今季から生まれ変わったチャンピオンズリーグ(CL)。今月11日までにリーグフェーズは第6節までを終えて2024年内の日程が終了、残すは来年1月に行われる第7節、第8節のみとなった。
初導入されたリーグフェーズは各地で波乱を引き起こしているが、では現段階で“一番面白い”チームはどこなのだろうか? スペイン大手紙『as』で副編集長を務めるハビ・シジェス氏に、戦術面から見る今季のCLで見るべきチームトップ5を選出してもらった。
文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長
翻訳=江間慎一郎
GOAL今季から生まれ変わったチャンピオンズリーグ(CL)。今月11日までにリーグフェーズは第6節までを終えて2024年内の日程が終了、残すは来年1月に行われる第7節、第8節のみとなった。
初導入されたリーグフェーズは各地で波乱を引き起こしているが、では現段階で“一番面白い”チームはどこなのだろうか? スペイン大手紙『as』で副編集長を務めるハビ・シジェス氏に、戦術面から見る今季のCLで見るべきチームトップ5を選出してもらった。
文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長
翻訳=江間慎一郎
(C)Getty Images今季のチャンピオンズリーグ(CL)は疑いようのない成功だ。新フォーマットは人々の心をつかむものだった。
欧州スーパーリーグ構想に端を発する一部クラブとUEFAの対立の影響もり、新フォーマットは否定的な見方もされていた。だが蓋を開けてみれば、生まれ変わったCLは旧フォーマットを優に上回るほど魅力的かつエキサイティングだ。リーグフェーズではほぼすべてのチームが、何かを賭けながら最終節まで戦うことになる。1グループしかない順位表は複雑ながらもより興味深いものとなり、眺める価値をさらに増したのだった。
新たなCLの成功を語る上で欠かせないのは、多くのチームが見せているパフォーマンスの質の高さだ。開幕当初に優勝の本命とされたレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンは今のところ低調だが、そのほかのチームが魅力的なプレーを見せて注目を集めている。
(C)Getty Images最高のチームとして挙げられるのは、もちろんリヴァプールだ。そのプレーを見れば、首位を走っていることは至極当然と言える。アルネ・スロットが新たに率いるチームは、フットボールというゲームのあらゆる局面を支配している。プレーリズムが非常に高く、戦術は多彩で、選手たちの力を最大限に引き出している。
スロットはリヴァプールのプレーシステムに若干の変化を加えた。例えばフォーメーションはユルゲン・クロップの1-4-3-3(スペインのフォーメーションはGKから表記)ではなく1-4-2-3-1を使用しているが、しかしプレーに対する考え方や本質は同じであり続けている。
各ラインをしっかり狭めて、一枚岩となって仕掛けるアグレッシブなプレッシングは迫力満点。また攻撃では、フィルジル・ファン・ダイクのサイドチェンジ、トレント・アレクサンダー=アーノルドの内に絞る動き、ライアン・フラーフェンベルフ&アレクシス・マック・アリスターの運動量と抜群の飛び出し、そして“違いを生み出す最たる選手”モハメド・サラーの機動性、創造性、決定力……と多くの強みを持っている。
スロット・リヴァプールは相手チームを押し込み、ボールを奪われた瞬間にそれを奪い返し、再び攻撃を仕掛けるという“黄金のサイクル”を回す上で、チーム全体が非常に高いレベルでまとまっている(付け加えればピッチに立つ全選手がそのための努力を惜しまない)。なおかつセットプレーでも強さを発揮しているのだから、隙という隙はほぼ見当たらない状態だ。彼らが6戦全勝を果たしているのは当たり前であり、低調なライバルたちが目覚めない限りは、最たる優勝候補として君臨している。
(C)Getty Imagesリヴァプールに続く注目チームは、アタランタだ。イタリアのチームは「超守備的」……彼らはそんなイメージを完全に覆す存在であり、勇敢なプレー哲学でもってビッグチームに立ち向かっている。
ジャン・ピエロ・ガスペリーニがピッチ全体をつかって行わせるマンマーク戦術は、絶対的に称賛されなければならない。レアル・マドリー戦(2-3)のようにDFラインの裏を取られてやられるリスクは常に存在しているが、あの試合でもアタランタの方がチャンスを生み出し、より良い結果を得るにふさわしかった。勝敗を分けたのは両ペナルティーエリア内でのプレーの差、つまりはマドリーの理不尽な決定力だったのだから。
アタランタの過激なまでの攻撃的スタイルは、見事としか言いようがない。1-3-4-3を使用する彼らは、左サイドのアデモラ・ルックマンの類い稀な突破力に加え、チームとして相手の守備を崩すための意思統一がされている。相手のDFラインにスペースをつくることを狙ってMFとDFのライン間にボールを差し込み、ウィングバックを中心にサイドから継続的にクロスを送り、アタッカーたちはしっかりゴール前に詰めてシュートを狙う。中盤ではエデルソンの判断力とフィジカルが光り、シャルル・デ・ケテラーレが予測不可能な動きで相手を翻弄する。
(C)Getty Imagesそして絶対に見るべきイタリアのチームは、もう一つ存在する。シモーネ・インザーギ率いるインテルだ。彼らはアタランタとは真逆で、旧来のセリエAのチームらしく組織力・守備力の高さで存在感を示している。マンチェスター・シティ(0-0)、アーセナル(1-0)、ライプツィヒ(1-0)、レヴァークーゼン(0-1)との対戦で1失点しか許していないのが、その証左と言えるだろう。
インザーギが敷く1-3-5-2システムは中央、サイドのどちらもしっかりと守れる構造を持ち、攻撃時にはセンターバックが敵陣まで出向いてプレスを誘い、そこから速攻を狙う。フットボールは究極的に「両ペナルティーエリア内で何をするかで勝敗が分かれる」が、彼らが両エリアで見せるプレーは非常に堅実だ。守備時にマークが外れる・外されることはなく、相手の攻撃を守り切れば迅速なトランジションでもう一方のエリアに到達する。
インテルとの対戦は、歯医者に行くよりも恐ろしい。彼らこそがイタリアの守備神話の守り手だ。
(C)Getty Imagesまた、ラ・リーガではやや勢いを落としているものの、バルセロナが復活を果たしたのは疑いようのない事実である。今季からハンジ・フリックが手綱を握るチームはこれまでとは別物だ。
ここ最近は疲労の蓄積もあって戦術的秩序を少し失っていたが、それでもCLでの戦いぶりは過去の栄光を思い起こさせるほど素晴らしい。先のドルトムント戦(3-2)はそれを象徴するような試合だった。今季のバルセロナの陣容は近年で最も充実しており、そこにフリックの戦術が加わって、サポーターの心を満たすチームができ上がった。
彼らはDFラインをハーフウェーライン付近まで押し上げて、相手チームを窒息させるようなプレッシングを仕掛ける戦術を採用した。このあまりに大胆な姿勢は、プレッシングが連動しないときやDFが一人だけ残ってしまったときに相手の独走を許してしまうリスクを孕んではいる。が、その勇気ある戦い方は絶対的に称賛されるべきだ。
チームの攻撃を牽引する17歳ラミン・ヤマルは、若い頃のリオネル・メッシと同じかそれ以上に可能性の限界が見えない。加えて、ペドリはその才能を輝かせ続けるためのエネルギーを取り戻し、ハフィーニャは均衡を破るプレーをコンスタントに見せ続けてこれまでの批判を跳ね返し、レヴァンドフスキはその黄金の得点感覚を取り戻した。今季はまだ、ビッグイヤーに手が届かないかもしれないが、しかしカタルーニャのクラブには再び希望の火が灯っている。
(C)Getty Imagesそして、スモールクラブに対しても敬意を払う新フォーマットのCLで、特筆すべき存在感を放っているのがフランスのスタッド・ブレストだ。一見すれば何でもないチームのように見えるが、じつのところ秩序、戦う姿勢、強い個性のすべてが揃っており、だからこそ上位につけている。
彼らの最たる特徴は、デュエルで見せる激しいプレーであり、全員が決してあきらめることなく戦っている。中盤の核であるピエール・リース=メルーが欠場しても、彼らの規律と闘志にあふれたプレースタイルは揺るがなかった。
欧州スーパーリーグ構想のように、「富裕層のフットボール」と「貧困層のフットボール」を棲み分けさせようとする連中は存在する。だが、ブレストは限られたリソースしか持たないにもかかわらず、そうした主張を見事に打ち破っている。そう、フットボールはありとあらゆるチーム、ありとあらゆる人々のものであり、どんなスタイルも尊重されるべきなのだ。新フォーマットとなったCLはその理想に基づきながら、正しい方向に進んでいる。