信頼をしっかり掴みたい。最終的にはCB争いに少しでもいい影響を及ぼせればと思っています。
――今の順位(5位)と現状をどう捉えていらっしゃいますか?
全然満足していないです。横浜FMは独走しているイメージが強いので。結果も内容もまだまだだなと感じますし、そこに自分自身もリーグ戦では絡めていない。個人としてもチームとしても全然、まだですね。
――意識しているチームはありますか?
横浜FMのライバルは川崎フロンターレというイメージはありますけど、川崎Fも今年はここまで調子が良くありません(第7節終了時・13位)。自分たちがしっかり勝ち星を積んでいければ優勝に近づくと思っていますし、もっともっとやらなきゃいけないです。
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■アカデミーで作られた"自分らしさ"
――ここであらためて育成年代を振り返っていただきたいのですが、サッカーを始めたきっかけを教えてください。
実は僕、双子で兄と一緒にテニスをやっていたんです。小学校一年生のときに、体育の授業でサッカーをやったんですが、習っていなかったけどうまくて(笑)。公園でもずっとサッカーをやっていて、テニスよりも面白かった。そこで親に「サッカーのほうが楽しいからサッカーやらせてくれ」と頼んでスクールに通い始めました。
――上島選手はU-12から柏アカデミー育ちです。影響を受けた指導者はいらっしゃいますか?
ユースの時に指導を受けた現・大分トリニータ監督の下平隆宏監督です。思い返せば、ジュニアユース、ユースとポジショナルプレー、ポゼッションサッカーをやっていました。横浜FMに来て思ったよりも早くスタイルに馴染めているのは、そのお陰だと感じています。あの時の経験が今にすごく生きていますね。
――プレー以外で今に生きている面はありますか?
レイソルはすごく真面目な選手が多くて。みんなサッカーにストイックですし、人間的にも厳しく言われていました。そこは今の自分に生きているというか、自分らしさがそこで作られたのかなと思っています。
――育成年代から今までスパイクに対するこだわりはありますか?
もうずっとアシックスのスパイクを履いているんです。それこそ小学生の時もDS LIGHTを履いていました。軽さ、フィット感、フィーリング、すべてが自分に一番合っていると思います。X-FLYシリーズは前のモデルも履いていたんですけど、特にかかとの部分を気に入っていて。新しいモデルはその外付けのヒールカウンターのところが、よりホールド感が強くなりました。
前のモデルからずっと好きだった部分ではありますが、新モデルになって最初に気づいたのは、そのかかとの部分ですね。柔らかく少し分厚くなっている感覚があって、よりフィットしてくれます。
――最後にチームと個人の今シーズンの目標を教えてください
チームとしてはまずリーグのタイトルを獲る、連覇をすること。あとはACLもあると思うのでそこで獲ったことのないタイトルを獲りたいと思っています。個人としては、まだまだ出場時間が長くない中で、ピッチの上で自分の価値をしっかり証明して、チームの勝利に貢献したいです。
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Profile
■DF 15 上島 拓巳(かみじま・たくみ)
1997年2月5日生まれ、26歳。186cm/82kg。千葉県佐倉市出身。ユーカリが丘SC →柏レイソルU-12 →柏レイソルU-15 →柏レイソルU-18 →中央大を経て19年に柏レイソルに復帰。クラブ初の出戻り選手として注目を集めた。20年にアビスパ福岡に期限付き移籍してブレイク。1年で柏に帰還し、23年から横浜F・マリノスに加入した。J1通算97試合出場0得点、J2通算51試合出場2得点(4/14時点)