だが、サッカーの観点からすると、たとえヘンダーソンが2022年ワールドカップでまだ最高のプレーを見せられることを示していたとしても、セルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチやマルセロ・ブロゾヴィッチの契約のほうが、はるかに重要である。
ブロゾヴィッチはまだ30歳で、6月にマンチェスター・シティと戦ったチャンピオンズリーグ決勝ではインテルの中で最高の選手だった。バルセロナからも声がかかったのに、アル・ナスルに行くことになった。これは、今や経済力がモノいう時代になったことを目に見える形で我々に突きつけている。ヨーロッパの由緒ある最強のクラブでさえ、獲得しようとしている選手が中東へ行ってしまうことを阻止できないほど、長く間違ったことをしてきたということなのだ。
実際、ミリンコヴィッチ=サヴィッチはここ数シーズン連続でユヴェントスから声がかかっており、最終的にはユヴェントスに行くのだろうと思われていた。ところがユヴェントスは虚偽会計などでセリエAの勝ち点をはく奪され、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を失うこととなり、事実として安商いに手を出すしかなくなり、若手に投資することを余儀なくされている。
その結果、ミリンコヴィッチ=サヴィッチはラツィオを去ってアル・ヒラルに行くこととなった。実に驚くべき展開である。このセルビア代表はまだ28歳。絶頂期を過ぎたどころか、むしろ絶頂期に入りかけているところだ。C・ロナウドやベンゼマのようにすべてをやり遂げたとか、すべての栄光を手に入れたというわけでもない。エンゴロ・カンテや、ましてやロベルト・フィルミーノのようでもない。キャリアの中でチャンピオンズリーグの常連でもないし、ラツィオに残っていれば何かオファーがあっただろうが、たとえ出ていくにしてもマンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリーのようなヨーロッパのエリートクラブに行くだろうと思われていたのだ。
ところが、彼は自身のピークとなるこれからの数年間をサウジアラビアで過ごすことに同意した。これもまた、サウジアラビアの吸引力の強さをはっきりと示すものだろう。