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FFP規則、権力、負傷歴…チェルシーはネイマールとの契約を避けるべき

ネイマールの実力を疑う者は誰もいない。コンディションが万全なら、地球上で最高の攻撃的選手のひとりである。サントスでプレーしていた頃、敵の選手たちを置き去りにする姿を映した、画像の荒いビデオが示すとおりだ。

だが、ファンとの関係が醜く破綻し、パルク・デ・プランスの警備体制を変えてしまったパリ・サンジェルマンでの彼の時代は、終わりを迎えようとしているらしい。そして、この1年、世間の注目を浴びるような契約をしたがっているオーナーたちのもと、チェルシーには常にネイマール獲得の噂が取りざたされていた。

これからも噂は消えないだろう。だが、スタンフォード・ブリッジで新しい時代が始まろうとしている今、チェルシーはネイマールとの契約を避けるべきである。

  • Pochettino Neymar PSG 2021-22Getty Images

    一年越しの関心

    昨年、クリアレイク・キャピタルを後ろ盾に現在のオーナーがチェルシーを譲り受けて以来、彼らがネイマールをいずれ獲得したいと思っているという噂が、流れては消えることが繰り返されてきた。しかしながら、そんな噂が1年ほどつづいた挙句、チェルシーが不要な選手たちをサウジアラビアに投げ売りしているのは、大型移籍の資金を作ろうとしているのだとThe Athleticが報じたのである。

    6月初旬、フランスのメディアはチェルシーがネイマールについての話し合いを始めたと報じたが、その後に事態がさらに進んだという噂は一向に聞かれない。だが、火のない所に煙は立たないわけで、ブルーズの新しい階層組織は、すでに移籍市場でその冷酷さを露わにしている。

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  • Neymar injured PSG Angers Ligue 2022-23Getty

    ひどい負傷歴

    チェルシーがネイマール獲得から手を引くべきだという理由は山ほどある。なかでも一番なのはネイマールの負傷歴だ。31歳のネイマールはPSGに所属していた間、半分以上の試合に出ることができなかった。彼の2022-23シーズンが2月に終了したのは、足首の靭帯を損傷し、手術を受けざるを得なくなったためだ。

    ネイマールの数えきれないほどのケガの問題の多くが彼自身の責任によるものではなく、リーグ・アンのディフェンダーたちのターゲットにされてきたからではあるが、プレミアリーグでも同じことが起こらないとは限らない。ネイマールの身体は削られ続け、限界を迎えつつあるのも確かだ。

  • Todd BoehlyGetty

    FFP違反の移籍

    ネイマールの獲得が肥大化して選手への報酬が高騰したチームをスリム化しようとする、この夏のチェルシーの移籍戦略全体にとって逆効果になる可能性もある。チェルシーは過去2シーズン、大赤字に見舞われたことで選手たちを緊急に売りに出す必要に迫られている。2022-23シーズンには新しい選手たちに6億ポンド(約1,100億円)もの目玉が飛び出すような大盤振る舞いをした。このため、3年間の損失が1億500万ポンド(約190億円)を超えてはならないというプレミアリーグの規定に違反する危機に陥っている。ブルーズはすでに、UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規則(FFP)の要注意リストに加えられているのだ。

    今度の移籍市場でネイマールと契約するのは、まったく不可解なことである。パリ・サンジェルマンでのネイマールの稼ぎは週70万ユーロ(約1億1,000万円)で、契約が2年残っていることから、PSGはまだ彼には7,000万ポンド(約130億円)の価値があると言っている。ネイマールをめぐる取引はブルーズの賃金体系をゆがめ、さらなる大赤字を呼ぶことだろう。

  • Christopher Nkunku Chelsea 2023-24Getty Images

    チームに居場所なし

    カネの問題を抜きにしても、ネイマールとの契約に反対する非常にシンプルな理由がある。チェルシーには、ストライカーではない攻撃的選手が新たに入る居場所がないのだ。カイ・ハヴァーツがアーセナルに行き、ハキム・シイェシュとピエール=エメリク・オーバメヤンもそのあとにつづいて出ていこうとしているが、ブルーズにはまだ、どのポジションにも優れた選手が残っている。そのうえに、次の背番号10として、すでにクリストファー・エンクンクも加入している。

    ビジャレアルからニコラス・ジャクソンの加入も実現し、ラヒーム・スターリング、ムハイロ・ムドリク、ノニ・マドゥエケもいる。クリスティアン・プリシッチが出ていく可能性があり、より深い位置でプレーする選手が必要だという問題はあるだろうが、31歳のネイマールにその役割を果たせるとは思えない。まして、最近のチェルシーの契約戦術のターゲットは、25歳以下の選手たちではなかったか。

  • NeymarGetty

    物言う選手の権化

    チェルシーでは物言う選手が多すぎることの影響が長く重要な問題であった。

    新しく共同オーナーとなったトッド・ボーリーとベダッド・エバリーは、この事態を変える決意であると報道されているが、実際は1年で3人も監督が代わっている。デイリー・テレグラフによると、現在着手しているチームの大掃除は、物言う選手の力をそぐことも目的のひとつであるという。

    その場合、ネイマールとの契約は間違いなく逆効果になるだろう。彼は物言う選手の権化といっていい。キリアン・エンバペや、もっと最近ではリオネル・メッシたちとともに、PSGで都合のいいように大きな影響力を使うのが常習化していた。監督たちやチームメイトたちと数多くのいさかいを起こしているのは、自分をアンタッチャブルな存在だと思っているからに他ならない。試合が近いというのにどんちゃん騒ぎを起こしたりもして、そんなことのすべてがファンとの関係を醜く崩壊させてしまった。つい最近も、F1のスペイングランプリを訪れてチームの優勝祝賀会をすっぽかし、クラブを激怒させたばかりだ。

  • Aubameyang Chelsea 2022-23Getty Images

    学ぶべき教訓

    現在のチェルシーの移籍戦略の責任者は、スポーツ・ディレクターのローレンス・スチュワートとポール・ウィンスタンレーだが、クラブの新しい階層組織はすでに移籍に関して怖ろしくも派手なミスを犯している。オーバメヤン、カリドゥ・クリバリ、マルク・ククレジャはみな、ボーリーがスポーツ・ディレクターだったころに契約した選手だ。クリバリとククレジャには大金がかかったが、スタンフォード・ブリッジでは非常に寂しいデビュー・シーズンを耐え、すでにクリバリはチームを去り、オーバメヤンも移籍に向かっている。

    このふたりがチェルシーと契約したときには最高の選手だったことは間違いない。そしてチェルシーには、ネイマールという、より大金がかかる移籍に関して同じ過ちを犯す余裕はないはずだ。