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リオネル・メッシは今なおクリスティアーノ・ロナウドの脳内に居座っている! 永遠のライバルへの辛辣な当てこすりが「バカバカしい」理由

クリスティアーノ・ロナウドが歴代最高のサッカー選手の一人であることに疑いの余地はない。彼はあらゆる栄光を手にしてきた。マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリー、ユヴェントスでクラブとしての優勝を勝ち取ってきたし、ポルトガル代表としてもユーロを制覇した。サッカーにおけるほとんどの記録を更新してもいる。

2017年、5回目にして今のところ最後のバロンドールを手にした後、C・ロナウドは『フランス・サッカー』紙でこう語った。「僕は、良い時も悪い時も、歴史上最高の選手だ。みんな、それぞれ好きな選手がいることは尊重するけれど、僕は自分より優れた選手を見たことがない。いつもそう思っている。どんなサッカー選手も、僕ができることができない。僕以上に完璧な選手はいない」

だが、これはサッカー界における自身のステータスを確信している故の言明ではなかった。C・ロナウドが本当に世界一なら、カメラの前にいるとき常にすべての人に自分を思い出させなければならないという強迫観念にかられる必要はないはずだ。

リオネル・メッシがこんな物言いをしたことはまったくない。なぜなら、彼は常に足に物を言わせてきたからだ。バルセロナのレジェンドはC・ロナウドより2回多くバロンドールを獲得している上に、カタールでアルゼンチンをワールドカップ制覇に導いたことで、2023年のセレモニーでは記録を更新する8度目の受賞が確実視されている。

同じワールドカップで、C・ロナウドとポルトガルは嘆かわしいほど早々に敗退した。そのせいでサウジアラビアへの巨額の移籍を完結させる気になった可能性が高い。歴代最高額でのアル・ナスルとの契約締結は、メッシからスポットライトを奪い返す唯一の方法だったのだ。

だが、この移籍の衝撃は長く続かなかった。昨シーズン、C・ロナウドはアル・ナスルをサウジ・プロリーグ優勝に導くことができず、そのプレーは彼がまだ最高級のレベルでサッカーができることを万人に納得させるほどのものではなかった。

そして今、再びメッシが舞台のセンターに立った。この小柄なフォワードは、パリ・サンジェルマンでの2年にわたる残念なシーズンに幕を下ろした後、MLSでの新しい挑戦のためにインテル・マイアミに移籍することを決めたのである。

予想通り、C・ロナウドがかみついてきた。だが、この38歳の最新のコメントは、今の彼が自身の地位を維持しようとやっきになっている過去の人であることを印象づけただけだった。

  • Ronaldo-Al-NassrGetty

    「水ぎせるの呑みすぎ」

    夏休み中、C・ロナウドは最高のフィジカル・コンディションを維持し、報道によるとアル・ナスルのプレシーズン・マッチに足取り軽く参加したという。だが、マンチェスター・Uで名をはせたストライカーは、月曜のセルタ・デ・ビーゴとの親善試合に負けた後、地面に崩れ落ちたという。

    アル・ナスルは、昨シーズンのラ・リーガで13位に終わったセルタに5-0で敗れたが、C・ロナウドは前半のみに出場し、得点が入ったときはピッチにいなかった。試合後、このベテランのストライカーはサウジアラビアのサッカーを強固に弁護し、この敗戦を話題にしないようにした。

    ここ数週間でカリム・ベンゼマ、エンゴロ・カンテ、カリドゥ・クリバリと言った選手たちが、C・ロナウドを追って中東にやってきた。C・ロナウドは記者にこう言った。「僕がサウジ・リーグへの道を開いた。今や、すべての選手がここに来ている。来年にはますます多くのトップ・プレーヤーがサウジに来るだろう。1年後にはサウジ・リーグはトルコ・リーグやオランダ・リーグを追い抜くだろう」

    さらに、C・ロナウドはメッシの悪口を言うよう誘導されて、思わず乗ってしまった。MLSへの移籍を考えたことがあるかどうか尋ねられて、こう答えたのである。「いいや、ないね。サウジリーグはアメリカのリーグよりずっと優れている」

    このあからさまな物言いは、ニュースのヘッドラインになるべくしてなった。C・ロナウド自身も内心、馬鹿げたことを言ってしまったと思ったことだろう。フィラデルフィア・ユニオンとFC シンシナティでミッドフィルダーとして活躍したマイケル・ラフードは、CBSスポーツに出演して、アル・ナスルのスターの発言を「バカバカしい」と言い、「水ぎせるの呑みすぎ」ではないかと大笑いした。

    また、C・ロナウドとマンチェスター・Uでチームメイトだったウェイン・ルーニーは、現在MLSでD.C.ユナイテッドの監督をしているが、The Athleticのインタビューでこの問題に関して一般の人々が考えていることを完璧に要約してみせた。「このリーグ(MLS)は、世界最大のリーグのひとつになる能力をすべてもっている」と言い、「サウジがああいう選手たちを得るために何をしたか、見てみればいい。MLSがメッシを獲得するというのは、とてつもないことだった。メッシを獲得すること以上に、サウジの金持ちたちと競争できることを示す方法があるだろうか」

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  • Lionel Messi looks on during Inter MiamiGetty Images

    「みんなの期待を超えつづける」

    MLSは、何年にもわたってレジェンド級の選手がピッチを飾るのを見てきた。デビッド・ベッカムからティエリ・アンリ、ズラタン・イブラヒモヴィッチまで、ルーニー自身もそのひとりだ。1993年に始まって以来、急速に発展してきたリーグである。メッシがアメリカに来たのは、その自然な進歩における最新の一段階である。

    サウジ・プロリーグも何人かのビッグネームを引き寄せているが、まだ、サッカーのエリート・クラブが所属するリーグとみなされるには時間がかかるだろう。「あの発言に恐れを感じることはまったくない」と、MLSのコミッショナーであるドン・ガーバーは先週のある会議で、中東のサッカーが急速に発展していることをどう思うか問われて答えた。

    「中国でも同じようなことが起こるのを見てきたが、今はもう関心を持っていない。サウジアラビアで起こっていることについても同様だ。我々とはまったく違う話だ」

    続けて、ガーバーはメッシがインテル・マイアミに移籍してきたことは画期的なことであると説明し、MLSの株価が1999年のコミッショナー就任以降の最高値を記録したことを明かした。

    「このリーグは大きなリーグで、所属チームが30もある。150億ドル(約2兆円)の価値がある。考えてごらん、150億ドル(約2兆円)だよ。これは私たちのチーム全部を集めた価値だ。私が来たときは2億5,000万ドル(約350億円)だった。過去を振り返ろうとは思わない。今大切なのは、『将来どうなるか』だ」

    「我々は、MLSを選ばれるリーグにしたいと思っている。選手、ファン、パートナーに選ばれるリーグに。歴代最高の選手の加入は、メジャーリーグ・サッカーが彼に選ばれたことを意味する。このことは、現在のMLSがどういうものか、数年後のMLSがどうなるか、真に語ってくれることだと思う」

    さらに、ガーバーはこう付け加えた。

    「みんなの期待を超え続けるだけだ。いつか、5年後か、10年後かには、インテル・マイアミでのリオネル・メッシの成功を見た選手たちが、メジャーリーグ・サッカーについて考えるようになるだろう」

  • Messi-Inter-MiamiGetty

    メッシはまだ終わっていない

    6月24日に36回目の誕生日を迎えたメッシの輝かしいキャリアが今、徐々に終わりに向かっていることは間違いではないだろう。だが、MLSは引退リーグではなく、アルゼンチンのスターにはインテル・マイアミの運命を変えるという、とてつもない任務が課せられている。

    マイアミは現在、22試合を終えて東地区の最下位に沈んでおり、MLSのプレーオフ進出を叶えるには奇跡的な立ち直りが必要だろう。だが、メッシのいるDRV PNKスタジアムには、バルセロナでチームメイトだったセルヒオ・ブスケツやジョルディ・アルバが加わったし、メッシをよく知る監督もやってくるという。

    それは、アルゼンチン代表監督になる前に2013年から2014年の2年間、メッシがいたバルセロナの監督をしていたタタ・マルティーノである。先月、インテル・マイアミと契約を交わした後、現代のバルセロナでカリスマだった3人と再び仕事ができるチャンスについて、こう語った。

    「レオと話して、セルシオと話して、ここに来たのは成功するため、戦うため、うまく戦うためだと語った」と、フロリダでメッシとブスケツのお披露目を見た後、マルティーノは語った。

    「これは個人レベルでも我々に起こっていることだ。アメリカのマイアミで休日をともに楽しんだことはある。でも、これはそれとは違う。我々は戦いたいと思っている。彼らがここに来たのはサッカー選手として戦うためだ」

    事実、メッシはすでに自分にあこがれる新しいファンの前に初めて現れたとき、同じことを言っていた。

    「練習や試合を早く始めたくて、うずうずしている。僕はいつも、戦いたい、勝ちたい、クラブの成長に貢献したいと思っている。だからここに来た」

    ワールドカップを優勝したメッシは、ヨーロッパで続ける可能性もあった。だが、インテル・マイアミへの加入は安易な選択ではなかった。メッシはマルティーノ監督のチームを浮上させるべく、全力でプレーしなければならない。それによって彼はこれまでにない挑戦を楽しむことになるだろう。

    メッシもまた、サウジアラビアからのオファーを交渉しようとしていた。この夏の初め、アル・ヒラルが年5億ユーロ(約790億円)の契約を提示する準備をしていたことを、GOALは確認している。だがC・ロナウドと違ってメッシは世界最高の選手の一人であり続けており、自身のレガシーに付け加えるべき新たな章があるのだ。

    「金が問題なら、僕は中東か別のどこかへ行っただろう」と、メッシは『ムンド・デポルティーボ』紙で、インテル・マイアミとの契約を選んだ理由を語っている。「僕にとっては大金だったし、本当に、僕が決意したのは新しい道を進むということであって、金のためじゃない」

  • Cristiano RonaldoGetty

    サウジ・プロリーグの現実

    サウジ・プロリーグの質や将来性についてC・ロナウドが突飛な主張をしたのは、あれが最初ではない。「サウジ・リーグがプレミアリーグと同じようなものだとは言わない。そう言ったら嘘になる」と、3月に彼は言っている。

    「僕はサウジ・リーグの強さに驚いている。良いチームがいくつもあって、バランスが取れている。アラブの人たちも良い人たちだし、外国から来た選手たちがリーグの質を高めている」

    「たぶん、5年か6年したら、今の計画が続いていけば、世界で4番目か5番目に競争力のあるリーグになるだろう」と、中東での最初のシーズンの終盤、C・ロナウドは同じことを繰り返し言っていた。だが、彼の予想が当たる可能性は、急速に0に近づいている。

    TeamFormによると、現在のサウジ・プロリーグは世界第68位で、イングランドのEFLリーグ1(プレミアリーグの2つ下)よりたった7つしか上でない。一方でMLSは現在、54位だ。この数字は、本人が認めるか否かは別として、C・ロナウドがまたしてもメッシの影に隠れてしまったことを示している。ベテランのスーパースターが2、3人入ったところで、サウジ・リーグが突然トップリーグになることはありえない。一方で、MLSが劇的に順位を上げられる場所にいることは、まったくの真実だ。

    先月、インテル・マイアミがメッシの自由移籍が喫緊であることを確認した後、マネージング・オーナーのジョルジ・マスはこう言った。

    「アメリカにおけるスポーツについて話すとき、メッシが入る前と後で明らかに違いがある。私は、世界最高とは言わないまでも、1、2を争うリーグを北米とアメリカに作ることができると、とても、とても強く信じている。このことをどんなに強く強調しても、強調しすぎることはない」

    「この地に世界最高の選手がいるということは、我々のリーグにとって重要なことだ。アメリカのサッカーのエコシステムにとっても…。リオネル・メッシはこの国で優勝するために、違いを生みだすためにやってくる。チャンスをつかむことは、私自身やリーグでの私のパートナーたち、他のオーナーたちにとっての責任でもあると思っている」

    「こんなことを言っても大変な無理があるように見えるだろう。だが、C・ロナウドがサウジ・プロリーグでやろうとしていることほど無理なことではない。MLSにはすでに歴史があり、インフラも整っているし、世界に知られてもいて、新しい高みに前進することができる。そこへメッシが加わって、その歩みが一層速くなることは間違いないだろう」

  • Lionel Messi Inter Miami 202303Getty Images

    MLSは「とても厳しい」

    「彼がここでやろうとしていることは簡単なことではない。正気の沙汰とは思えないかもしれないが、ここに来た選手はここがタフなリーグであることに気づくだろう」と、今週、The Athleticのインタビューの中でルーニーは言った。

    「移動もあるし、さまざまな都市のさまざまな環境が待ち構えている。ピッチにはかなりのエネルギーと激しさがある」

    マンチェスター・Uのレジェンドは、MLSのスタンダードに驚いた最初の選手ではなく、最後の選手でもないだろう。メッシとバルセロナで同僚だったリキ・プッチがカンプ・ノウを去ってLAギャラクシーに移籍したことは、2022年夏の移籍市場における衝撃的な移籍のひとつであった。

    23歳のプッチは、自分の決断をこれっぽっちも後悔していない。「僕が何より気に入っているのは、このリーグのレベルが高いことだ。どこにも勝てないようなチームはひとつもなく、競争の多いリーグなんだ」と最近、プッチはスペインのスポーツ紙『AS』で語っている。

    イタリア代表のロレンツォ・インシーニェも昨年、自由移籍で12年間在籍したナポリを去って大西洋を渡り、トロントFCに加入するという決断を下し、物議を醸した。ほどなくMLSの厳しさにストレスを感じはじめ、イタリアのラジオ局、ライ・ラジオ1でこう語った。

    「フィジカルのレベルで、非常に高いものが要求される。ものすごく走らないといけないんだ。良いリーグだよ。もっともっと大きくなって、ヨーロッパの権威あるリーグに近づけるといいと思う」

    元ブラジル代表でミランとレアル・マドリーで司令塔を務めたカカは、オーランド・シティとの契約の最終年に入った2017年、アメリカに行くことを考えているヨーロッパの選手たちに警告を発した。「ここはハードなリーグだ。フィジカル的に、選手たちのプレーはみんな素晴らしい」と、アメリカのスポーツ専門チャンネルESPNで語ったのだ。

    「我々は、ヨーロッパの高いレベルでプレーすることに慣れているから、本当に大変だ。もしここに来るなら…ここで良い成績をあげたかったら、いつも100%のパフォーマンスをしなければならない」

    ここまで述べたような熱烈な支持は一見したところでは、サウジ・プロリーグに対してはC・ロナウドの根拠のない主張以外に存在していない。中東のサッカーをMLSと比較することは不可能であり、メッシは次の移籍で最後の決断を下したとき、そのことをよく知っていたのだ。

    C・ロナウドがMLSの価値を下げようとしたことは、彼が2番手になることをいかに辛く思っているかを、またしても強調しただけである。メッシがマイアミで魔法を披露しはじめれば、サウジアラビアでのC・ロナウドの余興など、すぐに後回しになるだろう。