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アトレティコ・マドリーのカネは一体どこから?アルバレス、ギャラガー獲得で2強に挑む

ほんの数週間前、ジローナのストライカー、アルテム・ドフビクを獲得しようとしたアトレティコ・マドリーの試みは失敗し、ウクライナ代表のドフビクはローマに移籍した。代理人は「アルテムを本気で獲得しようとしているとは思えなかった」と説明した。

サポーターたちもそうだった。将来性はあっても結果が悪くイライラの募った2023-24シーズンが終わり、アトレティコのファンはメトロポリターノに革命が起こることを期待していた。ディエゴ・シメオネ監督のチームが大きく改造され、スペインのタイトルに挑むチームに変わるだろうとワクワクしていたのだ。

ところが7月が終わる頃になっても、アトレティコはただのひとりとも契約が出来なかった。しかし2週間後、アトレティコ・マドリーは突然、衝撃的な大金を使って、夏の移籍市場の大勝利者にのしあがってきた。

すでにロビン・ル・ノルマンとアレクサンデル・セルロートが、それぞれレアル・ソシエダとビジャレアルから加入したし、ワールドカップ優勝のフリアン・アルバレスの加入も発表された。

一体なぜ、アトレティコにこんなことが出来るのか。シメオネ監督のチームはレアル・マドリーのラ・リーガ連覇の夢を本気で脅かすことのできるチームになるのだろうか。

  • Antoine Griezmann Atletico Madrid 2023-24Getty Images

    ドルトムントでの惨敗

    昨シーズンのチャンピオンズリーグ敗退はアトレティコに大打撃を与えた。事実上、そこでシーズンが終わったも同然だった。ベスト8の対戦相手がボルシア・ドルトムントに決まり、準決勝進出は間違いないと思われていただけに、余計にショックだったのだ。

    「死の組」を勝ちあがってきたドルトムントの実力は明らかだったし、シメオネ監督は繰り返し、このドイツチームは脅威だと警告していた。それにもかかわらず、アトレティコは勝って当然と思われていた。ベスト16で2023年準優勝のインテルを破り、メトロポリターノでのファーストレグではドルトムントに勝つ以上のチャンスを作りだしていたからである。

    ある意味、準々決勝の敗退は、チャンピオンズリーグ全体におけるアトレティコ・マドリーの姿を総括したものだった。すなわち、ホームでは強いのにアウェイでは弱い。無駄な攻撃が多く、守備が脆弱というわけだ。実際、勤勉な守備で評判のチームの昨シーズンの失点は、シメオネ監督の13年間で最多の68点だった。

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  • 20240530 Gianni Infantino Club World Cup trophy(C)Getty Images

    FIFAのドル箱

    しかしながら、ドルトムントでの憂鬱な夜には明るい光もあった。同じ夜、バルセロナもチャンピオンズリーグを敗退し、ドル箱のFIFAクラブ・ワールドカップに翌年アトレティコを出場させないというバルサの夢も終わったのだ。参加さえすれば、アトレティコ・マドリーは少なくとも5,000万ユーロ(約80億円)を稼げるのである。

    先月、もっと直接的な財政支援が到来した。クラブのオーナーたちが新株を発行し、7,000万ユーロ(約112億円)が基金に追加されたのだ。さらにアトレティコは、ここ数週間でメトロポリターノの枯れ木を伐採して成果を得ていた。

  • Samu-Omorodion(C)Getty Images

    「たなぼた」オモロディオン

    夏の移籍市場が開いて最初の1カ月、新加入選手がいないことにファンは苛立っていたが、クラブは、ビトーロ、ガブリエウ・パウリスタ、メンフィス・デパイ、マリオ・エルモソ、ステファン・サヴィッチの契約を終了させ、チャグラル・ソユンク(約13億円)とアルバロ・モラタ(約20億円)を売却して、選手への報酬を5,000万ユーロ(約80億円)ほど削減することに成功していた。

    次の望みは、恐ろしく不人気なクラブ最高額の契約で加入しながら、それだけの価値があることの証明に何度も失敗しているジョアン・フェリックスに、新しいーーより重要で恒久的な――家が見つかることだ。

    アントワーヌ・グリーズマンの去就にも注目せざるを得ない。このフランス代表FWは昨シーズンのアトレティコで最高のストライカーだったかもしれないが、やむことのないMLSのLAFCへの移籍話がここ数日さらに強くなってきており、33歳のグリーズマンとの契約が来年の夏に満了することを考えると、いま売ることも考えられる。

    確実なのは、サム・オモロディオンのおかげで、アトレティコは4,000万ユーロ(約64億円)という大金を貯えようとしていることだ。グラナダからたった600万ユーロ(約9億6,000万円)で獲得してからまだ1年と経っておらず、アトレティコでは1試合もプレーしていないというのに。

  • alvalo morata-atletico-milan-transfer(C)Getty Images

    当然の放出

    もちろん、モラタの放出は注目を浴びた。昨シーズンは21得点を挙げ、キャプテンとしてスペイン代表をEURO2024の優勝に導いたばかりの選手である。しかしながら、冷たい言い方だが、モラタがいなくなっても困ることはないだろう。決して信頼できる点取り屋ではなかったし、シーズン後半の大半はひどい有様だった。2月以降、たった2得点しかしていないのである。ドルトムントに負けた試合で、シメオネ監督はモラタを前半だけで交代させた。このことは、センターフォワードとして急速に信頼を失っていたことを如実に表している。

    それに、モラタは昨シーズン、アトレティコで2番目に多く得点を決めた選手だったが、同時に2番目に高額な報酬を受け取っていた選手であった。ミランへの売却は間違いなく正しい判断であり、1,300万ユーロ(約20億円)は安定感のない31歳のストライカーにとって妥当な金額だった。

  • Julian Alvarez Argentina 2024Getty Images

    ワクワクする契約

    モラタたちの代わりに得た資金は有効に使われている。セルロートはエル・マドリガルで23得点という素晴らしいシーズンを過ごした選手であり、新加入のアルバレスも、ついにレギュラーとしてヨーロッパのエリートチームのラインを率いるチャンスを得ることとなり、間違いなくメトロポリターノで活躍するポテンシャルを持っている。報酬は目を見張る額であるが、関係者全員にかなりの利益をもたらしうる、稀有な取引のひとつだ。

    ギャラガーはこの夏のドイツで、イングランド代表の中盤が抱える問題の答えを見せることはできなかったかもしれないが、シメオネ監督のアトレティコには完璧にフィットするように思われる。チェルシーのアカデミー出身であるギャラガーはハードワークを苦にせず、プレスをかけてチャンスを生みだし、モノにすることができるのだ。

    コケ、ロドリゴ・デ・パウル、復調したトマ・レマル、サムエウ・リーノ、マルコス・ジョレンテ、アーサー・フェルメーレンといった選手たちはすべてチームに残り(フェルメーレンはレンタルに出される可能性大だが)、今シーズンのシメオネ監督は中盤の選択肢に事欠かない。

  • Diego Simeone Atletico 2024Getty Images

    レアル・マドリーの主たるライバルになれるか

    だが、守備にはいくばくかの不安が残る。EUROで実力を証明したロビン・ル・ノルマンは素晴らしい付加価値を見せつけるだろうが、昨シーズンからのアトレティコの守備の問題をすべて解決せよというのは彼にとって大きな重荷になるだろう。先月、4バックをあきらめたことでカバーに多少の光が見えており、ファンは移籍市場が閉まる前にさらなる補強があることを期待している。

    おおよそのところ、現在のサポーターたちは騒がしい。静かだった移籍市場でのクラブの動きが急に激しくなり、タイトル争いについてクラクラするような話が飛び交っている。だが、1回の移籍市場を背景に4位から1位に躍進するのは難しいことだろう。

    そもそも、レアル・マドリーははるか上を行っているように見える。昨シーズン、ラ・リーガだけでなくチャンピオンズリーグも制したチームに、キリアン・エンバペとエンドリッキまで加入するのだ。レアル・マドリーはスペインでもヨーロッパでも依然として強豪である。だがアトレティコが注目すべきチームであることは間違いなく、少なくとも今シーズンまだ資金難に陥っているバルセロナにとって代わるのに完璧な位置にいるように思われる。

    ファンの予想よりは少し時間がかかったかもしれないが、遅ればせながら、メトロポリターノで本格的なプロジェクトが再稼働しつつあるのだ。