Igor Thiago Brentford GFXGetty/GOAL

イゴール・チアゴ:台頭するブレントフォードの点取り屋。ハーランドとゴールデンブーツ賞を争い、ワールドカップのブラジル代表スタメンを狙う

今夏、チームを代表する攻撃のデュオだったブライアン・エンベウモとヨアヌ・ウィサ、キャプテンだったクリスティアン・ノアゴール、さらに最愛のトーマス・フランク監督が退団したブレントフォードについて、多くの人が残留争いを繰り広げることになるだろうと予想していた。セットプレーコーチからフランクの後任の監督に昇格したキース・アンドリュースには、チームを最高レベルで競争力のある状態に保つのに必要な経験がなく、選手層も薄いと見られていたのである。

しかし、アンドリュース新監督はフランク前監督と同じダイレクト・プレーに基づく戦術を採用し、チアゴをトップに据えることで、懐疑的な見方をする人々を黙らせた。24歳のチアゴはプレミアリーグの13試合で11得点を記録し、マンチェスター・シティのハーランドより3点少ないだけで、ブレントフォードを順位表の上位半分に押し上げ、エンベウモとウィサが抜けた穴をほぼ独りで埋めている。

アストン・ヴィラ、トッテナム、ニューカッスルが、いずれもチアゴの獲得に興味を持っていると報じられており、試合を重ねるごとに、ブラジル代表への初招集の可能性も高まっている。水曜にブレントフォードがアウェイのエミレーツ・スタジアムで、アーセナルのタイトル獲得の望みに大きな打撃を与えることができれば、2026年のワールドカップに向けて、チアゴがセレソンの背番号9の座を勝ち取る可能性さえあるだろう。

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    レンガ積みの仕事からブルガリア、ベルギーへ

    チアゴはブラジルのガマで育ったが、すぐにサッカーに夢中になったわけではない。「始めたのは8歳か9歳の頃だった」と、チアゴはブレントフォードの公式サイトで語った。

    「サッカーへの愛は少しずつ大きくなっていった。週末に兄が試合に連れて行ってくれたのがきっかけだった。それからクリスティアーノ・ロナウドがマンチェスター・ユナイテッドでプレーするのを見て、それが最大のきっかけになった。C・ロナウドのプレーを見て『彼みたいになりたい』と思ったんだ」

    地元のヴェレFCで技術を磨き始めたが、13歳の時に父を亡くすという悲劇に見舞われ、プロへの道は一時中断を余儀なくされた。母を支えるため食料品の配達やレンガ積みの仕事をしたが、それによって強い心を身に着けた。「男として、人間として成長できた。人生における大小あらゆることに感謝する心を育めたんだ。今、振り返れば、すべてに恵まれていたと実感できる」。

    18歳でクルゼイロからチャンスを与えられたチアゴは、64試合で10得点を記録し、ヨーロッパの注目を集めた。2022年3月にブルガリアのルドゴレツに移籍すると、新大陸での生活に素早く適応した。

    ルドゴレツがリーグ連覇を達成し、ブルガリアカップとスーパーカップでも優勝する中で、チアゴは合計32得点とアシストを記録した。2023年夏にはルドゴレツのチームには収まりきれない選手となり、ベルギーのクルブ・ブルッヘに800万ユーロ(約14億円)で売却した。これはブルガリアのトップリーグ史上、最高額である。

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    「大きな可能性」

    チアゴはベルギーのリーグに1シーズンしかいなかったが、そのシーズンだけでクルブ・ブルッヘの投資を10倍にして返した。2023-24シーズン、全公式戦の通算55試合で29得点を記録。そのうち18得点は12月から1月にかけての爆発的な得点ラッシュで生まれたもので、クルブ・ブルッヘはプロリーグ優勝を果たし、カンファレンスリーグの準決勝に進出した。

    チアゴはカンファレンスリーグで年間最優秀若手選手賞を受賞。当時の指揮官ロニー・デイラはチアゴの影響力に感嘆した。

    「チアゴは我々がこれまで持っていなかったものをもたらしてくれる。相手DFは彼との対決を嫌がる。休むことなくプレスをかけ、常に走り回り、相手を蹴り飛ばす。それだけでなく、ピッチの上でもロッカールームでも最高の男だ。トップクラスのクラブでプレーする能力は十分にある」

    そんな評価に見合う活躍の場をチアゴに与えたのはブレントフォードだった。同じ年の夏、クラブの移籍金記録を更新する3,000万ポンド(約61億円)でGテック・コミュニティ・スタジアムに迎え入れたのである。当時のフランク監督はトニーの退団を受け入れた後、チアゴの獲得をクラブの「積極的な動き」と評し、こう付け加えた。

    「チアゴは非常に期待できるストライカーで、我々のチームが求める役割にぴったりだ。勤勉で、プレスが非常に得意で、フィジカルも強く、ボックス内でのプレーが非常に優れているし、つなぎのプレーもできる。チアゴには大きな可能性がある」

    ところが、チアゴの可能性が開花する前に、残酷な負傷が彼を襲い、イングランドでのキャリアは試練に満ちたスタートとなった。

  • AFC Wimbledon v Brentford - Pre-Season FriendlyGetty Images Sport

    学びのシーズン

    ブレントフォードでの初戦となった、プレシーズンマッチのAFCウィンブルドン戦で、チームは5-2で勝利したが、チアゴは半月板損傷を負い、ただちに手術を受けた。そのため、2024-25シーズンのプレミアリーグは開幕から11試合を欠場し、公式戦デビューは、0-0で引き分けた11月23日のエヴァートン戦まで持ち越しとなった。

    その後、チアゴはレスター・シティ戦とアストン・ヴィラ戦で再び途中出場を果たし、4-2で勝利したGテック・スタジアムでのニューカッスル戦で初先発すると、印象的なプレーを見せた。しかし膝の感染症を患い再び離脱。当時のフランク監督はこれに苛立ちを隠せなかった。

    「関節の感染症にかかるリスクは非常に、非常に低い。だがブレントフォードの選手となると話は別だ。2%の確率が98%に跳ね上がる」

    チアゴが復帰したのは5月上旬で、ブレントフォードのリーグ戦最終4試合に途中出場するのが精一杯だった。外から見れば夢の移籍が悪夢に変わったように映ったが、驚くべきことに本人は将来への自信につながる十分に前向きな要素を見出していた。

    「自分の身体がどう反応するのかをあらゆる部分について学ぶ、大きな学びのシーズンだった。出場できないのは厳しかったが、身体の仕組みを理解する良い機会となった。正直、イングランドへの移籍は予想以上に大変だろうと思っていたが、すべてが順調に進んだ」

  • Brentford v Newcastle United - Premier LeagueGetty Images Sport

    止めようのない存在

    チアゴは、ポルトガルのジル・ヴィセンテとのプレシーズンマッチでアンドリュース監督の下での初得点を決めると、プレミアリーグでの新シーズンの開幕戦となるノッティンガム・フォレスト戦でPKを決め、ブレントフォードでの公式戦初得点を記録。チームは3-1で勝利した。2点目を決めたのは昇格したばかりのサンダーランドとの試合で、フランク・オンエカのクロスをDF2人の間から抜け出してヘディングで決め、2-1の逆転勝利に貢献した。しかし、9月末の時点で、ブレントフォードは勝ち点15は取れるはずだったところをわずか4しか獲得できず、17位に低迷していた。

    しかし、アンドリュース監督のチームは、Gテックにマンチェスター・ユナイテッドを迎えた試合で流れを変えた。ブレントフォードは3-1のスリリングな番狂わせを演じ、チアゴがその試合のスターとなったのだ。前半20分までに、稲妻のようなハーフボレーをゴール上隅に叩き込んで先制点を決めると、見事な反応で至近距離からのシュートで2点目を決め、さらにターゲットマンとしてのスキルを発揮して、マンチェスター・Uの守備を圧倒し、試合中ずっと並外れた活躍を見せた。

    それ以来、チアゴは不可抗力のように止めようのない存在となっている。10月にはリヴァプール戦で決勝点を決め、ニューカッスル戦とバーンリー戦では2試合連続で2得点を挙げた。試合の展開が思わしくないときでも、この長身ストライカーは常に大きな脅威となる。土曜の試合でバーンリーはそれを身をもって痛感した。試合終了10分前、チアゴはまたしても存在感を示した。まずPKを冷静に決め、続いてジョーダン・ヘンダーソンのクロスを、ディフレクションの助けはあったとは言えゴールマウスに叩きこみ、決定的な2点目を決めたのである。

    チアゴは、ヘンダーソンや、攻撃仲間であるダンゴ・ワッタラ、ケヴィン・シャーデとも良好な関係を築いており、そのことがチームに大きな成果をもたらしている。チアゴは地上でも空中でも、ゴールマウスが見えれば確実に決めるが、あらゆる機会を捉えて他の選手をプレーに巻き込もうとする、無私無欲なセンターフォワードでもあるのだ。

    「我々が掲げる理念のすべてが、チアゴには豊富に見られる」と、バーンリーに勝利した後、アンドリュース監督は語った。「彼のプレーが、私は大好きだ」。

  • West Ham United v Brentford - Premier LeagueGetty Images Sport

    視野に捉える記録

    チアゴは今シーズンのプレミアリーグで最多のPK成功数(5)を記録しているが、流れからの得点数でもハーランドとブライトンのダニー・ウェルベックに次いで3位につけている。さらに枠内シュート数(19)では2位と、驚異的な好調が持続されることを示唆する統計データもある。

    ファンからスパンダー・バレエの象徴的な楽曲「ゴールド」を元にしたチャントが歌われるようになったブレントフォードの新たなカリスマは、信じられないことに、現在はロベルト・フィルミーノ、ガブリエウ・マルティネッリ、マテウス・クーニャが共有している、プレミアリーグの1シーズンにおけるブラジル出身選手の最多得点記録(15)に、あと4得点で並ぶところまで来ている。ブレントフォードはまだ25試合を残していることを考えると、チアゴがその記録を更新しなかったら、大きな驚きとなるだろう。彼が代表チームでマルティネッリやクーニャと肩を並べる日も、そう遠くないかもしれない。実際、アンドリュース監督は、ブラジル代表のカルロ・アンチェロッティ監督と、チアゴの成長について話し合うために連絡を取っていることをすでに認めている。

    「チアゴを指導し、一緒にいることは楽しい。チアゴはピッチの上で過ごす一瞬一瞬を大切にし、試合では真の競争者となる。ブラジルから連絡があった。彼らはチアゴの才能をよく認識してある。チアゴにとって大きな夢だ。だから、彼がいつかその夢を実現するために、我々が協力できることを願っている」

  • Brentford v Burnley - Premier LeagueGetty Images Sport

    ブラジル代表の最良の選択肢か

    アンチェロッティ監督は、他の国では滅諦に見られないほどFWの層が厚いという恵まれた環境にある。クーニャやマルティネッリに加え、ヴィニシウス・ジュニオール、ハフィーニャ、ロドリゴといった有名選手たちに加え、チェルシーの天才少年エステヴァンが出場時間を争っているのだ。また、ケガに悩まされているレジェンド、ネイマールも、今後数カ月でサントスで調子を取り戻せれば、ワールドカップの代表メンバー入りを果たす可能性がわずかながら残っている。

    しかし、それはチアゴの夢が現実的ではないという意味ではない。リシャルリソンとジョアン・ペドロがそれぞれトッテナムとチェルシーで安定感を示せずにいること、元ボタフォゴのイゴール・ジェズスがノッティンガム・フォレストでまだ存在感を示せていないことを考えれば、ブラジル代表の先発ストライカーの座をめぐる争いは、まだまったく白紙の状態なのだ。

    アンチェロッティ監督は来年の夏、偽の背番号9を擁する戦術を選択する可能性もあり、現状ではチアゴが最良の選択肢かもしれない。ブラジルは「ジョガ・ボニート(美しくプレーする)」モードに切り替えても、拡張された大会で格下のチームを圧倒できるだろう。しかし、より組織的な相手に対しては、チアゴの存在が勝敗を分ける鍵となる。チアゴはひとたびボールを持つと確実にキープし、誤った判断をすることは滅多にない。

    チアゴの空間認識能力もまた、過小評価されている要素である。チアゴは直感的に、いつどこへ突破すべきかを理解している。パスの供給役に数多くのワールドクラスの選手たちがいる中で、北米で大暴れする可能性を秘めているのだ。もちろん、サッカー界で最も権威ある舞台とそれに伴うプレッシャーにチアゴがどう対応するかは予測不可能だが、彼は揺るぎない自信に支えられ、プロになってからずっと期待を上回ってきた。

    「それは最大の目標だ」と、ブラジル代表招集の可能性を問われたチアゴは断言した。「いつか必ず到達する、そうなった瞬間こそ、僕は成功したことになる」。このエリートとしてのメンタリティがあれば、何事も可能となるだろう。

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