Man City 2.0 GFXGetty/GOAL

“第2次ペップ・シティ王朝”の始まり?1月の積極補強で生まれ変わりつつあるマンチェスター・シティの今

26日は奇妙な夜になった。プレミアリーグ優勝争いにおいて極めて重要な一夜ではあったが、マンチェスター・シティは無関係。大きな意味を持つ試合はアンフィールドとシティ・グラウンドで行われ、首位リヴァプールがニューカッスルを撃破した一方、2位アーセナルはノッティンガム・フォレストと引き分け。両者の差は「13」まで広がった。

ペップ・グアルディオラ監督体制において、マンチェスター・Cは最初のシーズンを除いき27節時点で優勝争いから脱落したことはなかった。そしてそのシーズンも、1月中旬から4月までは1試合しか敗れておらず、エティハド・スタジアムで特別な何かが築き上げられ始めていることは誰の目にも明らかだった。さらにシーズン後には、エデルソンやベルナルド・シウバ、カイル・ウォーカーら将来的に鍵を握る選手たちが続々と加入。“ペップ・シティ王朝”が始まったのである。

そして26日のトッテナム戦は、当時の状況と似た部分が多く感じられた。そう、“第2次ペップ・シティ王朝”時代の始まりを予感させるものだったのである。

  • Pep Guardiola Manchester City 2025Getty

    予期せぬ凋落

    マンチェスター・Cの凋落は衝撃的で、かつ急速だった。ロドリがチームに及ぼす影響力は過小評価されていたかもしれないが、彼が前十字靭帯断裂で離脱した後、わずか数週間で完全に崩壊するとは誰も想像できなかっただろう。たった4カ月前には前人未到のプレミアリーグ4連覇を達成していたのだから。

    しかし、11月~12が末までのリーグ戦8試合中6試合で敗れ、順位も首位から7位へと急落。ペップ体制では前代未聞の事態だった。さらに、その原因を突き止めることもできない有り様だった。2027年まで契約延長したばかりのペップも、数週間で目に見えてストレスを溜め込み、そのままクラブを去ってもおかしくはないほどだった。

    エティハド・スタジアムの拡張工事が進む中、ペップが再びチームを導けるかどうかには疑問の声も多かった。結果を見れば当然だ。しかしその答えは、1月に明白になっている。

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  • Omar Marmoush Manchester City 2024-25Manchester City FC

    救いの手

    どんどん追い込まれていくシティとペップにとって、1月にサポートが必要なのは明らかだった。そして、オーナーは当然とばかりに救いの手を差し伸べた。

    シティは冬の移籍期間に1億8000万ポンド(約340億円)を費やしている。これはプレミアリーグ他の19クラブが投じた金額の合計を上回る。過去を振り返ってみても、この投資額を上回るのは2023年のチェルシーだけである。

    オマル・マルムシュ(フランクフルト)、ニコ・ゴンザレス(ポルト)、アブドゥコディル・クサノフ(RCランス)、ヴィトール・レイス(パルメイラス)。1億8000万ポンドで加わった4選手について、ペップは自信を見せている。そしてその自信の通りに、すぐさま大きなインパクトを残している。

  • FBL-ENG-PR-TOTTENHAM-MAN CITYAFP

    クサノフの適応

    確かに、クサノフはデビュー戦で大失態を犯してしまい、悪い意味で注目を浴びてしまったのは事実だ。だが、それ以降はほとんどミスがない。そしてトッテナム戦でも強烈なインパクトを残している。ペップも試合後、こう語っている。

    「彼は洗面用具すら持たずにやってきたんだよ。フットボールだけのために来たんだ。話す時はいつも笑っているだけだが、信頼できる選手だ。スピードがあるし、パスの質は並外れていて、ディフェンスラインを破るる能力もある」

    「もちろんもっと成長する必要はあるが、まだ20歳だ。私はこれまでスピードを持つ選手をたくさん見てきたが、彼はその中でもトップの1人。みんなが彼を愛している。寡黙で、仕事熱心で、文句を言わず、謙虚だ。最初のネガティブな印象を克服するのは簡単ではなかったが、その後はとても落ち着いているし、最近の試合は本当に良かったよ」

  • Manchester City FC v Newcastle United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    ペップと「同じ言語」

    そして、ニコが違和感なく溶け込んだのは不思議ではないだろう。彼はペップとあらゆる意味で「同じ言語」で会話するからだ。

    23歳のスペイン代表はラ・マシアで教育を受け、バルセロナのトップチームで飛躍し、ポルトでの2年半でペップの目に留まった。確かにレアル・マドリーやリヴァプール相手には苦しんだかもしれないが、ニコが中盤でロドリのように振る舞うことで、シティは以前の姿を少しずつ取り戻しつつある。そしてバロンドーラーが復帰した後も、強固なコンビを築いてくれるだろう。

  • Omar Marmoush Manchester City 2024-25Getty

    新時代の中心

    しかし、おそらく最高の新戦力はマルムシュである。このエジプト代表はニューカッスル戦でハットトリックを達成した一方で、それ以外の試合では得点がない。だが、彼の活発で多才なプレーはすでに欠かせないものになっている。

    ケヴィン・デ・ブライネ、イルカイ・ギュンドアン、ベルナルドの3選手がかつての輝きを失いつつある中、シーズン前半に欠けていた攻撃のバリエーションをもたらしている。彼が新時代のシティの中心になることは間違いないだろう。

    一方でペップは、昨季のプレミアリーグ最優秀選手については頭を悩ませているだろう。EURO2024で痛いほど明らかになったように、フィル・フォーデンはサイドでプレーすることに苦しんでいる。ペップはサヴィーニョやジェレミー・ドクのような典型的なウイングをサイドで起用し、そのスピードとドリブルで相手の守備を破壊することを好んでいる。そして、フォーデンはそうしたタイプではない。

  • Tottenham Hotspur FC v Manchester City FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    “第2次ペップ・シティ王朝”

    ペップはトッテナム戦の勝利の後、チームについてこう語った。

    「攻撃陣の3人(ドク、サヴィーニョ、アーリング・ハーランド)は未来の選手だ。ニコもそうだし、復帰すればロドリも仲間入りするはず。もちろん今夜の試合で見たように、クサノフもそうだ。ヨシュコ(グヴァルディオール)も若い。ベルナルド、ギュンドアン、ケヴィン、そして他の選手たちも、もちろん我々にとって本当に重要だ。しかし、それは時間の問題でもある」

    「若い選手たち、そしてクラブが夏に獲得するであろう新戦力が、今後数年間このクラブを牽引していかなければならない」

    実際、シティの補強はまだ終わっていない。遅れていた大規模な改革は、ピッチ全体に及ぶだろう。ペップは今季の苦しい時期でさらに学んでいる。過密日程の影響で避けられない負傷とチームコンディションに対処するために、来季は大きなスカッドで戦うことを公言している。

    攻撃面でも変化が見られるはずだ。ドクやサヴィーニョの得点力を改善するのはもちろんだが、ペップは彼らの予測不可能性を最大限活用したいと考えている。長い間ボール保持と再現性を重視してきたものの、今では試合のコントロールを前提にしつつも、よりリスクを冒すスタイルへと移行し始めている。もう少し試合全体を支配できれば、両ウイングはさらなる“カオス”をもたらしてくれるはずだ。

    もちろん、補強すれば確実に成功するとは限らないし、シティの場合はピッチ外でも大きすぎる問題を抱えている。未来に確かなことはない。それは他クラブ以上にそうかもしれない。

    それでも今のシティは、1年目を終えた後に見えた可能性を感じるものでもある。ここから“第2次ペップ・シティ王朝”が始まっても、不思議ではないだろう。

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