ここまで見てきたとおり、スタディオ・オリンピコでのモウリーニョの仕事ぶりは、たとえこの夏彼がチームを去ることになっても、成功以外の何ものでもない。それこそ、最初からの典型的なモウリーニョの姿であった。モウリーニョはファンを燃え上がらせ、トロフィーをもたらしたのだ。
当然、サッカーの質を問題視しつづける人々もいる。ローマはしばしば、見ていてつまらないチームだった。かつてのフォワード、アントニオ・カッサーノが言ったような「ク○」なチームではないが、守備偏重のローマのプレーぶりは敵チームをいらだたせてきた。
レヴァークーゼンのMFケレム・デミルバイは、こんな「醜い」戦術で勝利を得ることは「恥」だと言い、フェイエノールトのアルネ・スロット監督は、ローマのプレースタイルが「結果を出す」ことは認めながら、もっと大きなサッカーを見るほうが好きだと言った。これを侮辱と受け止めたモウリーニョは、報道によると、オリンピコでフェイエノールトを破った後、スロット監督に「ナポリを見ろ」と叫んだという。
その日遅く、モウリーニョは再びさらに歴史を作りそうになっていた。自身が指摘したとおり、「歴史は消せない」のだ。彼の何が何でも勝つというメンタリティーは、彼に5つのヨーロッパの大会のトロフィーをもたらし、水曜の夜に6つ目のタイトルを得ることが出来ていれば、この最新の勝者のメダルは(もしくは監督としての彼への関心が更新されたことも)世界で三本の指に入る優秀な監督という名声を保つ証拠となっただろう。
確かに、彼が来シーズンどこにいるのかは、わからない。今いうことは不可能だ。だが、モウリーニョが最高のレベルで終わっていないことは間違いないと言える。彼のメソッドは古びておらず、彼が人間管理への「人間的な」アプローチだと呼ぶものは、依然として称賛に値する。そして、おそらくもっと重要なことに、すべてが間違っていることを証明しようとする彼の内なる炎は、まだ燃え盛っているのだ。
「私は今でもすべてを捧げている」と、モウリーニョはSkyで語った。「人は私を実際より老いていると思っているかもしれない。私の白髪を見て、本当に老人だと思っているかもしれない。だが、私はまだ若く、表舞台に立っていたいと思っている。まだまだ、これから先、何年も何年も、私の姿を見ることになるだろう」