11月下旬、後任となったのはフランク・ランパード。指導者としては、コヴェントリーの前に、成績不振に苦しむ古巣・チェルシーに2度目の復帰、暫定監督として指揮を執るも持ち直せず、退任した後だった。ある意味、新天地・コヴェントリーで出直す形だったが、ここからチームは大きく変わり、勝ち点を伸ばしていく。いったんは諦めかけた昇格レースに食い込んでいった。
――ランパード監督就任を聞いた時の気持ちを教えてください。
ランパード監督はイングランドのレジェンドでみんなの憧れの存在です。僕に限らず、特にイギリス人たちにとって、この気持ちはすごく大きかったと思います。お話を聞いた時は、みんな興奮していました。シンプルに嬉しかったですし、世界的に結果を残してきた人の元でプレーできることが本当に光栄で、すごく楽しみでしたね。
普段から積極的に選手とコミュニケーションを取ってくれるタイプの監督です。例えばメンバーから外れた時にはその理由など、いろいろ話をしてくれますし、何かあった時は相談に乗ってくれます。すごく距離感が良くて、選手と話し合える。個人としてもチームとしてもいい関係だと思っています。
――ランパード監督が求める選手像に合わせるといったアプローチはされましたか。
特にこれと言って自分のプレーを変えたことはありません。やっぱり僕の長所はまずハードワークできるところ。しっかりと守備をしてサボらずに行くべきところにしっかり行く。誰でもできそうで意外とできる選手は少ない印象です。それは日本人選手全般にも言える特長ですが、そういったプレーができる選手を嫌いな監督って多分いないと思うんです。まずそれができる選手っていうのが一つと、あとは自分の武器であるドリブル、1対1の部分で仕掛けて相手を崩すところ、それを見せてアピールしようという気持ちでやりました。
でも…今まで通りですね。ランパード監督だからというわけではなく、僕が僕の長所、できることをやったという感じです。
――指導を受けている中でランパード監督が1番大事にされていることは何だと感じますか?
1番っていうと難しいのですが、こちらの監督って、守備、攻撃はそれぞれ別々のコーチに担当させる形が多い気がするんです。でもランパード監督はトレーニングで、守備も攻撃も選手に直接伝えてくれます。特に守備の部分は思った以上に大事にしていると感じました。
攻撃の部分は個々の力で打開することを求められていて、それがチーム全体としての武器になる。あと、守備は本当に細かいです。動き方、スイッチの入れ方、体の向き、細部までこだわる監督で、最初は驚きました。
そこがチームにとってプラスになっていると思います。守備の改善が良い流れに持っていけた一つの理由かな? と感じています。
――印象的な言葉などありましたか?
攻撃面でよく言われるのは、右サイドバックのミラン(・ファン・エワイク)との連係ですね。彼はすごくいい選手で僕とのコンビネーションもうまくいっています。僕がボールを持ったら「2人で攻撃して相手のディフェンスを崩していけ」と。クロスに逆サイドはしっかりと中に入ることも毎日のように強く言われています。「仕掛けられるところは仕掛けろ」も言われますね。
守備面では、スイッチを入れるのはウイングの選手が多いんですが、その際の「あと1歩の立ち位置」を言われます。守備に行こうとする姿勢ですね。ただ突っ立っているだけの姿勢と、今すぐ走り出せる姿勢。相手のセンターバックにちょっとでも行こうとする姿勢を見せると全然違うと言われています。現に僕のところから守備でスイッチを入れて、ボールを取り切って攻撃に繋げるシーンが結構多いので、その言葉が実戦に役立っています。
――メンタル面では?
それもすごく大事にしている監督です。まず大事なのは気持ちであって、そこから戦術的なことがついてくると言われます。それは間違いないと思いますし、どんなに戦術がしっかりしていても、選手のやる気がなかったら勝てません。選手のやる気や自信のために、試合前に結構長い時間を取って、みんなに伝えてくれます。
普段は落ち着いているんですけど、中にあるものはすごく熱くて。みんなが大きなリスペクトを持っているので、監督の言葉で士気も上がりますし、やる気が出る。チームにいい影響をもたらしてくれます。