Bayern Munich season preview 2024-25 GFXGOAL

バイエルンの2024-25シーズン予想:コンパニ監督には厳しい試練が待ち受ける

バイエルン・ミュンヘンのブンデスリーガ支配はついに終わった。11年連続優勝を成し遂げた後、圧倒的王者はバイエル・レバークーゼンの驚くべき躍進によって王座から追い落とされた。かの有名なマイスターシャーレは、史上初めて、2位との勝ち点差を17も離して首位となったバイエル・レバークーゼンによって掲げられた。

しかも最終的に、バイエルン・ミュンヘンは2位の座までシュトゥットガルトに譲ってしまった。2024-25シーズンに、シャビ・アロンソ監督率いる流動的で恐れ知らずのレバークーゼンとの差を埋めることは難題だろう。トーマス・トゥヘルのもとで後退したバイエルン・ミュンヘンは、その後任を広範囲に求めた結果、アロンソやウナイ・エメリ、ラルフ・ラングニックを含む8人もの候補者を次々と失った結果、ヴァンサン・コンパニ監督に落ち着いたのだった。

ベルギー出身のコンパニ監督は、プレミアリーグに昇格したばかりのバーンリーをすぐに降格させてしまっており、バイエルン・ミュンヘンにとって非常に危険な選択だった。昨シーズンのバイエルンの最多得点者で現在のイギリス代表キャプテンのハリー・ケインをはじめ、ワールドクラスの選手が大勢いるチームから最大限の力を引き出せるかどうか、まだわからない。例年どおり、チャンピオンズリーグやDFBポカールに挑むことも予想されているバイエルン・ミュンヘンだが、3つのトロフィーを目指す戦いに総攻撃をかける準備は出来ているのだろうか。以下で検証してみよう…

  • Vincent Kompany Bayern 2024Getty

    アリアンツ・アレーナ周りの雰囲気

    バイエルン・ミュンヘンの昔からのファンは、ブンデスリーガのタイトルを永遠に独占し続けられないことはわかっていた。だが、レヴァークーゼンに大差をつけられたことは苦々しく思っている。そうした憤りは、クラブが必要な選手を獲得するために余剰と思われる選手を放出するのに苦労する姿を見て、増していった。しかし、コンパニ監督は徐々に自身のイメージどおりのチームを作りつつあり、楽観的な見方が広がりつつある。

    マンチェスター・シティのレジェンドは、トゥヘルの理想の後任とは言えないが、すぐにバイエルンの信奉者たちに慕われるようになった。コンパニ監督はバイエルンでの最初の何回かの記者会見で非常に好意的に扱われており、チームをどう成長させるかについて、ファンと定期的にコンタクトを取っている。

    コンパニ監督は賢く信頼を勝ち取ってきており、トップレベルの監督経験はなくとも、サポーターたちはクラブをあるべき場所に戻すのにうってつけの監督だと信じるようになってきた。第5節に予定されているレヴァークーゼンとの一大決戦を含む序盤の戦いが悪ければ解任されるということはなさそうだ。

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  • Michael Olise Bayern Munich 2024-25Getty

    移籍動向

    この夏の移籍市場で、これまでのところバイエルン・ミュンヘンは5人の新加入選手と契約した。シュトゥットガルトで素晴らしいシーズンを過ごした日本代表の伊藤洋輝も獲得し、バイエルンの守備は大いに向上するだろうが、最もワクワクさせる新加入選手はプレミアリーグからやってきた。

    ミカエル・オリーズジョアン・パリーニャは、合わせて1億400万ユーロ(約170億円)で加入。オリーズはクリスタル・パレスで、ヨーロッパで最も将来有望な若手の攻撃的選手との評判を築いた後、ドイツでの新たな挑戦にやってきたのであり、パリーニャのほうは、マルコ・シウヴァ監督のフラムで最も重要な選手となった29歳で、1年越しの移籍となったアリアンツ・アレーナで活躍したくてうずうずしているだろう。

    バイエルンは枯れ木の伐採にも忙しく、レンタル先のPSVで活躍したアメリカ代表MFマリク・ティルマンを完全移籍させ、DFのマタイス・デ・リフトヌサイル・マズラウィを合わせて7,000万ユーロ(約114億円)でマンチェスター・ユナイテッドに放出した。この3人に続いてキングスレイ・コマンも出ていくようで、バルセロナが興味を示している。さらに、マンチェスター・シティが関心を寄せているヨズア・キミッヒも、契約の最終年ということもあって放出する可能性がある。

    だが、すべてが順調にいったわけではない。センターバックで優先的な獲得目標だったヨナタン・ターの移籍も可能性はあったが、レヴァークーゼンとの新たな契約を拒否して移籍に同意したと報道されていたにもかかわらず、実現しなかった。ブンデスリーガの宿敵からターを獲得できれば大きな衝撃となっただろうが、アロンソ監督のチームの核となる選手たちは今のところ動きがなく、8月31日に夏の移籍市場が閉まる前に、戦力に深みを増すべく移籍市場に戻る必要があるかもしれない。

  • Bayern Munich vs. UlmGetty Images

    プレシーズンのパフォーマンス

    コンパニ監督は就任早々、テーゲルンゼー練習場でのロタッハ・エガーンとの親善試合を、マティス・テルのハットトリックを含む、14-1という衝撃的なスコアで勝利した。だが次のプレシーズン・マッチのFCデューレン戦はかなり厳しい試練となり、新加入の伊藤、レオン・ゴレツカ、テル、エリック・ダイアー、ラファエル・ゲレイロを含む強固なメンバーで戦ったにもかかわらず、4部のチーム相手に1-1の引き分けだった。

    その後、バイエルンは韓国に飛び、豪華な2試合の親善試合の1つ、トッテナム戦を戦い、ガブリエル・ヴィドヴィッチとゴレツカが得点して2-1の見事な勝利をあげた。コンパニ監督は、北部ロンドンでの2度目のトッテナム戦に、ハリー・ケインを含む主力全員を起用し、スパーズはドイツの巨人の鋭く鍛え上げられたプレーに苦戦。バイエルンは枠内シュートを21本放ったあげく、最終的に3ー2で勝利した。

    コンパニ監督は、強敵相手に選手たちが組織だったプレーをして「正しいメンタル」を披露したことを大いに喜び、最後のプレシーズン・マッチでそれを再現した。オーストリアのティロル相手にケインの得点を含む3ー0で完勝したのだ。バイエルンが試合を支配する中、ティロルは90分間自分たちの影を追い回すしかなかった。

    最小限のスケジュールだったプレシーズン・マッチで完璧な結果を残し、新シーズンに最高のフィジカル・コンディションで向かうこととなった。コンパニ監督は短期間に自身のアイディアをうまく伝え、2024-25シーズンのバイエルンの好調を印象づけた。

  • Burnley FC v Newcastle United - Premier LeagueGetty Images Sport

    戦術

    だからといって甘い予想ばかりではない。コンパニ監督のバーンリーでの最終シーズンは悲惨だった。バーンリーは昇格後、10人の新加入選手のために9,000万ポンド(約171億円)を費やしたが、そのほとんどがプレミアリーグでの実際の経験がなく、全員がトップリーグの激しいサッカーに対応するできなかった。

    コンパニ監督は、シーズン中盤から事態を収束させるためにフォーメーションを手直ししたが、バーンリーはフィジカル的に太刀打ちできず、守備でも攻撃でも圧倒されて1年で降格した。バーンリーのスカウトの選択のまずさが非難されたが、責任の一端はコンパニ監督にもある。最近拡散された動画では、練習場での監督のコミュニケーションの取り方が厳しすぎ、結果が出ないことへのイライラが募っているのではないかと言われた。しかし38歳の監督は、最後の最後まで自身の核となる原理原則を見事に貫いた。

    バイエルンがコンパニ監督招聘を決めた判断材料は、主に、バーンリーがチャンピオンシップに属していた2022-23シーズンであると思われる。コンパニ監督に率いられたバーンリーのシーズン通算勝ち点は100を超えて優勝したが、そのサッカーは見ていて楽しいものだった。3-3-3-1または3-2-2-3でポゼッションし、複数のポジションでローテーションしながら後ろからプレーすることに重点を置き、辛抱強くスペースが空くのを待って、一気にアクセルを踏んだのである。

    ボールがない時には、コンパニ監督のバーンリーは基本的に4-3-3か4-4-2か4-2-3-1のフォーメーションに変わり、マンツーマンのプレスをかけて効率よく冷静に相手のミスを誘った。バイエルンでのコンパニ監督は、テクニックだけでなく運動能力にも優れた選手に恵まれており、好みのシステムを取り戻すことができるだろう。結果も、おそらくより良いものになるに違いない。

  • Harry Kane Bayern Munich 2024-25Getty

    MVP

    ハリー・ケインは昨シーズンの終盤までかろうじてその威厳を保つことのできた、バイエルンの数少ない選手のひとりであった。33回のブンデスリーガ優勝を誇るチームは12年ぶりにトロフィーを逃したが、それはケインの活躍が足りなかったからではない。トッテナムから高額移籍を果たしたケインは全公式戦で44得点を記録した。

    バイエルンはついにロベルト・レヴァンドフスキの真の後継者を見つけたのであり、ケインが初めてのマイスターシャーレを手にできなかったのは非常に不運だった。31歳のケインはゴール前で冷静であると同時に、ジャマル・ムシアラやレロイ・サネといった選手たちと力強い相互理解を構築し、つなぎのプレーで印象を残した。ファウルを引き出す能力は、時に、接戦でのバイエルンの重圧を軽くした。

    そんなケインが2024-25シーズンにも再び見られるなら、しかも、今シーズンはオリーズもケインの近くでサポートしてくれるとなれば、バイエルンはレヴァークーゼンに迫り、再び力強くチャンピオンズリーグを勝ち進んでいけるだろう。ケインは全力を発揮できれば非常に強力な武器となり、最後の最後で違いを見せつけてくれるはずだ。

    とは言え、バイエルンは、EURO2024でケインがどれほどガッカリさせたかを懸念するべきであろう。イングランド代表が決勝まで勝ち進む中、ケインは3得点して得点王のひとりとなったが、大会中ずっと、通常のプレーに関わることはほとんどなく、彼のファーストタッチは驚くほど下手であった。

    ケインは公式にはケガしていることを否定していたが、100%の状態でないことは明らかで、ケインのカバーができる選手のいないバイエルンは、彼をチームに戻すことを急いではならない。大会後のケインがどういう状態なのかもよくわからず、コンパニの監督としての力がシーズン最初の数週間で試されることになりそうだ。

  • FC Basel v FC Bayern München - Friendly MatchGetty Images Sport

    スターへの躍進

    『スカイ』によると、バルセロナの有名なラ・マシア出身で、2022年にバイエルンに加入したモロッコ出身SBアダム・アズノウにコンパニは大いなる可能性を見出だしているという。18歳のアズノウはまだトップチームの試合に出たことはないが、昨シーズン、UEFAユースリーグの準々決勝に進出したバイエルンU19の主力のひとりであった。

    アズノウはバイエルンのリザーブチームの試合に11試合出場し、プレシーズンにはトップチームの試合に出場するチャンスを監督から与えられた。この才能ある若手は、勝利したティロル戦で90分フル出場を果たし、チャンスがあれば前線に向かってクロスを供給し、自信満々にピッチの中央へ出ていくこともあった。

    『スカイ』によると、アズノウはクラブ内部でアルフォンソ・デイヴィスの長期的な後継者とみなされているという。デイヴィスは2025年にフリーになり、レアル・マドリーに移籍すると見られている。となれば、アズノウに左サイドバックのポジションが空くこととなり、シーズンが進むにつれ、コンパニ監督のもとでレギュラーへまい進していくことになるのは確実だろう。

  • Jamal MusialaGetty

    何を成功と呼ぶか

    バイエルンはブンデスリーガの王座を取り戻さなければならない。それはコンパニ監督が最低限成し遂げなければならない仕事であるが、それだけで監督で居続けられるとは限らない。

    チャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出も必須だろう。昨シーズン、トゥヘルはバイエルンをレアル・マドリーとの準決勝の死闘へと導き、その時は、当初の2025年までの契約が満了するまでではなく、彼が望んでいた新たな2年契約が提示されていたらしい。ところがトゥヘルはそれを拒否した。バイエルンのヤン=クリスチャン・ドレーゼンCEOとヘルベルト・ハイナー会長はブンデスリーガ優勝を望んでいたが、バイエルンは常にヨーロッパで最強のチームと対戦したときのパフォーマンスによって、より厳密に評価されてきた。

    そのため、コンパニ監督は、バイエルンを一枚岩のチームに戻さなければならない。トゥヘルの時にはまったくそうではなかった。つまり、自身のスタイルを実行して成功し、全選手が自身の役割を確実に果たしつつ、2023-24シーズン、常に悩まされてきた基本的なミスをなくさなければならない。

    バイエルンが前進するのに充分な能力をもっていることは間違いない。ムシアラはEURO2024でドイツ代表の最高の選手だったし、その優れたテクニックは、どんな試合でもバイエルンに優位をもたらす。サネ、ニャブリ、オリーズ、テルはディフェンスを広げられる自然の幅を供給することができ、ケインはいつでもゴールを決めることができる。

    だが、キミッヒが去れば中盤の真ん中が薄くなるし、センターバックのダヨ・ウパメカノとキム・ミンジェのコンビは現実に機能していない。バイエルンは昨シーズンよりも改善され、トロフィーを獲得できるはずであるが、サポーターは、期待をいくぶん低くするべきかもしれない。トップへの返り咲きは簡単ではない――とりわけ、これ以上の新規契約に失敗するとしたら。

  • 大胆予測

    シーズン最優秀選手:ジャマル・ムシアラ

    ムシアラは今季のバイエルンの中核となり、得点でもアシストでもパーソナル・ベストを更新するだろう。ドイツ代表としてEUROで新境地に達したことで、クラブでもリーダーとなる理想的な立場に立っている。

    最高の移籍選手ミカエル・オリーズ

    ケガの問題を完全に払しょくできれば、オリーズはバイエルンの新たなNo.1右ウイングになれる。ボールを運ぶ技術は、すでに素晴らしく完成したものであり、フリーキックを任せられれば、バイエルンは労せずして数多くの得点を稼ぐことができるだろう。

    得点王:ハリー・ケイン

    昨シーズンケインは、レヴァンドフスキが持つ1シーズンでのブンデスリーガの最多得点記録(41)にあと5点に迫った。今年も30得点は超えてくるだろう。すべてがうまく行けば、ケインはサッカー界で最高のオールラウンドなセンターFWであり、いくつか賢い移籍があったバイエルンは、彼の力を最大限引き出せる、よりよい選手起用ができるはずである。

    チャンピオンズリーグでの成績:準々決勝進出

    バイエルン・ミュンヘンは今回もまたチャンピオンズリーグの栄光に近づくことはできないだろう。ベスト8で惜しくも敗退と言ったところか(たとえ対戦相手に恵まれたとしても)。レアル・マドリーやマンチェスター・シティ、復活したリヴァプールなどは、レヴァークーゼンやイタリア王者のインテル、バルセロナですら怖がることのないコンパニ監督のチームを倒すだけの能力もノウハウもある。

    リーグ最終順位:

    バイエルン・ミュンヘンのブンデスリーガ最終順位は2位だろう。レヴァークーゼンが再び大差で逃げ切るということはないだろうが、チームとしての成長という点においてはるか先を行っているし、王座を維持するのに充分な能力をもっているはずだ。