Joao Felix AC Milan GFXGetty

ジョアン・フェリックスの戦い:チェルシーから放出されACミランを永住の地としなければ潜在能力を発揮できない恐れ

冬の移籍市場が閉まる数時間前、ACミランはチェルシーからジョアン・フェリックスを今シーズン終了までのレンタル移籍で獲得したと発表した。フェリックスが期限最終日にスタンフォード・ブリッジからサン・シーロへ移籍したことは、衝撃的ではあったが、まったく驚くべきことではなかった。

フェリックスは昨夏、アトレティコ・マドリーから4,500万ポンド(約85億円)でチェルシーに移籍したばかりだった。この移籍は、当事者である2クラブによる露骨な帳尻合わせ以外の何物でもなかった――かつてコナー・ギャラガーも、規約上はまったく別の取引ではあるが明らかに関連性のある移籍で、チェルシーからアトレティコ・マドリーに移籍した――が、フェリックスは「自分の居場所を見つけるチャンス」と捉えていた。

「チェルシーとバルセロナで2度のレンタル移籍を経験したが、ひとつの場所に永住する必要があると感じている。僕にとってチェルシー以上の場所はない」

しかし、フェリックスは間違っていた。チェルシーでの2度目のデビュー戦で得点を決めたにもかかわらず、前半のプレミアリーグではわずか3試合の出場にとどまり、出場時間のほとんどはカンファレンスリーグや国内のカップ戦だった。

それでは、ミランへの移籍がフェリックスの成長につながるのだろうか? それとも、4カ月後にはチェルシーに戻り、さらに不確かな未来に直面することになるのだろうか。

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    間違いだったアトレティコへの移籍

    10代のフェリックスがベンフィカでプロ入り初年度に20得点を挙げて一躍脚光を浴びてからすでに6年が経つ。悲しいことに、それ以来、一度たりともその記録に迫るような活躍はできていない。

    キャリア最大の決断をしくじったことも、その原因となった。2019年の夏、フェリックスには「複数のクラブ」が獲得に名乗りをあげていたが、なぜか彼は、自身の伸び伸びとしたプレースタイルに最も適さないチームを選んだ。当時、アトレティコ・マドリーはアントワーヌ・グリーズマンの後継者を探しており、フェリックスが適任だと考えていたが、ディエゴ・シメオネ監督の信念である「フォワードは事実上、守備の第一線である」という考えを、フェリックスが共有していなかったことがすぐに明らかになった。

    メトロポリターノにいた間には、いくつかの成功もあった。2020-21シーズン、アトレティコはリーグ優勝を果たしている。しかし、成功よりも失敗の方がはるかに多かった。シメオネ監督はフェリックスに対する信頼を完全に失ってしまっていたが、フェリックスは、周りから完全に信頼されていなければ成功できないと常に公言していた。

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    「献身が必要」

    フェリックスはポルトのユースに登録されていたが、2014年に同クラブを退団。「僕は自分自身を信じていたが、彼らは僕をそれほど信じていなかった。彼らは僕がピッチで活躍すると信じてくれなかった。ポルトでは楽しくなかった」と、フェリックスは『ザ・プレーヤーズ・トリビューン』に記している。

    アトレティコでもまったく同じ状況だった。フェリックスはグリーズマンと同じくらい、あるいはそれ以上に才能があったかもしれないが、努力という点ではグリーズマンには遠く及ばなかった。シメオネ監督はフェリックスの苦悩について語り、有名な警告を発した。「才能だけでなく、献身が必要だ。選手がアトレティコでプレーする理由を理解したとき、初めてすべてがうまくいく」。

    しかし、フェリックスはそれを理解することができず、シメオネ監督がバルセロナから戻ってきたグリーズマンを温かく迎え入れた一方で、フェリックスは、高額な移籍金で獲得した選手に先発の座を奪われるという屈辱を味わうこととなった。

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    時代遅れの選手

    シメオネ監督がフェリックスに対する考えをはっきりと表明したことで、当然ながらアトレティコはクラブ史上最高額の移籍金で獲得したこの選手を売りに出そうとしたが、買い手を見つけるのは非常に困難だった。そこには、報酬やアトレティコが投資した額をできるだけ回収しようと必死に試みていたという意味で、明らかに金銭的な要因が働いていた。

    フェリックスは時代遅れの選手であると思われてもいた。20年前であれば、フェリックスはおそらく中盤と前線の間で大いに活躍していただろう。守備の責任を一切負わず、ゴールを創造し決めることに集中できる自由が与えられていれば、間違いなく最高レベルで活躍していたはずだ。しかし、そうした背番号10の役割は、少なくとも本来の形では、もはや存在しない。

    昨今では、攻撃的MFやFWの全般で、相手を追い詰めるために疲れを知らずに走り回ることが求められる。これは、アトレティコで見たように、フェリックスの得意分野とは言いがたい。彼は特にアグレッシブでも、運動能力が高いわけでもない。細身で、技巧に優れたサポート・ストライカーであり、4-4-2のフォーメーションで最も活かされるだろう。しかし、4-4-2を採用するトップチームは現代ではほとんどない。

    しかし、ミランは意欲的であり、だからこそ、フェリックスのサン・シーロへの移籍は関係者全員にとってうまくいくのではないかという、非常に慎重な楽観論があるのだ。

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    ミラン移籍のカギはコンセイソン監督

    ズラタン・イブラヒモヴィッチによると、フェリックスの代理人のジョルジュ・メンデスが初めてレンタル契約を提案した際、ミランはわずか5分でその契約を決断したという。セルジオ・コンセイソン監督がその主な理由だった。「監督が彼をとても欲しがっていた」と、イブラヒモヴィッチは記者団に語った。

    コンセイソン監督はフェリックスに対して率直で誠実だった。監督は彼に、出場時間について確約はできないと告げたのだ。しかし、出場した際には必ず、彼が好む、背番号9のすぐ後ろのポジションでプレーできることを保証した。

    「それがミランに来ることを決意した理由だ」と、フェリックスは公式発表の場で認めている。「とりあえず6月までのレンタル移籍だが、これからどうなるかはわからない。今のところ、クラブ、人々、施設など、すべてにとても満足している」。

    「とても歓迎されている。一番大切なのは自分が快適に感じられる場所にいることだが、ここを快適に感じている。サッカーでは状況が変わる可能性もあるが、もしミランに残れる可能性があるなら、そうしたい」

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    たちまち結果を出す

    フェリックスは、自分には恒久的に契約する価値があることをミランに納得させるためのスタートを、これ以上ないほど素晴らしく切った。先週のコッパ・イタリアのローマ戦で、途中出場からわずか13分後に、素晴らしいダイビングヘッドで得点を決めたのだ。

    土曜のエンポリ戦で自身初のセリエA先発出場を果たした際にも、常に攻撃に絡んでいた。水曜のフェイエノールトとのチャンピオンズリーグ・プレーオフ第1戦を控え、同じく1月の大型移籍で加入したサンティアゴ・ヒメネスの背後でフェリックスがプレーし、ラファエウ・レオンとクリスチャン・プリシッチがサイドを突破する、新生ロッソ・ネリ(赤と黒)の攻撃陣に大きな期待が寄せられている。

    『コッリエーレ・デッロ・スポルト』では、今シーズン、チャンピオンズリーグのノックアウト・ステージに進出したものの、セリエAでは現在7位と安定感を欠いているミランに、フェリックスが変革をもたらす可能性があると報じている。また、フェリックスが子供の頃に憧れていた元ブラジル代表のカカとの比較も、行われている。

    もちろん、フェリックスについては以前にもGOALで話題にしたことがあり、長年にわたり、クラブや代表チームの様々な場面で印象的な活躍を見せてきた選手であるが、真のトッププレーヤーに求められるような安定したパフォーマンスを見せることができていない。そのため、ミランの誰もがまだ浮かれ過ぎるべきではないし、クラブが今シーズン終了後に彼と完全移籍の契約を結ぶかどうかはまだわからない。現時点では、レンタル契約の延長の方が可能性が高そうだ。

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    サン・シーロに居場所を見つける必要がある

    しかし、今後どうなるかはフェリックス次第である。彼はミラノで本当に幸せそうに見える。コンセイソン監督や代表でもチームメイトのレオンが重要な役割を果たしていることは間違いないが、彼は新しい環境にスムーズに溶け込んでいるようだ。

    しかし、フェリックスは行動よりも言葉のほうが目立つ選手だ。彼は常にサッカーについて大いに語ってきている。アトレティコは「キャリアを進展させる最高の条件」を提供してくれたと語り、バルセロナへの移籍は「夢が叶った」ことだったと主張し、チェルシーは「輝くには完璧な場所」だと言った。

    ミランに関する彼のコメントは、おそらくは鵜呑みにすべきではないだろう。しかし、彼が好みのポジションでレギュラーとして出場する可能性が高いという事実だけでも、おそらく、遅ればせながら彼がその潜在能力を開花させるための、これまでで最高のチャンスであることを意味する。

    ミランで「歴史を作りたい」とフェリックスは言うが、彼の第一の目標は、単にサン・シーロに落ち着くことであるべきだ。6年間の模索を経て、フェリックスには最終的な居場所を見つける必要がある。