振り返れば、とてつもないスピードで直近1年間を駆け上がってきた。
川崎F・U-18から2023年にトップチームに昇格するもリーグ戦出場はなし。翌24年はJ3の福島ユナイテッドで武者修行した。福島ではシーズンを通して主力として活躍し、経験を積む。迎えた今季は復帰した川崎Fで出場機会を掴み、AFCアジアチャンピオンズリーグでも印象的なプレーを見せた。そうした積み重ねが評価され、7月のE-1選手権でA代表デビューも果たした。まさに、右肩上がりで成長を続けている。
実際、今大会もターンオーバーで休養したグループステージ第3戦には出場しなかったが、このフランス戦だけではなく、エジプトとの開幕戦、チリとの第2戦で技術力の高さを存分に披露。相手の逆をうまく取りながらボールを運び、攻撃の中心として欠かせない働きを見せた。
そのパフォーマンスには海外クラブのスカウトも注目。実際に現地に訪れていたスペインの強豪・バレンシアのGMが「次にボールを受ける選手がやりやすいようにプレーしている」と高い評価を与えるなど、爪痕を残せたことは間違いない。本人も「最後はこんな形になってしまった」と前置きしつつ、「自信にはなる大会だった」と一定の手応えも語っている。
しかし、一方で課題が見つかったのも事実ではある。フィジカル的な強さはまだまだで、“8番”としてプレーするのであれば物足りない。ラウンド16で大会を終えてしまったことで、真の強さを持った世界の強豪と対戦できず、もう一つ上の強度を持った相手にどこまでやれるのかを確認できなかった。
「この悔しさを消化するというか、やり返すためには、もう1回世界大会の舞台に帰って来なきゃいけない」
身をもって知った勝負の厳しさ。その経験が今後のサッカー人生において、血となり肉となる。敗戦から味わう悔しさや、だからこそ見えた景色もあっただろう。逆に言えば、チリに来なければ、気付けなかったことでもある。
「これが今の自分の実力」
そう言ってスタジアムを後にした日本の10番は、新たな未来を紡ぐためにここからリスタートを切る。
▶U-20W杯日本代表コラム:令和の“調子乗り世代”の舞台裏