Pogba Ronaldo Neymar splitGetty Images

成功か失敗か。ベイル、ポグバ、ロナウド、ネイマール…1億ユーロ超えの歴代移籍を振り返る

この夏、移籍市場からあぶれても大金のかかるサッカー界のトップスターが真剣にサウジ・プロリーグへの移籍を考えるようになって、超高額の資金が費やされている。1億ユーロ(約158億円)超えの移籍でさえ見受けられるのだ。

レアル・マドリーに加入したジュード・ベリンガムは既に活躍しており、デクラン・ライスとハリー・ケインも高額で新天地へ移籍。直近では、モイセス・カイセドが英国レコードでチェルシー入りした。こうした選手たちをめぐって賽を振ってきたクラブは、彼らの獲得が賢い選択だったことを証明すべく、あらゆることを乗り越えていくだろうが、歴史はそうしたクラブの味方になっているのだろうか。

GOALは1億ユーロ(約158億円)超えの移籍が過去、どのようなものだったことを検証する。

  • Gareth Bale Real Madrid 2018Getty Images

    成功:ガレス・ベイル(トッテナム⇒レアル・マドリー)1億100万ユーロ

    ガレス・ベイルはレアル・マドリーのファンにあまねく人気だったわけではないが、彼がスペインの首都で過ごした時間は間違いなく成功だった。8年間の在籍中に5度のチャンピオンズリーグ優勝を果たし、2018年の決勝でのリヴァプール戦では驚きのオーバーヘッドでシュートを決め、チームに決勝点をもたらした。

    スペイン国内でも多くの成功をおさめ、チームを3度のラ・リーガ制覇に導き、2014年にはコパ・デル・レイで優勝。この試合でも、このウェールズ代表はDFマルク・バルトラを突破し、GKホセ・ピントの脇に力強くシュートを放ってバルセロナのゴールに叩きこみ、決勝点となるカリスマ的なゴールを決めたのだった。

    これほど素晴らしい活躍をしたにも関わらず、ベイルの悪口を言うマドリディスタもいる。しかしながら、彼はゴルフを愛しすぎ、スペイン語の勉強が好きではないように思われ、ケガで実力を発揮しにくくなると長期間チームを離脱したため、サポーターたちとの関係が酸っぱくなってしまったのだった。

    それでも、このリストでは大成功に分類されるだろう。

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  • Paul Pogba Man Utd Getty Images

    失敗:ポール・ポグバ(ユヴェントス⇒マンチェスター・ユナイテッド)1億500万ユーロ

    後ろは決して振り返るものではないとよく言われるが、振り返ってみればポール・ポグバとマンチェスター・Uは、双方ともこのアドバイスを聞けばよかったと思うことだろう。赤い悪魔のユース出身であるポグバは、ユヴェントスでの4年間で、世界最高のミッドフィルダーのひとりとしての地位を確立していた。

    オールド・トラッフォードに戻った最初のシーズンは特に悪いところはなかったが、2017-18シーズンと2018-19シーズンは、大活躍とはこういうことだというものを見せつけた。いつも完璧であったわけではものの、数多くの魔法のような瞬間を生みだし、赤い悪魔が契約したのはエリート中のエリートだったと確信させたのだった。

    ところが、その後すべてが下降していった。翌シーズンはケガのため、プレミアリーグで16試合しか出場できず、再び全盛期を取り戻すことはできなかった。2度目のマンチェスター・U所属期間は散々なものとなり、ワールドカップで優勝したにもかかわらず、プロ意識の欠如が見られると非難されるようになる。

    2022年、再びフリー移籍で古巣に。この場合はユヴェントスに戻ったが事態はさらに悪化し、ケガのため、これまでのところボールを蹴ることすらままならないでいる。

  • Neymar PSG Getty Images

    失敗:ネイマール(バルセロナ⇒パリ・サンジェルマン)2億2200万ユーロ

    2017年にバルセロナを出てPSGに行くことにしたネイマールの決心は、歴代の移籍の中で最も物議を醸し、論争を呼んだ移籍のひとつである。クラブと選手の双方にとって失敗だったという人もいる。フランスにいる間に、新チームのためのチャンピオンズリーグ制覇や自身のバロンドール獲得に失敗したことは、カンプ・ノウに残るべき選手ではなかったことの証拠になるとの指摘もある。

    だからと言って、ネイマールの素晴らしいゴール記録を無視していいものだろうか。2023年、ネイマールはアル・ヒラルに移籍したが、PSGでは173試合に出場して118得点を記録。リーグ・アンでの得点率は突出している。

    だが、ネイマールはもっとすごいことができたはずだという感情を払しょくすることは難しい。PSG加入後、絶えずつきまとった多くのしつこいケガのせいか、はたまたパルク・デ・プランスでのやや投げやりな態度のせいか、ネイマールはPSG時代のリーグ戦で1シーズン平均22試合しか出場しなかった。

    これは、世界記録的な金額に充分見合う成果だろうか。おそらくそんなことはないだろう。

  • Ousmane Dembele Barcelona Getty Images

    失敗:ウスマン・デンベレ(ボルシア・ドルトムント⇒バルセロナ)1億3500万ユーロ(約213億円)

    ネイマールの代わりを務めることは決して簡単ではないが、バルセロナがウスマン・デンベレに乗ったのは間違いなく失敗だった。その才能は決して問題なく、バルセロナで活躍した時期もあったが、デンベレのバルセロナ時代は激しい矛盾に満ちたものだった。

    バルサにいた間、デンベレはおそろしく態度が悪いとの報道が何度もあった。ある情報筋はファストフードの大食いを競うような食事をしていて、プロのアスリートにあるまじきものだったという。さらに、ビデオゲームをやりすぎるとも言われていた。

    ピッチの上でのいい加減なパフォーマンスだけではクラブが愛想をつかすことはなかったとしても、後にデンベレは非常に痛みを伴うようなやり方で契約交渉を長引かせ、結果としてもう1シーズンの契約を取り付けた。だが、やはり無意味だったそのシーズンを最後に、ひっそりとPSGに移籍していった。

  • Kylian Mbappe PSG Getty Images

    成功:キリアン・エンバペ(モナコ⇒パリ・サンジェルマン)1億8000万ユーロ

    ピッチ外での大騒動を忘れるならば、キリアン・エンバペのPSGへの移籍は大成功だった。このフォワードは毎シーズン、きわめて驚異的なペースで得点を決め、まだ優勝には届いていないとしても、チームをチャンピオンズリーグで大いなるところまで導いてきた。

    だが、サッカーを離れたエンバペには少し悪夢的なところがある。過去にはクラブを公然と批判したことがあるし、ずっと以前からレアル・マドリーに行きたいと言いつづけていることは、これまでの監督たちの悩みの種となっている。

    だが、これほどの結果を出していれば、エゴ全開の騒動となろうと多少のゴタゴタは許容範囲だろう。だからこそ、これまでPSGは彼の意向にこれほど多く沿ってきたのだ。

  • Philippe Coutinho Barcelona Getty Images

    失敗:フィリペ・コウチーニョ(リヴァプール⇒バルセロナ)1億3500万ユーロ

    リヴァプールでのフィリペ・コウチーニョは世界的な選手だとみられていたが、バルセロナではそうしたパフォーマンスを再現することがまったくできなかった。2018年1月にカンプ・ノウへやってきたときは、みずから夢がかなった移籍だと言っていたにもかかわらず。

    たちまちファンは、そんなプレーでは満足できないことをコウチーニョに知らしめ、たった1シーズンいただけで、レンタル移籍でバイエルン・ミュンヘンへ出ていったのだった。なんという異常な運命のいたずらか、チャンピオンズリーグの準々決勝でバルセロナが8対2という屈辱のスコアでバイエルンに敗れたとき、コウチーニョは籍を置くクラブを敵に回して2得点を決めたのであった。

    2020年にバルサに戻った後も輝きを放つことはできず、アストン・ヴィラにレンタル移籍し、2022年5月に完全移籍することとなった。なじみのプレミアリーグの環境に戻ったにもかかわらず、コウチーニョはもがきつづけており、ウナイ・エメリ監督のもとでの未来を描けないでいる。

  • Cristiano Ronaldo Juventus Getty Images

    成功:クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー⇒ユヴェントス)1億1700万ユーロ

    クリスティアーノ・ロナウドは大金での移籍には慣れていたが、ユヴェントスは2018年、この伝説のフォワードをトリノに呼ぶため、銀行がつぶれるほどの大金を積んだ。この移籍はクラブ悲願のチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたいというアニェッリ家族の願いにより実現したのであった。

    そのことを見るならば、C・ロナウドの移籍は失敗だった。だが、ユヴェントス在籍中の3シーズンにこれ以上のものを老貴婦人にもたらすことはできなかったと、かなり強く主張することができる。

    3シーズンのうち2シーズンで、C・ロナウドはセリエAで1試合平均1得点を奪取。2019年と2020年にチームを楽々と優勝に導き、2021年にはコッパ・イタリアを制覇した。チャンピオンズリーグでの苦戦はイライラが募るものだったが、ビッチ上での貢献に加え、C・ロナウドとの契約がもたらした商業的な利益を考えればユヴェントスは良い取引をしたと言えよう。

  • Eden Hazard Real Madrid 2022-23Getty Images

    失敗:エデン・アザール(チェルシー⇒レアル・マドリー)1億1500万ユーロ

    レアル・マドリーでのエデン・アザールの未来は、彼が最初のプレシーズンに5キロの体重オーバーで到着したときに決まっていた。アザールの言い分はこうだ。「休暇なんだから、休暇らしくしたまでだ」。ロス・ブランコスの記録的契約はこんな大胆な始まりをしたが、アザールが気の抜けた態度を取り返すようなパフォーマンスができそうもないことがほどなく判明する。

    レアル・マドリーでのアザールの記録は実に厳しいものだった。4シーズンで出場した公式戦はわずか76試合で、7得点。アシストは悲しいかな、たったの12であった。

    レアル・マドリーでの最後のシーズンだった2022-23シーズンは、わずか10試合しかピッチに立てなかった。カルロ・アンチェロッティ監督は、すべてがうまくいっていると世界に信じさせようとしたが、この夏レアル・マドリーがあらゆる手を使ってアザールを放出しようとしたことは明らかだった。その結果、アザールは契約を期日より早く終わらせることに同意した。

  • Antoine Griezmann Barcelona Getty Images

    失敗:アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリー⇒バルセロナ)1億2000万ユーロ

    アントワーヌ・グリーズマンは、結果としてスペインの首都を去ってバルセロナに行く選択をする前の夏、退屈な短編ドキュメンタリー番組「ラ・デシジョン(決意)」に出演し、自分の未来はアトレティコ・マドリーにあると誓約しながら、ひどい大騒ぎとともにアトレティコ・マドリーを出ていった。

    こんな大騒ぎの後、彼のカタルーニャ時代はよく言って平凡だった。最初のシーズンのラ・リーガで、たった9得点しかできなかったのだ。2020-21シーズンはわずかに良い成績だったが、バルセロナの財政問題が悪循環に陥っていくと、グリーズマンは最初にまな板に乗るひとりとなった。

    皮肉なことに、グリーズマンはアトレティコに戻ることとなり、最初はレンタルで、後に完全移籍に同意した。バルサでの彼は完全な失敗だったが、あの値札ならもっと多くが期待されるのは当然だった。

  • Joao Felix Atletico Madrid Getty Images

    失敗:ジョアン・フェリックス(ベンフィカ⇒アトレティコ・マドリー)1億2700万ユーロ

    ディエゴ・シメオネ監督は、1億ユーロ(約158億円)を使って自身の監督としてのスタイルや戦術システムにまったく合わない選手を獲得してしまった。

    シメオネ監督は歴代最高の守備的な監督のひとりであり、何年も前から強靭なアトレティコ・マドリーで奇跡を起こしてきていた。厳しい環境の中では、気まぐれな司令塔たちが成長に苦労するのはよくあることだ。だが、センセーションを巻き起こした10代のジョアン・フェリックスに期待するのをやめようとはしなかった。

    しばらくの間、両当事者はこの移籍はうまくいくだろうと軽く考えようとしていたし、2021-22シーズンにはフェリックスが本調子を発揮しはじめた兆候もいくつかあった。しかしながら、その後、現実はあっという間に馬脚を現した。

    シメオネ監督と仲たがいしたフェリックスは2022-23シーズンの後半、チェルシーにレンタル移籍で出された。その後復帰し、完全移籍でクラブを出る方法を必死で探している。

  • Romelu Lukaku Chelsea 2021Getty Images

    失敗:ロメル・ルカク(インテル⇒チェルシー)1億1300万ユーロ

    これもまた、古巣への復帰は要注意という話だ。マンチェスター・ユナイテッドで浮き沈みの激しい時を過ごした後、ロメル・ルカクは最終的にインテルで笑顔満開の活躍をした。ラウタロ・マルティネスと最高の関係を築きあげ、2021年にインテルをセリエA優勝に導いたのだ。

    ルカクは、そのシーズンの終盤にチェルシーへ移籍させられ意気消沈した。この移籍はうまくいかなかった。当初の計画は充分に果たされ、プレミアリーグでの最初の3試合で3得点を記録した。だが、ほどなくゴールは枯渇。酷評の連続で、12月まで断続的にベンチを温めることになっていった。

    この間ルカクが言葉の選択を間違えたことが、ひどくまずい形で表面化した。ルカクは、スカイスポーツ・イタリアでインテルに戻りたいという望みを暴露し、ブルーズの当時のトーマス・トゥヘル監督を公然と批判したのである。西部ロンドンでの不安定な生活の始まりを考えると、きわめて大胆な行動であった。

    このインタビューが表面化した後、チェルシーのリーグ戦でわずか5得点しか上積みすることができず、2022-23シーズンにインテルへレンタル移籍に出させることとなった。信じがたいことに、ユヴェントスへの移籍の可能性を探ろうとしてファンの機嫌まで損ねることとなり、宙ぶらりんな事態に陥っている。

  • Jack Grealish Manchester City drink 2022-23Getty Images

    成功:ジャック・グリーリッシュ(アストン・ヴィラ⇒マンチェスター・シティ)1億1750万ユーロ

    ジャック・グリーリッシュのマンチェスター・シティへの移籍が、イングランドの移籍記録を更新するものであることは確かだが、いくつかの疑問符がついていた。このイングランド代表選手はエティハドでのデビューシーズン、自身を懐疑的に見ていた人々が間違っていたことを証明することができず、プレミアリーグで3得点3アシストしかできなかった。

    しかしながら、彼以前の選手たちがそうだったように、グリーリッシュはペップ・グアルディオラ監督の要求に合わせるのに、少し時間が必要だっただけだった。2022-23シーズン、このウイングは値札に相応しい価値を示し始めた。

    グリーリッシュは、グアルディオラ監督の3冠達成の重要な歯車であり、シーズンの終わりが近づくにつれて賛辞を浴びることとなった。

  • Diogo Jota Enzo Fernandez Chelsea Liverpool 2023-24Getty

    保留:エンソ・フェルナンデス(ベンフィカ⇒チェルシー)1億2100万ユーロ

    ベンフィカがそのノウハウを知っていることがひとつあるとしたら、それは所属選手たちの売り方である。フェリックスを売って大金を稼いだ数年後、今度はエンソ・フェルナンデスをチェルシーに売った。当時チェルシーは是が非でも中盤を強化したがっていた。

    非常に高額で、ブルーズは確かに払い過ぎのようであったが、長い目で見ればそれだけの価値があるのかどうかを判断するのは時期尚早だ。昨シーズン、チェルシーは機能不全に陥り、フェルナンデスの能力を読み取ることは出来なかった。マウリシオ・ポチェッティーノ監督の計画にフィットするかどうかを判断する必要がある。

    ただし、相当額の大金で加入してきた選手に良いパフォーマンスを期待するのは当然だ。フェルナンデスは西部ロンドンで、遅かれ早かれ結果を出すことが求められている。