U-20W杯はインターナショナルマッチウィーク外に開催される関係から一戦級の選手が参加できない。さらに今大会は、クラブワールドカップが6月に開催された影響で、リーグ戦のシーズン中である9月末開幕になった経緯も重なって、今まで以上にスター候補生の参戦が激減している。事実、FIFAのテクニカルスタディグループなどがクオリティの低下について口にするケースもあり、以前よりもレベルに関して疑問符が付いているのも事実だ。
そんな状況下で、日本は各国から称賛されるチームとしてのクオリティを発揮している。後藤啓介(シント=トロイデン)と塩貝健人(NEC)というロス五輪世代を代表するストライカーの参戦は叶わなかったが、プレーの質は極めて高い。それを可能にしているのが、彼らのメンタリティーだろう。今大会の選手たちを一言で表現するなら、“怖いもの知らず”。チャレンジャー精神が旺盛で、一つの失敗に下を向くこともない。
「若い世代なのでミスをする時もあるけど、成長するためのパワーに変えていくことができる」。その強気のメンタリティーは船越監督も認めるところである。
そんな彼らのカラーが色濃く出たのは開催国・チリとの第2戦だ。 会場には4万2千人以上が詰めかけ、9割9分がチリサポーター。スタジアムを埋め尽くした敵地戦で、雰囲気に飲まれることもなく、序盤からアグレッシブに戦った。相手に攻め込まれる時間帯があり、前半半ばには先制のチャンスであるPKをFW高岡伶颯(ヴァランシエンヌ)が失敗し、イヤな雰囲気が漂ったが、選手たちは意に介さなかった。DF市原吏音(大宮アルディージャ)は振り返る。
「前半も残り10分ぐらいの(PK失敗)で、観客がかなり沸いていてちょっとイヤだなとは思いました。でも、とりあえず『前半は0-0でオッケー』と中で話していましたし、伶颯自身は気持ち的に苦しいかもしれないけど、チームとしては全然気にしていなかったので。みんなでやることを合わせようとしていたので、問題はなかったです」
結果として後半に2点を奪って勝ち切り、最終戦を待たずして突破が確定。あれだけのアウェイの空気を感じながらも動じず、むしろ敵地の声援を楽しむ余裕すらあった。