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サッカーから喜びを奪うのはやめろ!ジェイミー・キャラガーとセレブレーション警察は間違っている。彼らがどう言おうと、アーセナルとミケル・アルテタ監督にはプレミアリーグ首位のリヴァプールを倒したことを喜ぶ権利がある

現地時間4日、アーセナルが3-1でリヴァプールに勝った試合で、レアンドロ・トロサールがゴール前に突進し、シュートの軌道を変えてまごつくアリソン・ベッカーの股間を抜いたダメ押しのゴールを決めると、ミケル・アルテタ監督は喜びを爆発させ、何かにとりつかれたかのようにテクニカルエリア中を跳ね回った。そこから大騒ぎのセレブレーションが始まった。

タイムアップの笛が吹かれるや否や、エミレーツ・スタジアムにいた全員が――もちろん、空っぽになったアウェイ側は除いて――クラブのチャント『ノース・ロンドン・フォーエバー』を大合唱した。そこへ、すぐにスタジアムDJがABBAの名曲『ブーレ・ブー』をかぶせ、若い選手たちはこの上ない上機嫌でカーニバルのように踊り狂った。

特に目立ったのはジョルジーニョで、中盤でコンビを組むデクラン・ライスと腕を組み合って踊っていた。アルテタ監督はユルゲン・クロップ監督がよくやるガッツポーズをまね、マルティン・ウーデゴールは、ゴール裏のファンの前で写真を撮ろうとしていた、長年アーセナルのカメラマンを務めるスチュアート・マクファーレン氏のカメラを奪った。

アーセナルを愛する人にとっては、天国のような姿であった。実際、試合後のアルテタ監督は歓喜に酔いしれていたし、今シーズン最高の試合をしたチームが生み出した雰囲気を称えていた。しかしながら、ガナーズがこれほど激しく喜ぶ姿を、誰もが肯定したわけではない。

  • Richard KeysGetty

    セレブレーション警察、出動!

    リチャード・キースについて何を言っても構わないが、サッカーにおける喜びの表現を取り締まろうとする彼の態度は行き過ぎである。『beinスポーツ』でアンカーを務めるキースは、試合後の分析が始まるや否や、アルテタ監督と選手たちに苦言を呈した。

    始まりは、元リヴァプールMFで解説のジェイソン・マカティアが、アーセナルの激しい喜び方について、「(ガナーズは)リーグ優勝でもしたのか?」と揶揄したことだった。この後、キーシーが色めき立った。「そうだ、よく言った、ジェイソン。どうしようか迷っていたんだけど、君が言ってくれたんで、私も言おう」

    キースは、らしからぬ風で姿勢を正し、一瞬間を置いた後、こう続けた。「確かに、今日の試合は喜ぶに値する。強豪を倒したのだし、重要な試合だった。これでタイトル争いが面白くなった。だが、私は、誰よりもアルテタ監督には、もっと正しい喜び方をしてほしかったと思う。昨年、彼を押しとどめてダッグアウトに追いやるために規則が変更される前に、彼がしつこくやっていた行動に戻ってしまっていた」

    後にキースはこう付け加えた。「私としては、ただ、リヴァプールが2点目を献上したとき、アルテタ監督にもう少し気品ある態度をとってほしかったのだ。3点目の時も、彼は度を越していた。2点もプレゼントをもらったというのに。気持ちはわかる。批判しようとは思わない。ただ、自力でゴールの上隅に決めて2-1になったのなら、わかるが、あれはプレゼント・ゴールだった。もう少し威厳が欲しかった」

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  • Jamie CarragherGetty

    キースだけではない

    キースがアルテタ監督のことで熱くなり、いらだつのは、これが初めてのことではない。彼は昨シーズン、タッチライン際での行動について非の打ち所がないモラルを強要することを、自分への個人的なミッションとしていた。アーセナルの監督に対して、繰り返し、テクニカルエリアから出て喜び過ぎると苦言を呈していたのだ。

    だが、今回はそれとは少し様子が違った。アルテタ監督への批判がカタールのテレビ番組を通じて拡散したのだ。ウーデゴールがカメラをもってふざけたことについて、『スカイスポーツ』の解説者ジェイミー・キャラガーがかみついた。「いいから通路を出ていけ。試合に勝って、勝ち点3をゲットしたんだ。君は素晴らしかった。タイトル争いに戻ってきた。黙って通路を出ていけ。私は本気の本気だ」

    キャラガーはテレビ出演が終わった後、SNSでも繰り返した。ウーデゴールに警告して、友人のニール・ウォーノックにこう言った。「楽しむことは大事だ。だが、楽しみ方にも節度は必要だ」

    ノルウェーのジャーナリスト、ヤン・オーゲ ・フィヨルトフトが反論すると、それにも良い顔をせず、こう言った。「ヤン、あれはニール・ウォーノックをネタにしたジョークだ、まったく! あのカメラマンも含めて、全員にタグ付けするなんて、よくやるな。リツイート数といいね!が欲しいだけ得られるというわけだ。あのカメラマンはちょっとやりすぎだと思ったよ。モー・サラーがリヴァプールを出ていくという君の言い分に似たところがあるな!」

  • 「私の監督を悪く言うな」

    イアン・ライトは、特にアーセナルに関しては必ず自分の意見を発信する。エミレーツ・スタジアムでの試合後の光景について、キース、キャラガー、ガリー・ネヴィルがそろって判断を下したのを聞き、ライトは『X』でガナーズを熱烈に擁護した。

    「私の監督を悪く言うな。ただゴールを喜んだだけじゃないか」と、ライトは動画で疑問を呈した。「彼は自分のチームを称賛したんだ。リヴァプールとマンチェスター・Cという強豪を倒そうとしているチームを称賛したんだ」

    「監督が喜んだから批判するのか? マルティン・ウーデゴールがカメラマンのスチュアートと写真を撮ったから批判するのか? ガナーズ万歳。あの男は5歳のときからずっとアーセナルを応援している。さもなければ、あんなバカなことは……。なぜみんな、楽しみを奪おうとするんだ? 楽しみを奪わないでくれ」

    「シーズンにはまだ先がある。アーセナルが何かするとすぐ、寄ってたかって責められる。これじゃ、喜んではいけないみたいじゃないか」

    「ワールドカップやEUROの時のイングランド代表みたいだ。イングランド代表がうまくいきはじめると、みんなが飛びかかってくる。アーセナルで起きていることと同じだ。彼らの喜びを台無しにしないでくれ。やっていることを続けてさせてくれ。何が起こってもそのままにしておいてくれ。楽しみを奪わないでくれ」

  • Jorginho Declan Rice Arsenal 2023-24Getty Images

    サッカーは感情のスポーツだ

    ライトはサッカーの「喜び」について誰よりもよく知っている。21歳でプロの世界に入り、困難な生い立ちと短期間の牢獄暮らしを経て、ストライカーとして、ここぞという時にシュートを決めたプレーは永遠に称えられるだろう。ゴールを挙げるたびに興奮した子どものように喜んでいた。

    ライトの全盛期の頃と比べて、サッカーは完全に姿を変えてしまったが、金銭的な意味合いが増したとしても、そもそも、なぜ選手、監督、ファンのすべてが美しいサッカーに酔いしれるのかを見失ってはならない。最高のサッカーには幸せをもたらす比類なき力があるのだ。

    4日の試合で勝ったのはアーセナルであり、選手たちが試合に来ていたファン――全員が毎週試合を見るために身銭を切っている――と喜ぶ権利に難癖をつけるのは、うんざりだ。これもまた、ありきたりなことを大げさに分析する現代サッカーの望ましくない傾向を示すものである。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたジョルジーニョのパフォーマンスの素晴らしさに酔いしれるのではなく、カイ・ハヴァーツをストライカーとして起用することで、どれほどガブリエウ・マルティネッリの良さが引き出されたかを問うのでもなく、試合を振り返る番組やコラムの大部分が、リヴァプールを破ったガナーズのリアクションがタイトル争いについて「我々に教えてくれる」ことについての、際限のないおしゃべりでいっぱいだ。

  • Mikel Arteta Arsenal 2023-24Getty Images

    アーセナルにとって特別な瞬間だった

    この特殊なディスカッションの最前線に立つネヴィルは、『スカイスポーツ』でこう言った。「試合後のお祝い騒ぎは、勝ち進んでタイトルを獲得しようと考えているチームのものとは思えなかった。アーセナルはタイトル争いから脱落したくないと思っているチームだと思っているし、試合後にそういう姿が見られれば安堵しただろう」。ネヴィルは後に、アーセナルの「未熟さ」も非難している。

    ネヴィルを批判する前に、彼は、多くの場合、難しい仕事を非常にうまくやる人物であると言っておこう。しかしながら、この件について彼を擁護することは難しい。確かに、明らかにアーセナルは試合に勝てて安堵していた。ここで負ければ、ユルゲン・クロップ率いる復活したレッズとの勝ち点差は8に広がっていた。しかし、首位のチームに勝ったことを喜ぶべきではないという考えは、観客から見て、どこか不思議で氷のように冷たい「タイトル獲得者の」メンタルを感じさせる、非常に馬鹿げた考えだ。アルテタ監督のチームには、勝利の後、陽気な気分になる権利が充分にあった。

    試合前、クロップのレッズは15試合負けなしで、敵を寄せ付けない雰囲気があった。おぞましい2022-23シーズンとは真逆で、夏に中盤を立て直した成果だった。ドイツ出身監督の奇跡のような仕事ぶりは大いに称賛されていた。

    一方のアルテタ監督は、ややプレッシャーを感じていた。夏に大金を費やしたにもかかわらず、シーズンの大半で優勝したマンチェスター・シティをリードしていた昨シーズンよりも、プレミアリーグの優勝争いから離れてしまっているように見られていた。

    こうした圧力鍋の中にいるような環境の中で、1月30日にノッティンガム・フォレスト戦があったせいで、この週は練習時間が短縮されていた。アーセナルがタイムアップの瞬間に喜びを爆発させたことは、少しも驚くことではない。エリート級のスポーツに関わっていない人たちには想像もできないようなレベルのストレスから、勝利によって解放されたのである。彼らとて人間であり、「はしゃぎすぎ」のリアクションは、まったく理解できることだった。

  • Gabriel Martinelli Arsenal 2023-24Getty Images

    今は支える時

    確かに、いつもなら勝利した試合の後の記者会見でもかなり落ち着いているアルテタ監督が、チームをほめちぎっていたのは事実だ。「今日の試合は非常に特別な試合だ。選手たちとスタッフは信じられないほど素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思う。スタジアムの雰囲気は今シーズン最高だった」と、監督は言った。

    「我々はこれを求めていた。レベルを上げ、それをもう一度、このリーグのすべての試合で求められることと結びつけなければならなかった。選手たちは信じられないような形で応えてくれた。選手たちは絶対的にすべてを出し切ってくれたと思う。心と魂をボールにこめてくれた。あのチームを倒すことがどれだけ難しいことかわかっていたから、私は選手たちをこの上なく誇らしく思う。選手たちがどれほど苦しまなければならなかったか、あらゆる準備をして、あれだけのことをピッチでするために、どれほどの手順を踏んだことか。選手たちに大いに感謝する」

    今すべきは、激化したタイトル争いが本筋であることを確認して、批評家たちに前言を撤回させることである。3月30日にエティハド・スタジアムで行われるアーセナル対マンチェスター・シティがタイトル争いの鍵になる試合になりそうだが、それまでにも、アルテタ監督のチームが今まで以上にうっかり足を滑らせそうな試合は数多くある。

    どうしたらよいか教えてあげようか。アーセナルが脱落したら、彼らが感情的すぎるかどうかの議論は最小限にしようじゃないか。この重大なる要素がなくなったら、サッカーは意味のない抜け殻になってしまうだろう。