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イングランド代表が“EURO2024最強のラスボス”スペイン代表を倒すためには?必要な6つのポイントを整理

イングランド代表は、なんとかEURO2024の決勝戦にたどり着いた。大舞台でようやく歯車が噛み合いだし、悲願の初優勝まであと一歩まで迫っている。しかし、ファイナルに立ちはだかるのは今大会最強の“ラスボス”、スペイン代表だ。

スリー・ライオンズは伝統的に、優勢と見られた試合でも最後の最後でつまづくことが多かった。聖地ウェンブリーでの前回大会決勝のイタリア戦(PK戦で敗れる)、2022年ワールドカップのフランス戦(1-2)さえもそうだった。

しかし、14日にベルリンで行われる今回の決勝戦は違う。優勝大本命は、明らかにスペインだ。今大会全勝で、最多得点&最少失点。強豪との対戦が続いたものの、クロアチア、イタリア、ドイツ、フランスを次々にねじ伏せてきた。次世代のスーパースターであるラミン・ヤマル、世界最高のMFにして優勝請負人のロドリなど、チームの至るとこに特別な才能を擁する今大会最高のチームと言っていいだろう。

一方のイングランドだが、これまで散々なパフォーマンスを強烈に批判されながらも、決勝トーナメント3試合はすべて逆転勝利。グループステージは確かに目も当てられなかったが、勝負強さを確実に発揮し、準決勝オランダ戦(2-1)で今大会最高のプレーを見せている。チーム状態が上向きなことは確かだ。

しかしながら、スペインに及ばないのは確かだろう。だからこそ彼らが悲願を達成するためには、ガレス・サウスゲート体制の8年間でのベストパフォーマンスが必須だ。58年に及ぶ「無冠の傷」を完全に癒やすため、イングランドに必要なキーポイントをまとめていく。

  • Unai SimonGetty Images

    GKウナイ・シモンを狙え

    スペイン代表GKウナイ・シモンは、これまで3つの主要大会連続で正守護神としてプレーしてきた。だが、いずれの大会でも重大なミスを犯している。EURO2020ではクロアチア戦でバックパスの処理を失敗し、2022年ワールドカップでは連携ミスで日本代表に勝利を譲ってしまった。今大会のクロアチア戦でも、軽率なプレーからクロアチアにPKを与えている。そのPKをストップし、今大会を通じて堅実なプレーを見せてはいるが、ポゼッション時にも窮屈そうにハイリスクな選択を続けている。

    イングランドが強烈なプレッシャーをかけることができれば、ミスを誘発させられるかもしれない。今大会はフィル・フォーデンがハイプレスを牽引しているが、サウスゲートは決勝戦で相手守護神をターゲットにすべきだろう。

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  • Rodri Spain 2024Getty Images

    ロドリを孤立させよ

    ヤマルやニコ・ウィリアムズの素晴らしいプレーが大きな注目を集めているが、スペインの最重要選手はやはりロドリである。ピッチ中央で試合を掌握し、マンチェスター・シティで見せてきたような圧巻のパフォーマンスを続けている。彼の不敗神話は強烈であり、マンチェスター・Cは彼が出場した試合の内、18カ月間で1度しか敗れていない。

    だが、イングランドにはそんなロドリとマイチに練習をともにしてきた選手が3人いる。また、唯一敗れたFAカップ決勝でゴールを奪ったコビー・メイヌーもいるのだ。その試合でマンチェスター・ユナイテッドはブルーノ・フェルナンデス偽9番として配置し、ロドリを孤立させることに成功している。

    同じようにロドリを抑える必要があるが、やや機動力に欠けるハリー・ケインには主にかもしれない。だが、ジュード・ベリンガムなら可能だろう。バロンドールの直接のライバルを抑えることは、彼に特別なモチベーションを与えるかもしれない。

  • Ivan Toney England Euro 2024Getty

    PK戦に持ちこめ

    これまでのイングランドなら「PK戦を狙った試合をしろ」というのは推奨される策ではない。だが、サウスゲートはPK戦の成績を大幅に改善してきた。主要大会で過去に4度PK戦を経験し、その3つで勝利を収めている。またスペインが相手となれば、1996年のEURO準決勝でPK戦の末に勝利しており、その時サウスゲートは選手としてピッチに立っている。

    一方でスペインは、PK戦での結果は複雑だ。2023年のネーションズリーグ決勝ではPK戦を制して優勝したものの、直近の3つの主要大会はすべてPK戦で敗れている。最悪だったのは2022年ワールドカップ、モロッコとのPK戦で3人連続外してしまった。

    イングランドは今大会も、サウスゲートの采配によりスイスとの準々決勝でもPK戦の末に勝利した。自信を深めているはずだろう。GKジョーダン・ピックフォードも、決勝戦へ向けてボトルに新たな名前をメモしているに違いない。

  • Cole Palmer Ollie Watkins Euro 2024GOAL/Getty

    交代選手をうまく使え

    全体的にスペインの方が良いチームであることは間違いないが、選手層に関してはイングランドに分があることは確かだ。その好例がオランダ戦であり、途中出場したコール・パーマーとオリー・ワトキンスが試合を決めた。この2人だけで、昨シーズンのプレミアリーグで合計66得点を奪っている。またスロバキア戦ではイヴァン・トニーが重要な貢献を見せ、エベレチ・エゼもスイス戦で途中出場ながら果敢なプレーをした。

    スペインにも信頼できる控え選手がおり、ドイツ戦ではミケル・メリーノが途中出場から決勝点を奪っているが、イングランドが頼りにするほどのスター選手はいないだろう。サウスゲートはすべての選択肢をフル活用すべきである。

  • Lamine Yamal Spain 2024Getty Images

    ヤマルを抑えろ

    フランスとの準決勝は、ラミン・ヤマルがいかに危険な存在感を世界に示すものだった。イングランドは、将来のスーパースターを十分にリスペクトする必要がある。彼を孤立させ、動きを制限し、時には手荒い歓迎をすべきだろう。

    イングランドが決勝トーナメントから採用する3-4-3であれば、ヤマルの近くに選手を置くことが可能だ。再びキーラン・トリッピアーを左に置き、スペースを与えないことも可能だろう。逆サイドにはもう1人のスピードスター、ニコ・ウィリアムズが先発するだろうが、リカバリーランにおいて世界最高のカイル・ウォーカーがいてくれるはずだ。

  • Bukayo Saka Getty

    試合を左右する最大のポイントは…

    今大会のスペインは、心からリスペクトするに値する。ルイス・エンリケやフレン・ロペテギ時代よりもエキサイティングで効率よく、ポゼッション時にも余裕が見られる。だが、やはりボールを失った時に不安が露呈することは変わらない。ラウンド16のジョージア戦では、先制された後に短時間ではあるが窮地に陥っていた。

    だからこそ、イングランドはボールを奪った後の数秒間が重要になる。いち早く攻撃に転じ、スペースを狙う必要がある。DF~MFラインの間で受けるフォーデン、もしくは右サイドを独力で突破できるブカヨ・サカを真っ先に見つけるべきだ。彼らを起点として、相手の守備が整う前にゴールを狙う必要があるだろう。

    伝統的な“キック&ラッシュ”ではないが、手数をかけすぎずに攻めることが有効だ。そして、それを可能にする選手は揃っている。過去最高レベルの選手が揃ったスリー・ライオンズは、58年続く無冠時代に終わりを告げることはできるのだろうか。運命の決勝戦、彼らの見せる姿に注目だ。